高大接続改革「10年の議論、水泡に消えるわけではない」 文科相

大学入学共通テストでの英語4技能試験と記述式問題の実施を「困難」とする提言案を文科省の大学入試検討会議が示したことについて、萩生田光一文科相は6月25日の閣議後会見で、「大学は高校での学びをきちんと評価できなくなるのか、という指摘は全く違う。共通テストのみで評価するのではなく、個別の試験で各大学がきちんと評価していくことになれば、高校での学びは何ら変わらないと思う」と述べ、各大学が個別試験で対応することにより、大学入試改革の道筋を維持できるとの見解を示した。学力の3要素に対する多面的・総合的評価を掲げ、大学入学者選抜の見直しに取り組んできた高大接続改革全体への影響については、「10年間議論してきたことが全く水泡に消えるわけではない。この(議論の)大切さを、それぞれの大学がどう試験に連結していくかを模索する最終段階、と承知している」と説明した。

大学入試改革について説明する萩生田文科相

萩生田文科相は、6月22日に開催された「大学入試のあり方に関する検討会議」で、大学入学共通テストでの英語4技能試験と記述式問題の実施を「困難」とする提言案が示されたことについて、「一定の方向性がまとまりつつあるのではないか。さまざまな意見を踏まえてさらに案を修正し、次回の会議において最終的なまとめに向けた議論をする」と状況を説明。

新学習指導要領のカリキュラムで学んできた高校生が最初に受けることになる2024年度の大学入学者選抜について、「文科省としても提言を踏まえ、本年夏ごろに行う通知公表に、間に合うように整理をしていきたい」と述べ、今後のスケジュールを確認した。

大学入学共通テストにおける英語4技能試験と記述式問題の導入を最終的に断念する場合、新学習指導要領が高校までの学びで重視している「学力の3要素」(思考力・判断力・表現力)について、これまで文科省が目指してきた多面的・総合的評価を行うことができるのか、という疑問に対し、萩生田文科相は「(検討会議の)最終提言で英語4技能や記述式問題を共通テストの枠内で行うことをやめることになれば、じゃあ、大学は高校での学びをきちんと評価ができなくなるのか、という指摘は全く違う」と反論。

高大接続改革の概要を示した文科省の資料。この図の左下にある「大学入学共通テスト」の柱だった英語4技能試験と記述式問題が「実現困難」とされた

学力の3要素に対する具体的な評価方法については「英語4技能の大切さは変わらないし、しっかり勉強してもらう。それを共通テストのみで評価するのではなく、個別の試験で各大学がきちんと評価していくことになれば、高校での学びは何ら変わらないと思う」「記述式も、極めて短い文を共通テストにひも付けるよりは、各大学が個別試験、あるいはAO入試(総合型選抜)や推薦入試(学校推薦型選抜)の場合は時間があるわけだから、そういうところできちんと評価する必要性は、検討会議で共有している」などと説明した。

これまで文科省や中教審では、高校生が大学受験を優先させて学習指導要領が目指す学びが実現できないとの問題意識から、大学入学者選抜の見直しに取り組んできた。こうした高大接続改革全体への影響について、萩生田文科相は「(英語4技能試験と記述式問題の実施は)共通テストと一緒にやることが難しいというところまでは議論が詰まっているけれど、これ(高大接続改革)は要らないんだ、10年間議論してきたことは全く水泡に消えるんだということではない。この大切さを、それぞれの大学がどう試験に連結していくかを模索する最終段階、と承知している」と述べ、高大接続改革そのものは引き続き前進させていく考えを示した。

一方、大学の個別試験に任せると学力の3要素をきちんと評価できない大学も一部で出てくるのではないか、との質問に対し、萩生田文科相は「18歳人口がどんどん減っている中で、大学は毎年増えている。定数を割ってしまっている大学が数多くある。そういう中で、各大学が存在感をきちんと示すのであれば、1年に1回の入試問題が作れない、1年に1回の採点ができない、という大学が存在していくことが、本当に日本の高等教育の在り方としていいのか」と指摘。

続けて「推薦入試などの場合、時間はいっぱいある。論文をきちんと読み込むことができないとか、問題を作れないという大学がもし存在するとすれば、そのことの方が私は問題だと思う」と述べ、各大学は個別試験で受験生の思考力や判断力、表現力をきちんと評価するように促した。これまでの検討会議の議論では、大学側の一部から英語4技能試験や記述式問題の出題と採点を独力で実施することは難しいとの意見が表明されている。

検討会議では6月30日に次回会合を開き、提言案についてさらに議論を行う予定。


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