コロナ休校中の教委対応、地域の社会階層により差 中教審報告

新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校で、その間に教育委員会が取った対応には、地域の社会階層により大きな差があったことが、東京大学大学院の中村高康教授らが7月8日、中教審初等中等教育分科会で報告した調査結果で明らかになった。文科省の委託調査の一環として、教育委員会と保護者への調査などから公立小・中・義務教育学校に関する対応状況を分析したもので、保護者らの社会経済的地位が低い地域で、教育委員会が十分な対応を取れなかった可能性が浮き彫りになっている。

ウェブ会議で開かれた中教審初等中等教育分科会

同調査では昨年春の休校期間中に、全国の教育委員会が児童の自宅学習を充実させるために実施した内容を分析。教科書に基づく学習の指示やプリント学習など「紙媒体活用」、独自の学習動画や教材の配布など「教委独自の対応」、同時双方向型オンライン指導など「ICT活用」といった項目の対応状況を調べたところ、関東でICT活用が比較的高いなど、地域による濃淡が見られた。

さらにこうした教育委員会の対応内容と、その地域の大卒者の比率の関連を調べたところ、大卒比率が高いほど、教育委員会がそれぞれの取り組みを実施した割合が高かった。感染状況が同程度の地域で比べた場合もやはり、大卒比率の高い地域の教委ほど充実した対応を行っていた。

大卒比率は社会経済的地位を示す指標の一つと考えることができ、中村教授は「大卒地域の高い地域では、保護者の高い教育への関心・関与があると予想される。それに対して、教育委員会が対応しているか、またはもともとそういう風土があって対応していることが考えられる」と説明した。

地域の大卒比率が高いほど、教委のICT活用も充実していた(出所:中教審資料「コロナ休校時における教育委員会の対応―地域差と階層差に注目して」)

加えて保護者を対象とする調査では、両親の大卒割合が高い学校ほど、休校中に家庭で何を学んでいるのか聞く、学習スケジュールを立てるのを手伝う、オンラインで学習教材を使えるようにするなど、サポートを行っている割合が高かった。また、新型コロナウイルスで生活が苦しくなったと答えた割合も、両親が大卒の家庭より非大卒の家庭で高かった。

中村教授は「中学校も同様の傾向が見られ、さまざまな面でコロナに限らず、社会経済的な格差に留意が必要。保護者のニーズに合わせて『できるところからやる』という対応は、社会的に恵まれている地域を結果的に優先することになる可能性がある」と指摘した。

これに対し、貞廣斎子委員(千葉大学教育学部教授)は「親の学歴が低い学校ほど、そこの家庭の生活が苦しく、子供の教育に親の関心がより向かなくなるにもかかわらず、教育委員会の対応はそうした学校でこそ消極的だった。教育に対する意識はリソースの一つだが、これが地域により偏在しており、教育委員会の対応力とその偏在が連動しているという知見でもある」と述べた。

中村教授とともに今回の調査に携わる早稲田大学の松岡亮二准教授は「動けなかった教育委員会を単に非難するのではなく、恵まれない地域を特定・把握して、教員やICT指導員などを追加的に配置して効果を測定するための基礎データとして用いてほしい。教育委員会が対応できたかどうかに一定の系統性があり、それが社会階層と関係しているということを、議論の大前提にしてほしい」と強調した。

また、複数の委員から「こうしたデータが独り歩きすることは望ましくない」という指摘を受け、同じく調査に携わるオックスフォード大の苅谷剛彦教授は「とはいえこの調査がなければ、コロナ禍で学校や生徒、教育委員会の全国的な実態が分からず、エビデンスのないまま、議論をしなければいけなかったはずだ」と、今回の調査の意義を説明した。


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