子供の自殺防止へICT活用を 有識者会議が審議まとめ

文科省の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」が6月25日開かれ、これまでの議論を総括した審議まとめ案が示された。案では、昨年の児童生徒の自殺が過去最多となった背景には、コロナ禍による家庭や学校の環境変化があったと分析。悩みや不安を抱えた児童生徒の早期発見・対応に向けたICTの効果的な利活用や、教職員の連携も含めた対応能力の向上が必要だと強調した。

オンラインで行われた文科省の有識者会議

同案ではまず、昨年の児童生徒の自殺が499人に上り、統計開始以来、過去最多となった背景には、家庭や学校の環境変化があったことが考えられると指摘。家庭環境については、大人の在宅勤務などで家庭内の過密化を引き起こし、葛藤が浮き彫りになって、子供たちが「居場所がない」との思いを強くした可能性があると分析した。

さらに、そうした子供たちにとって避難場所になる学校も、長期休業や学校行事の中止などで、子供たちの夢や目標を達成する機会が失われてしまったと説明。コロナ禍の影響が続く中、子供を支えるプラットフォームとして学校が機能できるよう、改めて環境整備を行っていく必要があると強調した。

また、昨年の児童生徒の自殺では、うつ病を含む精神疾患の影響を原因・動機とする割合が増え、特に中学生以上の女子で顕著にその傾向が見られるとして、メンタルヘルス問題を抱えた児童生徒を精神科治療につなげるとともに、学校と医療機関、保健行政機関などが連携した支援が必要であるとした。

こうした状況を踏まえた今後の施策としては、GIGAスクール構想で端末が整備されたことを踏まえ、自殺予防に向けたICTの利活用が喫緊の課題だと指摘。具体的にはSNSを活用した相談体制の構築や、児童生徒の状況をICTで多面的に把握することで、悩みを抱える児童生徒を早期発見し、教員やスクールカウンセラーなどによる具体的支援につなげることが必要だとした。

さらに自殺の問題は「専門家でも1人で抱えることができない」として、自殺の危険が高まった児童生徒を1人の教職員だけで支えるのでなく、チームで支援する体制づくりが求められると強調。保健所や医療機関、児童相談所など、関係機関の一層の連携強化が必要であることを盛り込んだ。

会合では、このまとめ案に対して新井肇委員(関西外国語大外国語学部教授)が「ICTを活用して子供たちのチャンネルを増やすことは必要だが、最終的に人間関係をどう築き、子供たちのSOSをいかにきちんと受け止めて支えるかが、非常に重要だ。教員同士の学び合いや研修を重ね、そうした素地をつくっておくことが大事だと強調したい」と述べた。
また、松本俊彦委員(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長)は「自殺予防教育には性教育や薬物乱用教育が密接に絡んでいる。10代の薬物乱用はほとんどが市販薬で、リストカットを繰り返してしまうといったケースがあり、こうした教育も同時に考えてほしい」と要望した。

最後に蝦名喜之大臣官房審議官は「自殺予防教育について有意義な示唆をいただいた。自治体への通知や研修会を通じて学校現場の自殺予防教育の推進を図り、コロナ禍で悩みや不安を抱える生徒を1人でも多く助けていきたい」と締めくくった。

最終的な審議まとめは29日、都道府県教委などに送られた。


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