命を救う大切さと難しさ 国境なき医師団がオンライン授業

世界各地で医療・人道援助活動を展開している「国境なき医師団日本」が、命を救うことの大切さや難しさを考えるための「世界といのちの教室」を、小学5、6年生を対象にしたオンライン授業として実施している。6月13日に行われた授業では、支援現場に必要な物資の調達や病院の建設などを行う「ロジスティシャン」として活躍していた吉田由希子さんが講師となり、国境なき医師団としての原則に立ちながら、状況に応じて一人でも多くの命を救うための最善策をチームで話し合う重要性を伝えた。

子供たちに向けて講演する吉田さん(Zoomで取材)

これまで中東やアフリカの紛争地などにロジスティシャンとして派遣された経験を持つ吉田さんは、最初に子供たちに「安心して生きていくために必要なものは何か」と尋ねた。子供たちから寄せられた「水」「栄養」「病院」「友達や仲間」などの回答を吉田さんは紙に書き、封筒の中に入れるとそれを無造作につぶして、「どんな気持ちになった?」と問い掛けた。続けて「大切なものが一瞬でなくなり、絶望や不安が広がる。それは、戦争や災害に巻き込まれた人の気持ちでもある。世界では、実際に同じようなことが起きている」と子供たちに伝えた。

また吉田さんは、写真や動画で「国境なき医師団」の活動を説明。「独立」「中立」「公平」の3つの原則に基づき、医療を受けられない人を差別することなく援助していると強調しつつ、実際の現場では難しい判断を迫られることもあると説明した。

後半では「薬が1人分しかない状況で、政府側の12歳の子供と反政府側の12歳の子供の兵士の、どちらを助けるべきか?」という問いが示され、子供たち同士でグループに分かれてディスカッションが行われた。子供たちからは「家族を守って戦ってきた子供兵士に薬を与えるべきだ」「政府側の子供は、政府から援助を受けられるかもしれない」「子供兵士を助けたら、また多くの人を殺してしまうのではないか」などの意見が出た。

子供たちの意見に耳を傾けていた吉田さんは「私たちも、一人でも多くの命を救えるように、3つの原則に立って最善の方法をチームで話し合っている。実際の現場では、患者の症状やそのときの緊急性、状況なども判断材料になるので、答えは一つではない。そのときどきで最善策は変わってくる」と話し、実際に自分自身が経験した現場の葛藤について紹介した。

「国境なき医師団日本」では、このプログラムを学校向けにも実施していく予定で、ホームページで参加希望を募っている。

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