ウェルビーイング実現、データ駆動型教育を提言 教育再生実行会議

政府の教育再生実行会議は6月3日、ポストコロナ期における新たな学びの在り方を描いた第12次提言を取りまとめ、菅義偉首相に手渡した。提言は、ニューノーマル(新たな日常)における教育の姿について、一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ(ウェルビーイング)の実現を目指し、学習者主体の教育に変えていくとの方向性を明確にするとともに、デジタル化に伴って「データ駆動型の教育への転換」を進めるよう強く打ち出した。会見した鎌田薫座長(前早稲田大学総長)は、データ駆動型教育への転換について「いままで教育政策はどんどん変わってきたけれど、その成果を検証しないまま進めてきた。一つの政策によってどう変わったのかを総括してから次の政策にいくという考え方に、急速に変えていきたい。これは画期的だ」と述べ、提言の意義を強調した。

終了後に記者会見する鎌田座長

提言では、まずポストコロナ期の教育分野の課題について、日本の子供たちは世界的に見て幸福度、自己肯定感や当事者意識が低いと指摘されてきた点に注目し、こうした意識を高めていくことが「大人も含めた社会全体の課題」と指摘。こうした課題を解決する道筋として、「一人一人の多様な幸せであるとともに社会全体の幸せでもあるウェルビーイング(Well-being)の理念の実現を目指すことが重要である」と結論付けた。

ウェルビーイングが意味する幸せについては、「経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや健康も含まれ、このような幸せが実現される社会は、多様性と包摂性のある持続可能な社会でもある」と説明。これを実現していくためには「 一人一人が(中略)社会を構成する当事者として、自ら主体的に考え、責任ある行動をとることができるようになることが大切」として、こうした個人を育むために日本の教育を「学習者主体の視点に転換していく必要がある」と強調した。

このウェルビーイングの考え方について、会見した鎌田座長は「学校や教員、あるいは学生、児童生徒のメンタリティの中で、例えば、『学校教育の成果は偏差値を上げることだ。いい学校に行って、高収入を得ることだ』という単線的な考え方ではなくて、もっと多様な価値観を養っていく。それぞれの児童生徒が持っている価値観を正当に評価してあげて、多様な学び方を支援していく。こういう意識変革が非常に大きい」と説明。

学習指導要領に反映させるかどうかについては「学習指導要領に盛り込むことは一つの大きなステップと思うが、指導要領には指導要領の原則がある」とした上で、「制度の柔軟な運用で対応できるものもある。教員養成の過程で意識の変革を図ることもできるのではないか」と述べ、学習指導要領の見直しには直結しないとの考えを示した。

また、萩生田光一文科相は、ウェルビーイングの考え方について、「今までも教育現場では、それぞれの個性や主体性を大事にしたいとやってきたが、何をもって本人が満足するか、何をもって達成感を感じるか、(児童生徒は)人それぞれ違う。学習者主体の視点をしっかり見た教育の在り方を、大きな方向としてウェルビーイングという言葉でくくったのが今回の特色だと思う。例えば、運動会で自己実現や達成感を図る形もある。学校は多面的な要素を持っているので、それぞれの一人一人の子供たちが少しでも自分が一歩前進したなと思ってもらえるような、自己肯定感を高められる教育を、大きな意味で前に進めていく必要がありますね、という提言をいただいたと思っている。学習指導要領に直ちに書き込んで、ということではない」と述べた。

また、提言では、これからの教育の姿として、ICTを活用した「データ駆動型教育」への転換を提起。それによって、「学習履歴等の教育データを活用した一人一人に応じた指導」「子供の状況や発達段階に応じた対面指導と遠隔·オンライン教育とのハイブリッド化」などが可能となり、学びの変革が推進されるとの見方を示した。

このデータ駆動型教育について、鎌田座長は「極端に言えば、いままで教育政策はどんどん変わってきたけれど、その成果はどれだけあったのか、検証しないまま進めてきた。現状はどうで、この政策をとったからどう変わったのか、その総括をしてから次の政策にという考え方に、急速に変えていきたい。これは画期的なことだと思う」と述べた。

提言では、高校教育の在り方について、履修主義と修得主義の二項対立を避け、「履修主義を基盤としつつ、可能な限り修得主義の考え方を取り入れた教育の実現を目指す必要がある」として、両者の最適な組み合わせを図る考えを示した。それを前提とした上で、学びの多様化を推進し、▽高校生が大学の講義を学ぶ「先取り履修」の推進▽大学への飛び入学者への高校卒業資格の付与--などを実現するよう国に求めた。

積み残された課題も4つ明示されている。第一は「高大接続の望ましい在り方」で、一昨年に大学入学共通テストへの英語民間試験と記述式問題の導入を断念して以来、足踏み状態が続いており、文科省の「大学入試のあり方に関する検討会議」に委ねる考えを示した。第2は「教師の質の向上や多様な人材の活用のための方策」で、これは中央教育審議会(中教審)での議論に期待を表明した。

第3は「対面指導と遠隔・オンライン教育の在り方」。初等中等教育段階では「学校の『集う機能』に特に存在意義があり、対面での学びが基本」と位置付ける一方で、「社会の急激な変化や技術の進展、 国際的な潮流などを踏まえれば、対面指導と遠隔·オンライン教育の在り方を今後さらに掘り下げて議論することも必要」と遠隔・オンライン教育を進める必要性も併記するだけにとどまり、一定の方向に踏み込むことはなかった。第4には「データ駆動型教育への転換」に向けた取り組みで、掘り下げた検討が必要との問題意識を示している。

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