文科省に「反省と教訓」求める 大学入試検討会議が最終討議

文科省の「大学入試のあり方に関する検討会議」(座長・三島良直日本医療研究開発機構理事長)は6月30日、前回会合で示された、大学入学共通テストの英語4技能試験と記述式問題を「実現困難」とする提言案について修正案が示され、最終討議を行った。修正案では、文科省に対し「今回の事態が受験者等に与えた影響を真摯に受け止め」るよう反省を促した上で、提言内容については「今後、他の施策においても生かされることを求めたい」として、今後の教訓とすることを求めた。最終的な提言は、この日の議論を踏まえた再修正を経て、近く萩生田光一文科相に手渡される。

この日示された提言案の修正案では、前回の会議で英語4技能試験と記述式問題の導入を見送った経緯について、反省や教訓の記述を求める意見が相次いだことを受け、冒頭部分に「外部弁護士の協力も得て行った過去の検討経緯の整理・検証を踏まえ、そこから得られる教訓を基に大学入学者選抜に係る意思決定のあり方も議論した。文部科学省においては、今回の事態が受験者等に与えた影響を真摯(しんし)に受け止め、提言に盛り込んだ大学入学者選抜に係る意思決定のあり方については、今後、他の施策においても生かされることを求めたい」と新たな項目を追加した。

この表現について、委員からは「なるべくクリアに書いた方がいい。受験生の信頼を失墜する事態だったということを、もう少し正直に書いた方がいいような気がする」(芝井敬司・関西大理事長、日本私大連盟常務理事)などの意見が出された。

委員による意見交換では、民間英語資格検定試験の大学入学者選抜への活用や、その共通テストでの活用を断念する主因となった地理的・経済的事情への対応などを巡って、改めて議論が交わされた。

私立高校の立場から吉田晋・富士見丘学園理事長(日本私立中高連会長)は「新学習指導要領では、小中高を通して、聞く・話す・読む・書くを統合した言語活動を重視しており、コミュニケーションの場面から英語の授業を行うようになって、すでに10年以上がたつ。圧倒的に読むことに偏っている各大学の個別試験と、スピーキング能力やライティング能力も含めて測定する民間資格検定試験のいずれが、学習指導要領が求める教育活動と親和性があるかは明らか」と指摘。

さらに「国が統一的なパフォーマンステストを導入できない以上、正確な英語力の到達度の把握方法は民間資格検定試験であるという現実を無視しないでほしい。共通テストの枠組みでの資格検定試験の活用が困難となり、残念ながら日本の教育のグローバル化は、諸外国にさらに後れをとることとなった。これ以上の停滞は許されない」と述べ、各大学による個別試験や総合型選抜、学校推薦型選抜などの大学入学者選抜では、引き続き英語民間資格検定試験を活用することが現実的だと強調した。

「実質的公平性」の重要性を強調する末冨芳・日本大文理学部教授(文科省YouTubeチャンネルより)

末冨芳・日本大文理学部教授は、提言案が地理的・経済的条件に配慮した受験機会の確保や、障害のある受験者への合理的配慮の充実、多様な背景を持つ学生の受け入れなど「実質的公平性の追求」を明記したことについて、「教育政策史に残る重要な意義を持つ」と高く評価。

「すでに子供や受験生の貧困と格差の問題は、十分に深刻化している。かつ、多様なバックグラウンドを持った住民が日本の社会に多く住む時代になっている。実質的な公正性を全ての教育政策分野で実現していくことを考えてほしい」と力を込めた。

共通テストで英語民間試験の活用を目指した背景には、学習指導要領がグローバル化社会に対応したコミュニケーション重視の英語4技能の育成を目指す中、その英語4技能を評価できる方法が事実上、民間英語資格検定試験しかないという現実がある。一方、2019年秋、その英語民間試験の活用に対する反発が一気に広がった背景には、大学入学者選別には、受験機会や選抜方法における形式的な公平性だけでなく、地理的・経済的条件に配慮した受験機会の確保など「実質的公平性」が求められるという社会的な要請があった。

今回の提言案では、こうした経緯を1年半かけて検証し、問題点を整理した上で、50万人が受験する共通テストでの対応は断念し、各大学による個別対応に委ねるという判断を下したが、最後の議論の場となったこの日の検討会議でも、こうした本質的な問題が改めて問い直される形になった。


ニュースをもっと読む >