工藤勇一校長ら「いじめ」を議論 横浜創英の実践も紹介

横浜創英中学・高校の工藤勇一校長が6月3日、「いじめとどう向き合うか~いじめ問題を構造的に考える~」がテーマのオンラインイベントに登壇した。学校で生徒同士のトラブルが起こったとき、生徒本人が当事者として問題と向き合うための具体的な手だてや大人の役割について、所属校の取り組みを交えながら紹介した。イベントの後半では、NPO法人ストップいじめ!ナビ理事の真下麻里子弁護士も登壇。法の専門家の視点から「学校は社会の“理不尽”ではなく、“理”を学ぶ場所であってほしい。社会に出たときに理不尽に気付け、自分の権利を勝ち取れる子供を育んでほしい」と呼び掛けた。

いじめの定義についてあやふやさを指摘する工藤校長

冒頭で工藤校長は、いじめ問題が解決しづらい一因として、「定義のあやふやさ」を挙げた。例えばいじめ防止対策推進法が施行された現在と、それ以前のいじめの定義は乖離(かいり)している。「定義があやふやなので、皆が同じ方向を向けていない。新聞の『いじめ』という見出しを見ても、500人いれば500人が違う印象を持つだろう」と指摘した。

そのため所属校や前任の東京都千代田区立麹町中学校では、生徒同士のトラブルが発生したときは、あえて「いじめ」という表現は使用しないと説明。生徒や教師は具体的な言葉を使って、起こったことやその背景を説明するようにしているという。

また、学校で児童生徒同士のトラブルが発生したときは、「子供が主体となり、当事者として解決しようとする意識を高めることが大切だ」とし、「本来であれば、トラブルは子供同士で解決できるのがベスト。全てのトラブルを大人が解決してくれると勘違いした子供は、自身で解決できなくなってしまう」と警鐘を鳴らした。

大人の役割については、「子供同士で解決できるか、誰かが手助けした方がいいのかを見極めること。担任や養護教諭、スクールカウンセラーなど、誰か大人が支援した方がいいのか。深刻な事案の場合は、警察が入らなければいけないのか。そうやって見極めて、子供たちを支援することが大切だ」と述べた。

さらに生徒が主体性を持つために、所属校では身に付けるべきスキルとして「セルフコントロール」を掲げていると説明。「考え方の違いは悪ではない。一方で考え方が違うと、人間はイライラする」という概念を共有した上で、生徒たちは考え方と感情を切り分けて捉える訓練を重ねる。だんだんと感情的になった自分自身に気付けるようになり、感情をコントロールする力が身に付いていくという。

イベントの後半に登壇した真下弁護士は、全国の学校で実践する、いじめ予防授業を紹介。

例えば「合唱コンクールの朝練習に毎回遅れてくる生徒が、クラスメートから悪口を言われ無視される」など身近な事例をもとに、生徒はそれぞれの立場に扮し、模擬調停を行う。「悪口や無視は悪いことだ」と自覚している生徒たちも、実際に討論を進めていくと、「遅刻する被害者にペナルティーも必要ではないか」といった主張に太刀打ちできなくなるという。授業では、それらを法律に照らし合わせながら理解し、個人の尊厳を傷つけないための手段の選び方や、中立の在り方などについて考えを深める。

弁護士の視点から、いじめについて語る真下弁護士

真下弁護士は「私の権利と、あなたの権利はつながっている。他人の権利を侵害することは、いつか同じ立場に立ったときの自分の権利の侵害さえ許容することになる」などと、生徒にアドバイスを送るという。

また真下弁護士は学校現場の一人一人に向けて、「私たちは、権利を主張すること=わがままと思ってしまいがちだが、それは違う。まず自分で自分の権利を尊重してほしい。それは他の誰かの権利を尊重することにつながる。そうやって、個人の尊厳が守られる学校はつくられていくと思う」とメッセージを送った。

同イベントは社会問題に関するオンライン勉強会を主催するリディ部と、いじめ構造変革プラットフォームが共同主催し、400人以上の教育関係者や保護者が参加した。

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