情報共有をデジタル化、時間も印刷費も節約 埼玉大附属小

校務のデジタル化を推進し、働き方改革に手応えを感じている学校がある。埼玉大学教育学部附属小学校(細川江利子校長、児童627人)では、紙で行っていた教員同士や保護者との情報共有をデジタル化。その結果、節約できたリソースは年間587時間、印刷費18万9千円に上り、繁忙期の残業も大幅に減らした。「業務改善を進めて、子供たちとの時間を生み出していきたい」――。このプロジェクトを担った同小の森田哲史副校長に話を聞いた。

同小では、5年ほど前から業務改善の検討を始めていた。ただ、学校行事の精選や会議の回数の削減など「物理的に何かを減らす」という方法には限界があったという。そこで同小が着目したのは、教員同士や保護者との情報共有をデジタル化することだ。

新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校に見舞われた昨年度、サイボウズ社との実証研究を開始した。同社の業務改善プラットフォーム「キントーン」を使い、在宅勤務中の教職員間での情報共有を始めたほか、ウェブ会議システム「Zoom」での職員会議などの試みも始めた。昨年度の2学期からは、学校通信や学年通信などをPDFファイル形式で、キントーンのアプリ上で保護者に送信できるようにした。

情報共有のデジタル化を進めている埼玉大学教育学部附属小の森田副校長

森田副校長は「コロナ禍でデジタル化が進んだ側面もある」と振り返る。これまでは教室で最前列の児童にプリントを手渡し、「後ろに回して」とやっていたが、コロナ禍では接触の機会をできるだけ減らす必要がある。こうした状況でのデジタル化は、保護者の理解も得やすかったという。

とりわけ効果を実感したのは、各学期の最初と最後に、年6回開催している保護者会の資料作成だ。毎回、20ページほどの冊子を印刷・製本しており、そのたびに各学年の教員が3人がかりで、2時間ほど残業を強いられていた。こうした資料も含めたデジタル化で、残業時間だけでなく印刷費の節約につながり、消毒用品などの購入に充てることができたという。

同小はキントーンの他にマイクロソフトの授業プラットフォーム「チームズ」も併用し、教員間で行事の振り返りや引き継ぎ、会議の提案などの場面で活用している。森田副校長は「チームズは文書の共同編集がしやすい。子供たちによりよい教育をする、という本来の目的を見失わず、最適なツールを使い分けていければ」と話す。

当初、「使い方が分からない」と訴える教員もいたというが、現在は「文章としても残るので確認しやすい」「意見交流の敷居が下がってよい」などと評価する声も多い。また「生み出した時間で、子供と関わる時間が増えたことが一番の成果だ」と、確かな手応えを感じている教員もいる。

こうした情報共有のデジタル化を進める中で、教員の働き方改革への意識も高まっている。これまで年度初めの繁忙期には、ほぼ全ての教員が同校の残業時間の上限・月42時間を超えていたが、今年は教員27人中2人にまで減った。「印刷業務が減ったことも一因だが、時間に対するマインドが変わっているようだ」と森田副校長は分析する。

今年4月からは、キントーンを使った欠席・遅刻連絡のデジタル化も進めており、保護者からの連絡を全ての教職員が把握できるようにした。以前、電話や連絡帳を使っていた時は「朝の8時頃に電話連絡が集中し、連絡を受ける事務員がパンクしてしまう。特にインフルエンザなどが流行する冬の時期は大変だった」という。また児童が登校してくると慌ただしくなり、伝達漏れが生じることもあった。

同小は学区が広く、電車やバスで通学している児童も多い。急な遅延などが発生することもある。「特に遅刻、早退連絡は子供の安全にかかわる。伝達漏れがあると、『あの子が来ていないけれど、どうしたの?』と慌てることになりかねない。デジタル化で全教職員が情報をしっかり共有できるようになり、子供の安全管理につながっている」と話す。

今後は教員が多忙を極める学期末、年度末の作業を効率化するため、健康観察簿の入力をデジタル化し、出席簿や通知表などで自動集計できるよう連携させることも検討している。

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