全国学調CBT化で最終まとめ 学力調査は中学校から導入

全国学力・学習状況調査のCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)化について検討している、文科省のワーキンググループ(WG)は7月12日、最終まとめとともに、今後の導入に関する工程の考え方を示した。そこでは2024年度以降、規模が比較的小さい調査や選択肢式の調査から段階的にCBTでの実施を始め、試行・検証しながら規模・内容を拡充していく方向性が出された。規模が大きく内容の検討も必要な学力調査は、端末の操作に慣れている中学校で先行的に、25年度以降の速やかな導入を目指す。

最終まとめで示された工程の考え方

最終まとめでは「工程に関する考え方」が示され、24年度に予定されている次回の「経年変化分析調査・保護者に対する調査」(以下、経年調査)から順次、CBTを導入することを提言した。

経年調査から導入する背景については「悉皆調査より対象学校数や児童生徒数が少ないことや、調査期間は約1カ月間と幅を持たせていること、調査問題は国全体の学力状況の推移を測ることを目的としており、基本的に非公開で継続的に使用しているものであることなどを踏まえると、CBT化に向けた要件をより多く備えている」と指摘した。

また「CBTで実施する初期段階、少なくとも次回の調査においては、CBTとPBT(ペーパー型調査、Paper Based Testing)を併用することや、以降の教科調査のCBT化に向け、システム・ネットワークの実証など課題の洗い出しを行い、調査方式による回答への影響などを検証するための大規模実証として位置付けることなどを明記した。

より規模の大きい悉皆調査については、選択肢式のみのアンケートで教科調査より課題が少ない「児童生徒質問紙調査」から先行して始める方針を示した。すでに今年度、一部の国立大付属学校で試行的に実施しており、24年度から「教科調査に先駆けて全面導入することが可能」とした。

教科調査は実施規模が大きい上、指導改善に活用する目的を踏まえた問題作成や公開の在り方、結果分析・提供について「十分な準備や検討が必要」と指摘。経年調査のCBTによる実施結果などを踏まえ、「次回の経年調査の翌年度(25年度)以降、できるだけ速やかに、まず中学校から導入(PBTと経過的に併用)することを目指してはどうか」と提言した。

中学校を先行させる理由としては、基本的な端末の操作が小学校段階よりも熟達しており、短答式・記述式の問題にも比較的対応しやすいことや、小学校よりも学校数が少なく、実施体制を整えやすいことを挙げた。ただ、英語の「話すこと」調査は技術的な難易度が高く、「技術的に可能な範囲で実施することが適当」とした。小学校は、中学校でのCBT導入の翌年度(26年度)以降、当初はPBTと併用しつつ、できるだけ速やかに導入することとした。

最終まとめでは、この工程について「技術発展の可能性や試行・検証を経て明らかになることなど、不確定な要素がさまざまあるため、それらを踏まえ今後、ここに示す目標時期や手順などを変更することもあり得る」と付記している。

今回の会合に同席した同WGの上部組織「全国的な学力調査に関する専門家会議」の耳塚寛明座長(青山学院大学コミュニティ人間科学部特任教授)は、段階的な試行・検証やIRT(項目反応理論)の導入などに触れ、「こういう軌道修正はきちんと実現すれば、長く全国学力・学習状況調査が抱えてきた課題の解決につながる可能性を持った、画期的な改革になると思う」と評価した。また「(悉皆調査のCBT化は)できるだけ速やかに導入、と書かれているが、焦ることなく時間をかけて取り組んでいただきたい」と話した。

さらに「将来的に、悉皆調査の調査設計は現在のものから大きく変更されていく。調査の実施に際して、また結果を現場で活用するに際して、非常に大きな影響があることは明らかで、教育委員会と学校へ丁寧に説明を続けていくことが不可欠だ」と述べた。

最終まとめは7月末に「全国的な学力調査に関する専門家会議」の会合で報告される。

全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ 最終まとめ
<総論>

⑴段階的な試行・検証の必要性

⑵端末による学習環境への習熟と発達段階などへの考慮

⑶CBT化による学校現場への負担の考慮

⑷詳細な調査設計の検討の必要性

⑸CBT化に向けた体制整備の必要性

<各論>
⑴日々の学習におけるICT の活用と全国的な学力調査との関係
  • 日々の学習におけるICT の活用の必要性
⑵CBT の利点を活かした学力調査の在り方

①調査日程・期間

  • 一定期間内(複数日に分散)の実施

②調査問題

  • 問題セット/問題の在り方/出題方法/記述式

③項目反応理論(IRT)

  • IRT の活用/悉皆調査におけるIRT/経年調査におけるIRT/作問体制/問題漏洩への対応

④結果提供・解答データの取り扱い

  • 結果提供/解答データの取り扱い

⑤特別な配慮が必要な児童生徒への対応

  • CBT システムにおける合理的配慮/作問・出題における合理的配慮
⑶CBT特有の課題・論点

①問題作成の体制や工程

  • 問題作成の体制/問題作成の工程

②調査資材の印刷、配送・回収、採点、集計、分析など、現在の一連の工程の効率化

  • 問題冊子の印刷、配送・回収/採点/結果提供

③学校現場における円滑な実施

  • 学校現場への支援
⑷実施体制等

①CBTシステムの開発(業務管理、採点、集計・分析、問題バンクなど)

  • システム設計/実施方式/問題バンクの作成/地方自治体が独自に実施する学力調査との連携

②試行・検証事業、予備調査、試行等を含めたスケジュールや具体的な進め方

  • 試行・検証の必要性/準備期間と進め方/CBT化に向けた「工程に関する考え方」
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