【免許更新制】 千葉県知事、文科相に「速やかな廃止」要望

中央教育審議会(中教審)で存廃も含めた議論が進んでいる教員免許更新制について、熊谷俊人・千葉県知事は6月21日、文科省で萩生田光一文科相に面会し、教員のなり手不足の解消と研修の重複による教員の負担軽減を理由に「速やかに廃止すること」を要望した。速やかな廃止が困難な場合は▽定年後に再雇用された教員の免許更新を不要とする▽教員研修と更新講習の重複を排除する制度とする--ことを求めた。面会を終えた熊谷知事は「教員の負担軽減のみならず、その時間を子供たちに注いでもらうという意味で、子供や保護者にとっても、日本の社会にとっても、教員免許更新制は一日も早く廃止をすることが重要だと考えている」と強調した。教員の採用権者である都道府県の知事が教員免許更新制の廃止を求めるのは、これが初めてとみられる。

萩生田文科相に面会する熊谷千葉県知事

要望書では「千葉県では定年後の教員の任用を積極的に進めているが、定年後に教員免許更新講習を課すことが、教員本人の負担増となるとともに、人材確保の点から障壁となっている」と指摘。「教員免許更新講習に頼らなくとも、教員の知識技能をアップデートできるよう研修の充実に努めている」とし、「学校の働き方改革を進める中で、教員研修と教員免許更新講習の重複を解消することが課題となっている」と実情を説明した。

これに対し、萩生田文科相は面会の冒頭、「教員免許更新制については、いま中教審にお諮りしているので、私が方向性をあらかじめ申し上げるわけにはいかないが、なぜ諮問したかと言えば、課題があるから。審議会の結果を見て、スピード感をもって対応したい」と応じた。

面会後、記者団の取材に応じた熊谷知事は、教員免許更新制の速やかな廃止を要望した理由について、「今、コロナ禍で教員の負担も非常に大きい状態になっている。その中で、大臣が今年春、教員免許更新制の在り方について諮問された。このタイミングを逃すことなく、千葉県の学校現場の実情を大臣にお伝えし、そうした実情も加味した上での議論と制度の見直しの検討をお願いするために、今回要望させていただいた」と説明。

教員免許更新制が教員不足に苦しむ学校現場に与えている影響について、「いま教員のなり手が非常に不足している状態の中で、知識も経験も豊富な、定年後の教員たちに学校現場で引き続き活躍してもらうようお願いしているが、定年後の教員免許の更新を一つのきっかけとして教育現場を離れてしまう方々が少なくない状況がある。若手の教員がいま非常に増えているので、経験豊富な方々が若手教員の模範となり、教育レベル全体を上げていくためにも、教員免許更新制でベテラン教員が去っていく現状を一刻も早く直していかなければいけない」と訴えた。

さらに、教員免許更新制の見直しではなく、「速やかな廃止」に踏み込んだ要望を行った背景を問われ、「そもそも教員は常に研修を受けている。それから節目研修の形で、10年などさまざまな節目のときにも、まとまった研修を受けている。教員免許更新制は、30時間という枠や、連続して受けなければいけないという硬直的な研修制度になっており、教員が実体を伴わない研修によって長時間拘束されたり、それによって教員の負担が重くなったりしている実態がある」と、教員免許更新講習が抱える問題点を厳しく指摘。

面会後、記者団との質疑に応じる熊谷千葉県知事

「私は、教員の負担軽減のみならず、その時間を子供たちに注いでもらうという意味で、子供や保護者にとっても、日本の社会にとっても、教員免許更新制は一日も早く廃止をすることが重要だと考えている。免許更新制を導入するときから、私はずっと同じことを言い続けてきた」と語気を強めた。

また、教員免許更新講習がなくなった場合、中教審が指摘している教師の資質能力の確保に問題はないか、との質問には「私は教員免許更新制によって、(資質能力の確保などが)補われていた側面は、ほとんどないと思っている。それは実態を見れば明らか」と返答。「大事なことは、時代に合わせて教員として必要なレベルアップやアップデートを随時行い、それがしっかりと担保されるような制度設計をそれぞれの自治体が構築をすることであり、それをしっかりと文科省と見ていくこと。いわゆる節目に絶対に5日連続みたいな形で、しかも30時間をこなせば、どれをとっても別に構わない、という現状の教員免許更新講習は、教員の時間を奪うだけで、アップデートにすらなっていないのが実態だと思う」と切り捨てた。

千葉県で教員免許更新制を担当する同県教育庁教育振興部教職員課によると、千葉県では、産休や病欠などで休職している教員の代わりとして加配するなど、学校現場の要員確保に、定年後の教員から希望者を活用している。こうした定年後の教員の中には、教員免許更新講習を受けていないことを理由に、再雇用の要請を断るケースもあるという。

教員免許更新制の存廃を巡る中教審の議論では、5月24日の教員免許更新制小委員会の席上、文科省が改革案のたたき台として「教師と任命権者等との『対話』や研修の奨励が確実に行われるための制度的な措置」の導入を「中核的な仕組み」として提案。取りまとめ役の加治佐哲也主査(兵庫教育大学長)は「こういったことができれば、免許更新制はなくてもいいのではないか」と指摘し、6月末に予定される次回会合で免許更新制の存廃を含めて審議する考えを示している。

熊谷俊人・千葉県知事が萩生田光一文科相に出した要望書の全文
要望書

教員免許更新制は、教員が定期的に最新の知識技能を身に付けることを目的としておりますが、千葉県においては、教員のなり手不足の解消と研修の重複による教員負担の軽減を図る上で、本制度が大きな課題となっております。

本県においては、知識と経験が豊富な定年後の教員の任用を積極的に進めておりますが、定年後に免許状更新講習を課すことは、本人の負担増となるとともに、県としても人材確保の点から障壁となっております。

また、本県においては、キャリアステージに応じた教員研修を実施し、その研修履歴を管理するとともに、県内の学校の状況と課題を踏まえた教員研修の見直しを毎年実施しております。加えて、教員は、子供や保護者と日々向き合う中で多様な経験を積み重ねるとともに、校内研修を通じて主体的に教員としての資質能力の向上に努めております。

このように本県としては、免許状更新講習に頼らなくとも、教員の知識技能をアップデートできるよう研修の充実に努めておりますが、学校の働き方改革を進める中で、教員研修と免許状更新講習の重複を解消することが課題となっております。

つきましては、本県の実情についてご理解いただくとともに、下記の事項について、特段の措置を講じていただきますよう、お願い申し上げます。

  • 教員免許更新制を速やかに廃止すること

速やかな廃止が困難である場合は、

  • 定年後に再雇用された教員の免許更新を不要とすること
  • 教員研修と免許状更新講習の重複を排除する制度とすること
令和3年6月21日
文部科学大臣
萩生田光一様
千葉県知事 熊谷俊人

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