「体育含め4教科を優先対象に」 教科担任制導入へ報告案

2022年度からの本格導入を目指す小学校高学年からの教科担任制の在り方を議論する文科省の検討会議(座長・髙木展郎横浜国立大名誉教授)が7月21日開かれ、これまでの議論をまとめた報告案が示された。教科担任制の推進に向けて、各地域・学校の実情に応じた新たな教員の配置を進めるべきとした上で、優先的に対象とすべき教科については、外国語・理科・算数に体育を加えた4教科が適当であると明示した。各委員から特に異論は出ず、髙木座長が来年度予算の概算要求に向けて文言を修正して、最終的な報告をまとめることになった。

教科担任制の在り方を巡って議論した検討会議の髙木座長

検討会議の名称は、「義務教育9年間を見通した指導体制の在り方等に関する検討会議」。今年1月の中教審答申で、「小学校高学年からの教科担任制を本格的に導入する必要がある」と明記されたことなどを踏まえて、先進事例の調査や議論を重ねてきた。

21日の最終会合で示された報告案では、教科担任制の推進の考え方について、「各地域・学校の実情に応じた取り組みが可能となるような定数措置により推進を図ることを中心に考えるべき」と明記し、新たな教員の配置を進めるべきとの考えを打ち出した。

また、優先的に専科指導の対象とすべき教科については、中教審の答申でグローバル化やSTEAM教育の充実・強化に向けて例示された外国語・理科・算数に加えて、「学年が上がるにつれて技能差や体力差が広がりやすく、個々の能力に適した指導・支援を安全・安心を確保しながら行う必要がある」などとして、体育を加えた4教科が適当と考えられると明示した。

さらに専科指導の専門性を担保する方策については、教科ごとの実態・特性を考慮しつつ、▽当該教科の中学校か高校の免許状の保有▽専門性向上のための免許法認定講習の受講・活用▽教科研究会などの活動実績――といった要件を組み合わせることなどが考えられるとした。

報告案の内容に対しては各委員から特に異論は出されず、来年度からの学校現場への導入に向けた文科省への質問や要望が相次いだ。

大字弘一郎委員(全国連合小学校長会会長)は「英語専科の指導では、2018年から3年間で3000人配置された。今回はどれくらいの規模で何年かけて一定の数が確保できるのか、見通しを聞かせてほしい」と質問した。

これに対して文科省の担当者は「現段階で答えるのは難しいが、これまでの意見をもとに文科省として方向性を固め、8月の概算要求までに詰めていきたい」と答えた。

また、貞廣斎子委員(千葉大教育学部教授)は「定数措置がない状況では教科担任制に取り組める学校や地域は限定的で、子供たちの学びに差異や格差が生じる恐れがある。国全体としての措置がいかに重要かを報告書でもっと強調してほしい」と要望した。

村田かおり委員(兵庫県教委義務教育課長)も同様の問題に触れ、「一番懸念するのは小規模校に人が配置されるかどうかということ。措置されるのは大規模校か都市部に偏るのではないかと懸念する声があり、子供の学びが平等になるように国としてしっかり取り組んでほしい」と述べた。

検討会議は同日で終了し、各委員からの意見を踏まえて髙木座長が最終的な報告書を取りまとめ、来年度予算に向けた概算要求までに文科省に提出する方針。

義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について(報告案・主要部分のみ)

小学校高学年における教科担任制の推進方策について

(1)小学校高学年における教科担任制推進の考え方
中央教育審議会での整理を踏まえ、国として小学校高学年における教科担任制の推進を図るため、各地域・学校の実情に応じた取組が可能となるような定数措置により、特定教科における教科担任制の推進(専科指導の充実)を図ることを中心に考えるべきである。

○中央教育審議会での整理を踏まえ、教師の負担軽減を図りつつ、新学習指導要領に示された資質・能力の育成に向けて義務教育9年間を見通した指導体制を構築するため、小学校高学年からの教科担任制を推進する必要がある。
○推進方策を講ずるに当たっては、従来、学級担任制が基本とされてきた小学校の良さを活かしつつ、高学年段階における教科担任制を推進することで、中学校への円滑な接続を図る必要がある。
○その際、教科指導の専門性を持った教師による、深い教材研究に根ざしたきめ細かな指導と中学校の学びに繋がる系統的な指導の充実を図るとともに、教師の持ちコマ数の軽減、授業準備の効率化等による教師の負担軽減を図る観点にも留意しつつ検討することが求められる。
○また、中央教育審議会答申でも「地域の実情に応じて多様な実践が行われている現状も考慮」するよう示されており、各地域・学校の実情に応じた取組が可能となるような措置とする必要がある。
○これらのことを踏まえれば、新たな定数措置により特定教科における教科担任制の推進(専科指導の充実)を図ることを中心に考えるべきである。

(2)優先的に専科指導の対象とすべき教科について
教科指導の専門性を持った教師によるきめ細かな指導と中学校の学びに繋がる系統的な指導の充実を図る観点から、外国語、理科、算数及び体育について優先的に専科指導の対象とすべき教科とすることが適当と考えられる。

○各地域・学校の実情に応じた取組を可能とすることに留意しつつ、教科指導の専門性を持った教師による、深い教材研究に根ざしたきめ細かな指導と中学校の学びに繋がる系統的な指導の充実を図る観点から、優先的に専科指導の対象とすべき教科について検討する必要がある。
○中央教育審議会答申では、既存の教職員定数において一定の専科指導を実施することが考慮されていることや地域の実情に応じて多様な実践が行われていることに引き続き配慮するとした上で、グローバル化の進展や STEAM 教育の充実・強化に向けた社会的要請の高まりを踏まえ、外国語・理科・算数を例示している。
○これらの教科のほか、体育について、以下のような教科指導の専門性、系統的な指導の必要性や、子供の体力向上に資すること、定年延長を巡る動向の中での教師の年齢構成、再任用を含む人材確保の観点等を踏まえ、対象教科とすることが適当と考えられる。
(体育):運動が苦手な児童をはじめ全ての児童に、できる喜びを味わわせていくことが求められるとともに、学年が上がるにつれて技能差や体力差が広がりやすく、個々の能力に適した指導・支援を安全・安心を確保しながら行う必要がある。生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現する資質・能力を育むうえで、高学年児童の発達の段階、能力や適性、興味や関心に応じて、運動の楽しさや喜びを味わい、自ら考えたり工夫したりしながら運動の課題を解決する学習を展開し、中学校の内容も見据えた系統的な指導を行うことができる専門性が必要とされている。

(3)専科指導の専門性を担保する方策について
国として定数措置を講じ、(2)の対象教科について専科指導の充実を図る上で、当該教科の専科教員に対し、教科毎の実態・特性を考慮しつつ、例えば、①当該教科の中学校又は高等学校の免許状の保有、②専門性向上のための免許法認定講習の受講・活用、③教科研究会等の活動実績、といった要件を組み合わせるなどして適用することが考えられる。

○国として教科担任制を推進する上で定数を措置していくに当たっては、専科指導の専門性を客観性のある形で担保することが望ましいと考えられる一方、教師がキャリアを積む中で OJT を通じて専門性が培われる側面も考慮すれば、専科教員に対し、例えば、①当該教科の中学校又は高等学校の免許状の保有、②専門性向上のための免許法認定講習8の受講・活用、③教科研究会等の活動実績、といった要件を組み合わせるなどして適用することが考えられる。その際、教科毎の実態・特性を考慮して要件に差異を設けることが適当と考えられる。
○このうち①の中学校免許状の保有を要件とすることについては、小・中学校の校種を跨ぐ人事異動の状況とも相まって小・中学校免許状の併有状況には都道府県間でばらつきがみられること、小・中学校免許状の併有促進に向けた制度改正が予定されていることなどを踏まえて検討する必要がある。
○既存の小学校英語専科指導のための加配措置における専科教員の要件については、この間、小学校外国語科の新設に対応した研修や、新学習指導要領への移行措置期間を含む実践が積み重ねられ、小学校教員がその指導力を身に付けつつある状況等を踏まえて見直すことも考えられる。
○併せて、例えば外国語など教科によっては、専門性を有する人材確保の観点から、特別免許状の更なる活用や、中学校教員が小学校と兼務していわゆる乗り入れ授業を行うなど小・中学校の連携等を進めることも有効と考えられる。
○また、中学校の学びに繋がる系統的な指導の充実を図る観点から、各教育委員会等の指導・支援の下、小学校の専科教員に対し、担当教科に係る中学校進学後の生徒の学びの状況を把握し、小学校の指導の特質を踏まえつつ、系統的な指導の検証・改善に資する機会を提供することも重要である。

(4)学校規模や地理的条件に応じた教職員配置の在り方について
既存の定数措置も踏まえつつ、(2)の対象教科について専科指導の更なる充実を図るための措置を講ずる必要があるが、学校規模(学級数)や地理的条件に応じ、例えば、学年1学級程度の小規模校間における小小・小中連携や義務教育学校化を促すことなどにより対応することも考えられる。

○持ちコマ数の多い高学年段階の教師の負担軽減に資するためには、既存の定数措置も踏まえつつ、(2)の対象教科について専科指導の更なる充実を図るための新たな措置を講ずる必要がある。しかしながら、専科教員の人材確保の観点等を考慮すれば、学校規模や地理的条件に応じ、例えば、学年1学級程度の小規模校間における小小・小中連携や義務教育学校化を促すことなどにより対応することも考えられる。
○併せて、授業準備の効率化や教材研究の深化にも資するべく、学級数に応じた学級担任間の授業交換を促進することも考えられる。

おわりに
○当面は、以上の整理を踏まえ、特定教科における教科担任制の推進を図ることを中心に定数措置を進めることが適当であり、(2)の対象教科に係る専科指導の取組・定着状況、少人数学級や義務教育学校化、教員免許制度改革の進展状況等の関連動向を踏まえつつ、義務教育9年間を見通した指導体制の将来像を検討する必要があると考える。
○また、(1)でも述べたとおり、小学校高学年における教科担任制の推進は、教師の負担軽減を図りつつ、義務教育9年間を見通した指導体制の構築を目指すものである。本報告(案)に示した定数措置の活用を含め特定教科における教科担任制を進めるに当たっては、これまで以上にブロック内の小・中学校が相互に連携し、義務教育9年間を見通して児童生徒の資質・能力を育成することができるよう取り組むことが望まれる。
○なお、小学校高学年における教科担任制推進のため、各地域・学校の実情に応じた取組が可能となるような定数措置を講じることにより、例えば学級担任間の授業交換との組み合わせを含め、どのような形態の教科担任制を構想・推進するのか、各教育委員会等の指導・支援の下に校長のマネジメントの幅が広がることとなる。その意味で、教科担任制推進の趣旨・目的の実現に向け、各地域・学校の実情に応じた校長のマネジメント力の発揮に期待したい

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