【GIGA到来】1人1台初の夏休み 各校の端末活用計画

多くの学校では、1人1台端末になってから初めての夏休みを迎える。文科省は当初より端末の持ち帰りを前提とした活用を想定しており、同省が7月13日に都道府県・政令市教委に向けて出した事務連絡においても、夏休みの家庭への持ち帰りの施行が示されている。しかし、通信環境の確保や保護者の理解など、さまざまな事情で持ち帰りを許可していない自治体もまだ多くあるようだ。そんな中、夏休みを機に持ち帰りをスタートさせる学校では、どのように活用を計画しているのか——。各地の事例から、夏休みの端末活用について考える。

「夏休みも使えた」という自信を持たせる

千葉県柏市では、「GIGAスクール研究校」の4校では持ち帰りを施行していたが、この夏休みからは市内全小中学校で持ち帰りを始める。7月には各家庭のWi-Fi環境の調査を行った上で、児童と保護者が持ち帰りに関するルールの確認も終えた。

同市立土小学校の6年生の担任を務める和田恵吾教諭は「今回の夏休みは、これまで同様の紙の課題も出すが、グーグルクラスルームを活用したものにも取り組む」と話す。内容としては、指定の課題をグーグルスライドで作成して提出することと、夏休み中に2〜3回、宿題の状況や出来事についてクラスルーム上にコメントすることだ。

同校では昨年度まで2年間、研究校だった関係で、6年生は他学年と比べてICTにも慣れている。そのため、これまでの授業でもグーグルスライドを使って課題を作成することにチャレンジしており、夏休みにも同様の課題を出そうと考えた。

また、1学期の復習や、5年生までの苦手なところを復習するため、柏市で導入しているデジタルドリル学習「ジャストスマイルドリル」も活用する。これについて和田教諭は「特に範囲は示さない」と言い、「児童によって課題は違うので、自分に必要なところをやってほしい」と、一人一人の習熟度に応じた学習として実施するように指示を出す。

当初は、もっといろいろなICTを活用した夏休みの課題案が出ていたそうだ。しかし、祖父母の家で過ごすなど、子供たちがWi-Fiにつながる環境に毎日いるとは限らない。また、例えば「親がいない時はパソコンを立ち上げてはいけない」など、それぞれの家庭のルールがあることにも配慮した上で、今回の夏休みについてはこうした活用内容に決めた。

「端末の持ち帰りは夏休みが初めてなので、子供たちにも保護者にも大きな負担になるものではなく、これまでの学習でやってきたことをベースに、誰でも出来る課題を設定した。子供たちが『夏休みも家でパソコンが使えた!』という自信を持って、2学期をスタートできれば」と期待を込める。

8月中旬にオンラインの学習支援を計画

宮城県石巻市立河南東中学校でも、夏休みから端末の持ち帰りを始める。同市はLTE方式で、同校では持ち帰りに向けて1学期はルールを作ったり、家庭でグーグルミートの接続テストを行ったり、持ち帰りに対する同意書を作成するなど、少しずつ準備を進めてきていた。

藤原教務主任が出す予定の技術家庭科(技術分野)の課題

夏休み中の活用について、まず学習面では、グーグルクラスルームに各教科の1学期の資料や課題が残されているので、いつでも復習できるようになっている。夏休み明けすぐに、年間4回あるうちの2回目の定期考査(9教科)が予定されており、各教科からそれに向けた課題もグーグルクラスルーム上に示される。

藤原英治教務主任は「昨年までと違い、今年は生徒が課題を終えたら都度、提出できるようになる。教員も夏休み中に課題のチェックができる」とメリットを挙げる。

また同校では、全体的な傾向として数学に課題があるという。そこで、8月中旬の3日間、1年生から3年生まで希望者を募って、グーグルミートによる学習支援も計画されている。「全く初めての試みなので、どのくらい集まるかは未知数だが、ブレイクアウトセッションなども活用して、生徒の理解がより深まるようにしたい」と、新たな試みに教職員も意欲を示していると言う。

さらに、夏休みの部活動の欠席連絡には、グーグルフォームを活用する。1学期から生徒の欠席連絡にグーグルフォームの導入を模索していたそうで、「夏休み中に部活動の欠席連絡で試してみて、課題があればそれを改善し、2学期から欠席連絡などに本格導入していきたい」と話す。これについては、保護者が保護者の端末を使ってグーグルフォームを送れるようにする予定だ。

同校では夏休みに入る直前まで、活用内容について検討を重ねてきた。藤原教務主任は「持ち帰りをすることで、どういう場面で使えるのか、先進校の事例などありとあらゆる可能性を調べた。この夏はまずできることをやって、2学期以降も持ち帰りを実施して活用の幅を広げたい」と展望を述べた。

「なぜ持ち帰らせるのか」の目的を示すべき

GIGAスクール構想の本格始動を踏まえ、4月に教育新聞が教員を対象に実施した学校現場の1人1台端末環境に関するアンケートでは、児童生徒の端末持ち帰りについて、「持ち帰りを許可している・する予定である(条件付き含む)」は44.5%、「許可していない・しない予定」は38.7%だった。

4月以降、活用方法や使用ルールについては確立しつつあっても、長期間の持ち帰りとなると、家庭での通信環境の確保や、紛失・破損の恐れを心配し、許可しない自治体や、自治体から持ち帰りが推奨されても学校ごとに持ち帰りをしないという判断を下しているケースもあるようだ。

これまで市内の小中学校からも夏休みの端末活用について相談を受けてきたという、福岡市のICT教育特別研究員としても活動する福岡市立福岡西陵高校の吉本悟教諭は「夏休みにできることが変わるので、個人的には持ち帰りはした方が良いと思う」と考えを明かすが、「ただ、今回は初めての夏休みということで、準備ができていない学校は、持ち帰らないという判断をしてもやむを得ないだろう」と話す。

端末が普段使いになっていない、普段から持ち帰りをほとんどやっていない学校であれば、児童生徒にとって端末が「学習道具」というイメージは、まだ薄いだろう。また、例えば週末の持ち帰りであれば保護者の目も届きやすいが、夏休みとなると家庭での受け入れ準備が整っていないケースも考えられる。

「こうしたことも分かった上で、家庭と学校でコンセンサスが取れるのであれば、『まずはICTのある生活をこの夏は体験させる』という目的で持ち帰らせる。それ自体が宿題ということも、今年の夏に限ってはありなのではないか」と話し、学校側が「なぜ持ち帰らせるのか」の目的をきちんと伝えることが、保護者の理解を得るためには必要だとした。

以前よりICTの活用が進んでいる自治体や学校は、夏休みの端末活用について「普段通り」と口をそろえる。吉本教諭も「今年は持ち帰りができなかった自治体や学校でも、来年の夏休みは全く違った活用法になっているはずだ。自由研究のレベルなどもぐっと上がってくるのでは」と期待を示した。

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