いじめ兆候見逃すな 国研が「対応記録ツール」配布へ

国立教育政策研究所(国研)は、いじめかどうか判断できない段階から学校の教職員が気になった事案を容易に記録できる「いじめ等対応記録ツール」を、学校現場で活用できるよう8月にも配布する。通常、児童や生徒同士のトラブルのレベルと判断された事案は教育委員会に報告されないことが多いが、数年後にいじめの原因となる可能性もあるといい、「このツールを活用して学校として記録を残すとともに、いじめの未然防止などに役立ててほしい」としている。

国研によると、全国の教育委員会の中には、いじめと判断された事案について、月ごとか学期ごとに事実関係を整理した報告書の提出を学校に求めているところがある。しかし、積極的にいじめを認知しようとする学校ほど、被害児童生徒へのケアから学校の対応、周りの児童生徒へのケアなど多くの要素を盛り込もうとして分量も多くなり、資料作成の負担が増えて、児童生徒と向き合う時間が失われてしまう状況も生まれがちだという。

また、こうした記録は教育委員会への事後報告のためのものになりがちで、校内で十分に活用されておらず、いじめ事案への対応が始まったときから速やかに作成を始め、進行とともに随時更新して教職員の間で共有することが必要だといわれてきた。さらに報告されるのは「いじめと認知された事案」に限られ、日常的なトラブルと判断された事案は教職員のメモで終わってしまうことも多いが、数年後にいじめの原因となりうる可能性も考えられ、同様に記録しておくことが重要だと指摘されている。

こうした中、国研の生徒指導・進路指導研究センターは、現場の教職員が比較的容易に気になった事案を記録できる「いじめ等対応記録ツール」を試作した。画面は「新規事案」か「既存事案の追記」のどちらかを選び、発生日時と関係する児童生徒の情報や事案の概要を書き込める仕様になっていて、教職員がいじめかどうか判断する前の段階から気になった事案や、学校として対応した事案などを容易に記録できる。いじめ事案に限らず、不登校や虐待が疑われる事案などでも対応できる。

総務省が2018年に行った「いじめ防止対策の推進に関する調査」によると、調査対象となった169校、389事案のうち32校、45事案の認知漏れがあった。また同じ時期に文科省が行ったいじめなどに関する調査では、小中学校の2割前後がいじめの認知件数をゼロと報告しており、いじめが見過ごされている可能性があると指摘されている。

こうした背景も踏まえて国研では、いじめなどと判断する前の時点から事実関係に加えて、学校がどんな指導やケアを行ったかなど、学校としての対応を継続して記録することで、いじめの見過ごし防止にもつながると分析。ツールの開発について、「容易に記録できる上、報告書などを作成する際の省力化につながる。現場で活用して、いじめの未然防止など自校の取り組み改善に役立ててほしい」としている。

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