STEAM教育の実践例を共有 高大接続の課題も指摘、中教審

中央教育審議会(中教審)初等中等教育分科会の教育課程部会は7月15日、高校でのSTEAM教育と教科横断的な学習の推進について集中的な議論を行った。会合では、兵庫県立加古川東高校と高知県立山田高校がSTEAM教育をカリキュラムに取り入れた実践事例を報告し、「生徒の計画性や独創性、課題発見力などが高まった」「生徒が褒められ、教員のやる気スイッチも入った」などと成果を説明。委員からは「あるべき教育を追求している」と評価する声が出る一方、こうしたカリキュラムの実践が大学進学や生徒確保にどうつながるか道筋がはっきりしない現状を憂慮し、「高大接続につながることが大事」とする指摘も出た。

STEAM教育の実践例を議論した中教審教育課程部会

会合では、まず、学校教育におけるSTEAM教育と教科横断的な学習の推進について、文科省初等中等教育局教育課程課の滝波泰課長が考え方を説明した。それによると、教育委員会がICT活用や外部人材とのマッチングなどを通じて各学校の取り組みを支援。各学校は「文理の枠を超えたカリキュラム・マネジメントの充実」を掲げて教科横断的な視点で教育課程を編成・実施し、その中で各教科の教員の専門性を生かした協働体制の構築や、教師の負担軽減に配慮しながら外部リソースやICTの活用を行う。そこに「教育活動としての『各教科等における探究的な学習活動の充実』と『総合的な探究の時間や理数探究等を中心とした探究活動の充実』を関連付けながら、実施していくことが重要と考えている」という。

次に加古川東高校の志摩直樹校長が実践例を説明した。同校は6年前から「育てるべき生徒像(グラデュエーション・ポリシー)」として「『正解』のない社会を切り拓く力」の育成を掲げ、探究学習に取り組んできたが、生徒への調査から「新しいことに挑戦する勇気」が小さいことが判明。一昨年に同県のSTEAM教育実践モデル校となった際に、STEAM事業の目標として好奇心、関与力、課題解決力の向上をターゲットに設定した。

教科横断型の活動に取り組むために校内の組織を改編。教員の理解促進や研修に取り組みながら、昨年度、夏季休業中を中心にドローンや地域デザイン、3Dプリンターなどをテーマに20人程度の希望する生徒が参加する特別講座10種類を実施した。特別講座には生徒123人が参加。終了後のアンケート調査では、全生徒が「参加して良かった」と答えた。全教員対象のアンケートも実施しており、「意義がある」77.8%、「生徒のためになった」77.3%など肯定的な意見が多数を占めた、という。特別講座は今年度も継続しており、230人が参加を申し込んでいる。

続いて、山田高校の正木章彦校長は、高校3年間を通した地域課題探究学習のプログラムについて説明。「地域住民や行政に積極的に関わってもらうことで、圧倒的な当事者意識を出すことができている」と報告した。昨年度からは学科再編を行い、普通科のほかにグローバル探究科とビジネス探究科を新設した。

グローバル探究科では「簡単に答えが見いだせない『問い』を探究できる生徒」の育成を目指しており、夏休みのフィールドワークで地域の専門家と一緒に鹿の食害調査を行ったり、高知工科大学と連携して海塩に含まれるマイクロプラスチックを調べたり、地域密着型の探究学習を進めている。

委員との質疑応答では、「探究型の学習は大学進学に結び付いているのか」との質問が出た。加古川東高校の志摩校長は「数字的なデータはないので、分からないというのが正直なところ。ただ、英語での発表を通じて、海外の大学に興味を持った生徒が増え、この数年で2、3人の生徒が直接海外の大学に進学した」と回答。山田高校の正木校長は「進学実績は徐々に上がってきている。家庭の経済環境が厳しい子供もいるので、探究学習をやることによって、国公立大学への進学希望が増えてきていることは間違いない」と答えた。

また、山田高校が定員200人に対して充足率が53%にとどまっている理由を聞かれ、正木校長は「中学校に出向いていろいろと説明しても、『探究って何なの』『普通科の授業の方がいいんじゃないの』と言う中学校の先生や保護者がいて、なかなか理解を深めてくれない。それでも負けずに中学校を回って、徐々に増やしていきたい」と、実情を説明した。

市川伸一・東大名誉教授は「教育としてあるべき姿を追求している感じがすごくある。問題はどうやってこれを全国の高校に普及させていくかで、非常に困難がある。学習指導要領が変わっても、なかなか高校は変わらない。高校の先生からは「だって大学受験が変わらないじゃないか」と言われてしまう。結局は大学受験のプレッシャーにつぶされてしまい、生徒も結局、進学実績の良いところを選ぶことになりがち。私立を含む進学校をどうやってシフトしていくのか。今回の大学入試改革でも、結局あまり変わってない。高校での探究学習やSTEAM教育と大学での学びについて、どういうふうに接続を図ろうとしているのか。高大接続は一体どうなっているのか」と、新学習指導要領が掲げる高校での学びと高大接続が抱える問題点を改めて指摘した。

これに対して、荒瀬克己・教育課程部会長(独立行政法人教職員支援機構理事長)は「このことは今後の議論の中で本当に深めていきたい。私立も含めて進学校と言われる学校に広がるのかどうか。広がらなければ、結果的には、(探究学習やSTEAM教育を)やっているところとやってないところが単に線引きされるだけになってしまう。学習指導要領の着実な実施が高大接続にしっかりと絡んでいることが非常に大事だ。今後議論ができればと思う」と、引き取った。

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