個別最適な学び「教員と産業界が作る」 文科省前担当課長

個別最適な学びと教育のデジタル化を巡るオンラインイベントが6月19日に開かれ、前文科省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長で、現在は内閣官房でデジタル庁創設に向けた準備室のメンバーとなっている髙谷浩樹・理化学研究所経営企画部長が登壇した。髙谷部長は「Society5.0における個別最適な学びの実現には、個人個人がどういう学習状況なのかという、データの活用が必要不可欠」とデータ駆動型教育の重要性を指摘。さらに「データを元に個別最適な学びと判断した内容を提供するには、子供向けのインターフェースが必要になる。これは学校現場の教員と産業界が一緒に作り上げていくべきものだ」と述べ、1人1台端末を活用した個別最適な学びを実現するためには、学校現場と産業界が協力する必要があるとの考えを強調した。

髙谷・理化学研究所経営企画部長(上部中央)が説明した、教育のDX化と個別最適な学びのイメージ

このオンラインイベントは教育イノベーション協議会(佐藤昌宏代表理事)が、教育のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関わっている文科省、経産省の担当者や学識経験者などを招いて開催した。

髙谷部長は、教育のDX化による個別最適な学びのイメージについて、「一人一人の学習者用PCから学びのデータがクラウドに行き、そのデータをもとに一人一人の子供たちにとって何が最適な学びなのかを判断し、その判断に基づいて一人一人に最適なコンテンツを提供すること」と、図を示しながら説明した=写真

続けて「すなわち、デジタル社会、Society5.0における個別最適な学びの実現には、個人個人が一体どういう学習状況なのかを示すデータの活用が必要不可欠だということを、ぜひポイントとして押さえておいていただきたい」と指摘。先に教育再生実行会議が「データ駆動型教育」を第12次提言の柱に据えたことに言及し、「データ駆動型というのは非常に堅苦しい言葉で教育関係者には分かりにくいと思うが、『個人個人の情報に基づいて、個人個人に教育をする』ということだと私は考える」と述べた。

こうした児童生徒一人一人の学習データを使った個別最適な学びを実現するために、どのような課題があるのか、髙谷部長は3段階に分けて説明。(1)子供たちの学びのデータを収集・蓄積する仕組み(2)データをもとに、子供たちに最適な学びを分析・判断する仕組み(3)判断に基づき、子供たちに最適な学びを提供する仕組み--を挙げた。

まず、(1)については、「データ形式の標準化が重要。標準化というのは、データをきれいに集めて、いろいろ使えるようにすることが目的になる。次に、データを流通させ蓄積する方法、さらには教育外の分野との連携が必要になる」と述べた。「教育外の分野と連携するためには、社会全体のデジタル化と歩調を合わせながら、デジタル庁が各自治体、産業界関係者としっかり進めていくところがポイント」と指摘した上で、政府がデジタル庁創設に向けて教育分野で検討している主な論点として▽データ形式の標準化▽データの流通・蓄積方法の整備▽個人データの活用--に言及した。

(2)では、「これまでの教え方は、ベテラン教師の勘と経験が頼りだった。これがエビデンスに基づく教育になり、しっかりと根拠に基づいて子供たちに教育するようにならなければいけない。これは教育の神髄で、教育自体の大きな転換点になる」と概括。「IT分野のいろいろな方々に話を聞いても、子供たちにどういう教育をフィードバックして提供したらいいのかは、やはり教育関係者でないと分からない。そうなると、今一番の課題は、教育界とデジタルの親和性ということになる。ITへの苦手意識、お荷物意識から脱却しなければいけない。これは教育界全てであって、文科省も教育委員会も学校現場の方々も、教育とデジタルの親和性をしっかり進める必要がある」と力を込めた。

(3)は「1人1台端末が実現する中で、デジタル教科書、デジタル教材といったものの開発がなんとか始まってきた。まだ混乱しているが、これから本当に子供たちに向けたUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)が必要になる」と指摘。「ここは現場の教育者、まさに先生たちが最も子供たちのことを分かっているわけで、そういう教員と産業界で作り上げていくべきものだろう」と述べた。

最後に「学校現場がデジタル化されることによって、本当は教員の業務は楽になるはずだが、全然実感できていない。産業界も教育分野では非常に閉じていると思う。社会全体のデジタル化の中で、さまざまな業種の連携を早く築き上げなければいけない。なぜなら、もう端末が配られていて、このままうまく進んでいかないと教員の仕事が増えてしまい、教員にデジタルへの苦手意識が出てくる。子供たちと教育界全体がDXの良さをなかなか実感できないまま、時間がどんどん過ぎていってしまう」と危機感を訴えた。

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