定時制高校が合同企業説明会 外国人生徒に在留資格を解説

多様な生徒が在籍する定時制高校。キャリア教育や進路指導の一環として、東京都墨田区にある都立橘高校定時制課程(菅原敏雄校長、生徒88人)では、地元企業などを集めた合同企業説明会を開催している。生徒が学校推薦を受け、企業を1社しか応募できない代わりに、ほぼ確実に内定を得られる「1人1社制」が一般的な高校で、学校主催での合同企業説明会を開くのは珍しい。今年度からは、在籍する外国人生徒向けに、高校卒業後の在留資格に関する説明会も設けられた。7月19日に開かれた同校の合同企業説明会の様子を取材した。

大卒よりも早くスタートが切れるからこそ

日も暮れかけた午後6時ごろ、同校の体育館には地元で高卒採用を行っている企業の人事担当者や、都が運営する職業訓練施設である職能開発センター、ハローワークの職員が集まり、慌ただしく準備を進めていた。高卒採用を支援するジンジブと同校が連携し、建設や警備、電気工事、食肉、飲食チェーンなど、幅広いジャンルの企業が参加した。

やがて生徒たちがやってくると、1社・団体につき3分のアピールタイムがスタート。会社の特徴や社風の紹介はもちろん、中には高校生へのメッセージを熱く語る担当者の姿も見られた。その後、生徒らは各社・団体のスピーチを踏まえ、さらに話を聞いてみたいと思ったところのブースに向かい、熱心に説明に耳を傾けていた。説明会を通じて、生徒は3つの企業・団体の説明を聞く。最初に自分が希望する会社・団体に行った後、他の会社・団体のことも知ることで、さまざまな選択肢を比べられるようにしているという。

企業の説明に耳を傾ける生徒ら

電気工事を請け負ったり、電気工事の専門資格を取得するためのスクール事業を手掛けたりする企業では、代表取締役自らが説明に立ち、自分自身が中学校卒業後、高校に進学せずに働いた経験を踏まえ、生徒らに学歴に関係なく活躍するために入社時に考えなければならないことをアドバイス。「高卒は大卒よりも早く社会人としてのスタートが切れる。だからこそ、学歴の壁を超えられないような会社には行かない方がいい。もう少し貪欲に仕事について考えてもらえたら」と話した。

説明会終了後、今年度で卒業する4年生の生徒は「どの会社もすごくしっかりしていて、説明も分かりやすく、就職に対する疑問のいくつかは解消した。ただ、進路をどうするかは、まだいまいち、自分の中でつかみきれていない」と迷いものぞかせていた。

在留資格を変更しないと就労できない外国人生徒

3年目を迎えた同校の合同企業説明会で異彩を放っていたのが、「外国人在留支援センター」(FRESC)のブースだ。FRESCは昨年7月に東京都新宿区に開設され、日本で生活する外国人を支援するためのさまざまな行政機関の窓口が一カ所に集約されている。行政間で連携して、ワンストップで外国人や外国人を雇用する企業などを支援する。

ブースでは、東京出入国在留管理局在留支援部門受入環境調整担当官の建山宣行入国審査官が、同校の外国人生徒と車座になって、高校卒業後に就職するための在留資格について丁寧に説明していた。日本の高校に在籍している外国人生徒は、日本で生まれるか17歳までに来日し、在留資格が「家族滞在」であることが多い。「家族滞在」では、資格外活動許可を取れば週28時間までのアルバイトは認められているものの、フルタイムでの就職はできない。高校卒業と就職内定が決まったら、日本の小中学校を卒業していれば「定住者」に、外国の学校を卒業し、日本の高校に入学した場合は「特定活動」に在留資格を変更する必要がある。特に「特定活動」だと、日本に住んでいる親の身元保証や、来日して高校に途中から入学したケースでは、日本語能力試験のN2レベルなどに合格する必要があるなど、さらに細かな条件が付く。

建山入国審査官は「外国人生徒が高校を中退してしまうと、この在留資格の変更ができないので、何としても高校は卒業してほしい。高校生本人が理解していても、言葉や文化の壁がある親に、日本で就労するには高卒が必須条件であることを分かってもらえないこともある」と説明。「高校から要請があれば、できる限り説明に行きたい」と、学校との連携を呼び掛ける。

外国人生徒と一緒に説明を聞いていた同校の五十嵐裕明教諭は「こうした条件を知らずに、就労できないことを知らされてショックを受ける生徒もいる。親に言われて日本に来て、自分の将来に関わる就労について教わる機会が十分にないのは問題だと感じている。アルバイトではすごくまじめに働く生徒たちばかりで、就労できれば企業や社会にとって欠かせない存在になるはずだ。彼らの就労に向けた手助けをしたい」と、FRESCの説明会を企画した思いを語った。

関連記事