校長にファシリテーション能力求める 中教審特別部会

 教員制度の抜本的な改革に取り組む中教審は8月4日、特別部会と教員養成部会による合同会議を開き、校長をはじめとする学校管理職の在り方、教師に求められる資質能力の再整理、現職教員に対する研修の在り方について、集中討議を行った。席上、文科省は、校長に求められる能力について、学校教育活動に関わるデータや情報を整理して教職員や学校運営協議会で共有するアセスメント能力と、教職員の心理的安全性の確保や、家庭や地域などと協議して学校運営を改善していくファシリテーション能力に整理し、校長を対象とした学び合いや研修の充実など環境整備を進める方向性を打ち出した。教員の働き方改革や教員免許更新制の見直しにつながる研修の充実に向け、校長を中心とする学校管理職の改革を通じて学校現場を刷新していく方向性が固まってきた。

学校管理職の在り方を集中討議した合同会議

 文科省は、これまでの審議を受け、新たな時代に向けて教職員集団が持続的に成長するためには、働き方改革や心理的安全性を確保した職場環境作りを通じて、教員が「学ぶ時間」や「学ぶマインド」を確保することを前提に、「教師が『経験を振り返ることを基礎とした学び』と『他者との対話から得られる学び』が重要な役割を果たす」と整理。それを実現するためには「学校自体を、教師の学びのコミュニティと捉えて、自律的な研修組織として機能させていくことが重要であり、その推進役となる学校管理職やリーダーの果たす役割が大きい」と、学校管理職の重要性を強調した。

 これらを踏まえ、校長を中心とする学校管理職に求められる基本的な役割について、(1)学校の置かれた状況や課題、国や自治体の教育施策を踏まえた学校経営方針の提示(2)業務改善や人材育成、カリキュラムマネジメント、危機管理体制の構築などの組織作り(3)地域や家庭など学校外とのコミュニケーション--の3項目に整理した。

 その上で、校長に求められるマネジメント能力を、アセスメント能力とファシリテーション能力の2つに分類。アセスメント能力は「目指すべき学校運営の方向性を示すため、学校の状況や課題を適切に把握する能力」、ファシリテーション能力は「学校内外の関係者の相互作用により学校の教育力を最大化していく能力」と定義付けた。

 こうしたマネジメント能力を発揮するためには、校長を支援する環境整備が必要として、これまでの審議から▽校長自身の学びの支援▽校長同士の学び合い▽新任校長に対する、域内の先輩校長からの日常的な支援やフィードバック▽経験豊富な退職校長を活用した研修や、組織開発を専門とする外部有識者との継続的な研修--を例示した。

 学校管理職の資質能力については、教育公務員特例法に基づく教員育成指標の対象となっていることから、教員育成指標の指針である文部科学大臣指針に、新たな時代における校長に求められる役割や資質能力を追加する考えを示した。都道府県などの任免権者による校長の選考基準と教員育成指標との整合性についても大臣指針に記載する。

 教員に求められる資質能力の再整理については、▽特別部会で教員の資質能力の大枠を議論し、求められる資質能力の具体的内容を明らかにする▽新たな教職課程の科目・内容については、別途設ける小委員会で専門的な検討を行う▽教職生涯にわたって身に付けていくべきキャリアステージごとの水準(指標)は、各教育委員会が明らかにする--との検討の進め方を示した。
 
 現職教員に対する研修の在り方については、時代の変化に応じて教師が身に付けるべき資質能力の視点を、指針で明確に規定する考えを提示。指針に盛り込むべき内容として▽法定研修以外の研修機会のさらなる充実▽研修内容が最新の学校現場の教育課題に即した内容に適時見直される仕組みを整える▽対面・集合型の研修だけでなく、オンデマンドまたは同時双方向型のオンライン研修を組み合わせるなど、効果的・効率的な実施方法を採る▽校内研修や授業研究などを教師の学びとして位置付けて活用する▽「協働的な職場づくり」の構築や主体的・自律的な研修に向けた全校的な推進体制を整える--を挙げた。また、「期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合」には、職務命令に基づいた研修の受講や懲戒処分の対象となり得ることについて、指針やガイドラインで明示する必要性も指摘した。

 こうした文科省が示した整理について、委員からはさまざまな意見が出された。

 中原淳・立教大教授は、文科省が提示した学校管理職の役割について、「このままでは、すぐ絵に描いた餅になると思う。実質的に機能させるためには、評価と連動させるべきではないか。もう一つは、校長の役割を考えるときには、その前のポストである教頭のときに果たすべき役割とセットになる。教頭のときに何を達成しなければならないのか、校長になったら何をするのか、整合的にしていく必要があると思う。評価と連動しない役割提示と、キャリアを考えない役割提示は、必ず忘れ去られてしまう」と述べ、組織マネジメントとして実効性がある仕組みにしていくことが重要だという見方を示した。

 永田恭介・筑波大学長(国立大学協会長)は「教職員の個性、固有の能力の発揮といった文言が見当たらない。こういう資質能力があるから、いい先生になるというわけでもない。管理職にならずに、ずっと子どもたちを教え続ける先生がいてもいい。それぞれの先生が勇気を持てるような、努力したくなるところを盛り込まないといけないのではないか」と指摘した。

 松田悠介・松田グローバル人財研究所社長は、教員に求められる資質能力について、「要件が複雑になると、学校現場で実行されなくなる。学校ごとに教員の育成に差が出ることは避けたいので、メッセージをシンプルにして、学校での実現性を高めることを目指す観点が必要だ」と述べた。

 岩本悠・地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事は、学校管理職に求められる能力について、「教員の働き方が問題になっている中で、学校管理職は限られた資源をどう使うか、いかに教員の仕事を減らすかが大事になっており、この視点は強調する必要がある。そうしないと、またビルド&ビルドになってしまう。それができる管理職は40代にもいるし、60歳を過ぎてもできる人がいる。そういう柔軟なキャリアパスを考えるべきだと思う」と指摘した。

 意見交換を踏まえ、特別部会長を務める渡邉光一郎・第一生命ホールディングス会長(経団連副会長)は、焦点となった学校管理職の在り方について、「これからの持続的な成長に向けて、急激な変化にどう対応できるのか、という視点が特に管理職層には求められる。その主な要素として、新しい変化に向かって学び合うこと、外部人材を含めて多様な人材を生かしながら学校組織の総合的なマネジメントを高めること、そしてアセスメントやファシリテーションに能力を発揮すること、そうした管理職像が新しい議論として出てきたと思う」と総括した。

学校管理職の在り方について、文科省が中教審で示したポイント

○学校管理職に求められる基本的な役割

1.学校経営方針の提示

 学校の置かれた状況を分析することで、学校の教育課題を明らかにするとともに、国や県、市町村の教育施策も踏まえ、学校運営の基本方針を定める。

2.組織づくり

  • 業務改善
  • 多様な人材を含めた組織体制の整備
  • 人材育成
  • カリキュラムマネジメント
  • 危機管理体制の構

3.学校外とのコミュニケーション

  • 経営方針等の地域や家庭への情報発信
  • 地域や家庭の学校運営への参画の促進
  • 関係機関との連携

○学校管理職に求められる能力

【アセスメント能力】

  • 学校経営方針の策定に向けて、学校教育活動に関わるさまざまなデータや学校が置かれている内外環境に関する情報(自らの学校の強み・弱み、昨今の学校教育を取り巻く課題など)について、収集・整理・分析して教職員間や学校運営協議会で共有
  • 適切な状況・課題把握を踏まえ、新たに取り入れるべき知識や技能に関する教職員間での認識の共有

【ファシリテーション能力】

  • 多様な背景、経験、専門性等を有する教職員が円滑にコミュニケーションを取れる心理的安全性の確保
  • 学校運営協議会などの学校・家庭・地域等の関係者間の協議における学校運営改善に向けた相互作用の促進

※中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第3回)・教員免許更新制小委員会(第4回)合同会議資料『学校管理職を含む新しい時代の教職員集団の在り方の基本的考え方』より抜粋

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