【免許更新制】現場教員の58.5%が否定的 中教審小委

教員免許更新制の存廃を含めた見直しを検討している中教審の教員免許更新制小委員会は7月5日、第3回会合を開き、文科省が教員免許更新講習を巡る現場教員へのアンケート調査の結果を報告した。それによると、受講した講習が「役に立っているか」との質問に対し、否定的な答えが37.8%で、肯定的な答えの33.4%を上回った。「免許状更新講習の総合的な満足度」の質問には否定的な答えが58.5%に達し、肯定的な答えの19.1%を大幅に上回った。また、教員研修の履歴管理状況についても調査結果が示され、都道府県や政令市の7割以上がすでに履歴管理を行っていることが分かった。文科省は教員研修の充実に向けて、教育公務員特例法に基づいた指針やガイドラインで具体的な内容を示すことを論点として提示した。

オンラインで意見交換を行う教員免許更新制小委員会のメンバー

教員免許更新講習を巡るアンケート調査は、民間調査機関のモニター会員となっている全国の現場教員を対象に、4月28日から5月11日にかけて、インターネット経由で抽出調査を行った。回答数は2108人。性別では男性64.9%、女性35.1%、実際の教員よりも男性の比率が高い。勤務先の学校種は幼稚園3.9%、小学校29.2%、中学校23.6%、高校36.2%、特別支援学校7.1%だった。

調査結果によると、受講する講習を選ぶにあたって重視する点は、受験会場が「とても重視する」「やや重視する」を合わせて91.0%を占め、次に受講時期が同じく89.7%、講義内容が同じく78.5%だった。更新講習を選ぶときには、場所と日程を講義内容よりも重視している実態が浮かび上がった。

受講した講義内容の満足度を受講直後に聞いたところ、「満足」「やや満足」が計57.9%と過半を占め、「やや不満」「不満」の計16.1%を大きく上回った。

一方、受講した講習が現在の教育現場で役に立っているかとの質問には、「役立っている」「やや役立っている」を合わせた肯定的な答えが33.4%だったのに対し、「あまり役立っていない」「役立っていない」を合わせた否定的な答えは37.8%になり、肯定的な答えを上回った=グラフ①。講習内容が役立ってないと感じる理由を自由回答で聞いたところ、「現実との乖離(かいり)があり、実践的な内容でないため」が52.3%を占めた=グラフ②

受講に当たっての負担感を観点別で聞いたところ、受講費用が「かなり負担に感じた」「やや負担に感じた」を合わせて87.0%でもっとも高く、次に講習時間が同じく84.7%だった。受講費用と講習の時間数(30時間)が教員にとって大きな負担となっている実態が確認された。

さらに免許状更新講習の総合的な満足度を聞いたところ、「やや不満」「不満」を合わせた否定的な答えが58.5%と約6割となり、「満足」「やや満足」を合わせた肯定的な答えの19.1%を大幅に上回った=グラフ③。教員免許更新制全般に対する自由意見では、「制度自体を廃止すべき・免許更新制度に意義を感じない」が50.4%で、過半となった=グラフ④

会合では、教員免許更新制が教員不足に及ぼす影響について、ある県で非正規の臨時的任用教員と非常勤講師の任用状況を調べた佐久間亜紀・慶大教職課程センター教授の事例研究も報告された。それによると、「60歳以上の世代が、非常勤講師の6割以上を担うとともに、臨時的任用教員についても1割以上を担っており、主たる担い手として重要な役割を果たしている」と実態を説明。「教員免許更新制度が現状のまま続く場合は、今後毎年、更新対象となる、退職者の教員免許の多くが失効していき、非常勤講師の需要に対する主要な供給源が失われる可能性が高い」と結論付けられている。

次に、教員研修の履歴管理状況について、文科省が4月から5月にかけて都道府県・政令市などの教委に行った調査結果が示された。電子ファイルや紙などで教員研修の履歴を管理している自治体は、▽都道府県(47自治体)の幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校 36自治体(76.5%)▽都道府県の高校・中等教育学校・特別支援学校 39自治体(82.9%)▽政令市など21自治体 15自治体(71.4%)▽中核市61自治体 26自治体(42.6%)。中核市で研修履歴を管理している自治体が少ないのは、自ら教員を任命する教育委員会が少ないことが理由という。

こうした調査結果を受けて、文科省は教員研修の充実について、論点例を提示。▽校外研修などのOff-JTと日常的なOJT との関係を踏まえ、研修は最新の学校現場の教育課題に即した内容となっていることや、対面・集合型の研修とオンデマンドや同時双方向型のオンライン研修の組み合わせによる効果的・効率的な実施が求められる。これらを促す方策としてどのようなことが考えられるのか▽教師の主体的・自律的な研修を実現する上で、学校管理職などのマネジメントはどうあるべきか▽任命権者や学校管理職等の期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合の対応をどう考えるか--などを挙げた。

その上で、教員の資質向上を図る研修の在り方について、教員に研修の機会を与えることを定めている教育公務員特例法22条に基づき、指針やガイドラインで具体的な内容を示すことを提起した。

委員の意見交換で、貞廣斎子・千葉大教育学部教授は「研修履歴の管理と言うが、管理という名称自体に誤りがある。優先順位は管理ではない。個々の教師が自らの職能開発のプロセスを将来の見通しを持って、例えば、育成指標等と連動させつつ振り返り、主体的に次の学びをマネジメントしていくことにあるのではないか」と指摘した。

さらに「6月28日開催の特別部会と教員養成部会の合同会議のヒアリングで、現場での経験的学びこそが教員資質の向上をもたらすという報告があった。そうであるならば、日常的なOJTを充実させることが非常に重要になる。必要に応じてウェブ等も併用しつつ、校内研修が充実されるということを再評価していくべきであり、これらの校内研修も履歴として適宜記録し、教員の振り返りを支援するという方策もある」と問題を提起。「こうした校内研修が充実され、日常的な学びが実現されるには、学校長の役割は本当に重要になる。『子供も教師も育つ学校』が理想であり、そのためには管理職が見通しを持って教師たちを育成していくことが非常に重要だ」と強調した。

松木健一・福井大副学長は「免許更新講習には、個人の免許をチェックしていく部分と、現職の教員が学び続けて資質や能力を向上させていく意味の二つがある。個人の免許をチェックするなら、金銭的負担が個人に課せられるのは当たり前かもしれないが、日本型学校教育で求められている教員の協働や、学校全体を学び合う組織にマネジメントしていく話は個人の金銭的な負担にはなじみにくい。日本型学校教育をさらに進めていくときに、個人に金銭的な負担を強く求めていくことを超えた部分を、今私たちは考えなければいけない状況になってきているのではないか」と述べ、研修の目的と費用負担の考え方を改めて整理し直すべきだとの考えを示した

藤田裕司・東京都教育長は「研修を充実させるには、OJTと自己啓発を組み合わせて、学校現場でどうやって学んでいくのかが重要だと思う。その中で、校長の役割、マネジメント、人材育成が非常に大事になってくる。校務全体の見直しも含めて、考えていかなければいけないのではないか。また、資質能力の向上を教員と管理職が(面接などで)話していくときに、受講履歴を参照しながら対話を進めて人材育成をやるが、そのときには業績評価とのつながりをどう持たせていくかが重要になってくると思う」と指摘。管理職の役割とともに、教員の資質向上を図る研修の在り方と、教員の業績に対する評価をどうつなげていくかに着目するべきだとの意見を述べた。

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