【教員制度改革】管理職の資質能力を明確化へ 中教審特別部会

教員制度の抜本的な改革に取り組む中央教育審議会(中教審)は6月28日、特別部会と教員養成部会による合同会議を開き、今後の進め方について、「『個人』としての教師に求められる共通的な資質能力」と「『組織』としての教職員集団の姿」を一体的に議論することを了承。その中で、教職員集団をまとめる校長など学校管理職の役割や資質能力を明確化していく方向性を打ち出した。続いて、教職員の資質能力を高めるために必要な学校組織マネジメントについて、町支大祐・帝京大講師と中原淳・立教大教授による共同報告と、百合田真樹人・教職員支援機構上席フェローからのヒアリングを行った。

教員制度改革を議論した中教審特別部会

特別部会の正式名称は「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」。会議の冒頭、中教審会長でもある渡邉光一郎部会長(経団連副会長、第一生命ホールディングス会長)は「教員の養成・採用・研修などを考えるためには、新たな時代において、どのような学校組織や教職員集団の姿を実現するのかが固まらないと議論が先に進まない。そのコアとなる、新たな時代の学校組織マネジメントについて先に取り上げたい」と述べ、議事進行に理解を求めた。

続いて、当面の議論の進め方について、文科省の担当官は▽予測困難な時代の到来など社会の急激な変化に対応するため、さまざまな背景や経験をもった人材が学校現場に参画する教職員集団の姿をイメージした上で、①「個人」としての教師に求められる共通的な資質能力と、「組織」としての教職員を一体的に議論する▽①と②を見通したビジョンを特別部会で共有し、そのビジョンに基づいて各論ごとに専門的な議論を行う▽学校組織マネジメントやその持続的な成長を促す研修推進体制の観点から、学校管理職の在り方や教師の学びなどの振り返りを支援する仕組みについても、あわせて検討する――と説明。

さらに過去の中教審答申を踏まえ、教師個人と学校組織に求められる力について考え方を再整理して提示。今後の検討の方向性として、▽5月24日の教員免許更新制小委員会で示された「『令和の日本型学校教育』を担う教師の学び(新たな姿の構想)」を踏まえて、「令和の日本型学校教育」を担う教師の学びの在り方を議論する▽さまざまな背景や経験をもった人材が参画するこれからの学校組織の中で、教職員集団をまとめる校長など管理職の役割や資質能力をさらに明確化していくことが必要▽新たな時代における教師の学びの在り方を検討する際には、管理職の養成や登用の在り方との関係も踏まえつつ議論する――などの留意点を挙げた。

次に、学校組織マネジメントについて、有識者のヒアリングを行った。町支講師と中原教授は「『変化』を生み出す教職員集団」を実現するためには、人材開発と組織開発を両立させた「両利きの学校運営」が必要だと指摘。人材開発は「教員個人の能力形成を通じて、子どもにより付加価値の高い学びを提供する」ことであり、組織開発は「組織ぐるみで業務を見直し学習資源・心理資源を生み出し、変化を主体的に創造する一助とする」ことだと説明した。

元中学校教員の町支講師は、横浜市教委との研究プロジェクトによる経験を踏まえ、「教師の学びと職場作りは車の両輪。教員の学びは現場にある」と指摘。同時に「このままでは絵空事になってしまう。なぜなら、現場にリソース(資源)が失われているから」と述べ、教員の長時間労働を是正して負担を軽減し、学び変わるための「学習資源」と、教員が納得して変わろうと思う「心理的資源」の2つを確保する必要を強調した。

報告する町支大祐・帝京大講師(左下)と中原淳・立教大教授(右下)

中原教授は、校長など学校管理職の役割に注目し、「教員の育成のために、管理職による育成支援は必須になる。3年間隔の異動で本当に組織を変革する気になるのか。腰を落ち着けて組織を率いる時間をきっちり確保しなければならない。もうひとつ、管理職にも学び直しの機会を作る必要がある。ただ、管理職に対して指導主事による学びの提供は難しい。教師の学びとリーダー職の学びはセットで考えたほうがいい」と述べた。

百合田上席フェローは「教師集団を支える学校管理職の機能変化」に着目して報告を行った。まず、資質能力を定義して、研修やトレーニングを通して資質能力の形成を図る従来の施策には「限界と得手不得手がある」と指摘。その理由として▽教師の職務は多岐多様にわたるため、資質能力を網羅的に定義できない▽社会の変化が加速度的に進む中で、資質能力の定義は急速に陳腐化する▽予測困難な社会を想定する資質能力は抽象的にならざるを得ず、指標化して評価に用いることに適さない――ことを挙げた。

その上で、先行きが不透明なVUCA時代に、多様で複雑な課題に学校教育が対応するためには、各学校が計画的に組み立てる教育課程の効果的実践が不可欠だとして、それを実現するのに「多様な資質能力をもつ教職員集団を組織して課題解決に当たる、ローカルな協働型の研修モデルが必要」と述べた。同時に、教職員集団の資質能力の幅と多様性を把握し、必要な職能成長の機会確保を組織的・計画的に実践する組織リーダーとして、「学校管理職の在り方の見直しが必要」と強調した。

また、日本の校長など学校管理職が抱える問題点について、「日本の学校長は教職キャリアの終わりに任用され、着任した学校での任期も短い。各学校の実情や実態ベースのニーズを把握し、自律的な組織として教育目標を設定し、目標に照らした教員組織の機能強化を図る体制整備の時間はない。そのための指導的技能形成の機会も乏しい」と指摘した。

質疑応答では、貞広斎子・千葉大教育学部教授は2つのヒアリングについて「なるほど、やはりそうだな、と答え合わせをさせていただくような報告だった」と賛意を示した上で、「教員にとっては、学校現場での具体的な経験の中で課題の抽出があり、それを腹落ちして、なんとかしなければならないと思うことが学びのエンジンになっていくのだと思った。もし履修履歴が必要で、それを教員免許更新講習に代えるのであれば、校内の研修とか、授業研究など学校現場での教員の学びこそ、記録をとって次の学びにつなげていくことが大事ではないか。それによって、学びの場となるローカルな学校が実現でき、そこで魅力的な職能開発ができるのだと考えた」と話した。

教員免許更新制小委員会で取りまとめ役の主査を務める加治佐哲也・教員養成部会長(兵庫教育大学長)は「学校の同僚性や協働性が大事であり、その中で教師が育ち、そこに校長も入って学ぶという考え方は分かる。だが、今の校長の資格要件をどう変えたらいいのか、選考方法をどう変えるべきなのか」と、質問を出した。

これに対して、百合田上席フェローは「いま教職員支援機構で、学校管理職を丁寧に研修していく体系的なプログラムをつくれないか検討している。さまざまなステークホルダーを入れて、プログラムをきちんと構築することが先で、校長の資格要件を考えるのは、あと2年くらい先になるだろう」と答えた。

中原教授は「管理職になるのは、生まれ変わりに近い。研修で学ぶことと、それを実践できることは峻別(しゅんべつ)する必要がある。実践できるようになるには、振り返りと研修を繰り返す必要があり、時間がかかる。その時間をきちんと確保しなければいけない。また、管理職に誰を上げるかというのは、端的に言えばマネジメントできる人を上げる。その一歩手前のキャリアでマネジメントを実践して成果を上げられた人を上げる。これが基本中の基本になる。この仕組みはリーダーシップ・パイプラインという。継続的に管理職が生まれる仕組みを作っていかなければならないが、もしかしたら、いまの学校ではそれが機能不全になっているのかもしれない」と説明した。

■特別部会における教員制度改革の議論の進め方
  • 予測困難な時代の到来など社会の急激な変化に対応するため、さまざまな背景や経験をもった人材が学校現場に参画する教職員集団の姿をイメージした上で、そのために必要となる①「個人」としての教師に求められる共通的な資質能力と、②「組織」としての教職員集団の姿を一体的に議論する。
  • ①と②を見通したビジョンを特別部会で共有し、そのビジョンに基づいて各論ごとに専門的な議論を行う。
  • 学校組織マネジメントやその持続的な成長を促す研修推進体制の観点から、学校管理職の在り方や教師の学びなどの振り返りを支援する仕組みについても、あわせて検討する。
■新たな時代における教師・教職員集団の持続的な成長の在り方の検討の方向性
  • 教員免許更新制小委員会において、示されている「『令和の日本型学校教育』を担う教師の学び(新たな姿の構想)」を踏まえて、「令和の日本型学校教育」を担う教師の学びの在り方を議論する。
  • さまざまな背景や経験をもった人材が参画するこれからの学校組織の中で、教職員集団をまとめる校長など管理職の役割や資質能力をさらに明確化していくことが必要。
  • 新たな時代における教師の学びの在り方を検討する際には、管理職の養成や登用の在り方との関係も踏まえつつ議論する。
  • 学校組織マネジメントや研修推進体制については、国内外の事例研究も参考に、「令和の日本型学校教育」に相応しい在り方を議論する。

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