「保健所と連携できていない」 有識者会議で外国人学校から指摘

 外国人学校などの保健衛生環境の在り方を検討している文科省の有識者会議が8月5日開かれ、適切な情報発信や外国人学校への支援の方向性などをまとめた中間取りまとめ案が示された。これを踏まえた議論の中で、都内のインターナショナルスクールからの出席者が「保健所にコロナ対応について質問しても『独自に決めてください』などと言われる。地域の保健所と連携できていないのが現状だ」などと問題提起し、今後、学校保健と地域保健との連携の方策などを巡ってさらに議論を進めることになった。

 この会議は、新型コロナウイルスの感染が広がる中、外国人学校などに通う子供たちの安全の確保に向けて6月に設置され、全国の外国人学校を対象にした実態調査などを基に3回にわたって議論がなされた。

オンラインで開かれた有識者会議の佐藤座長

 同日示された中間取りまとめ案では、外国人学校やその子供たちの把握が困難であることや、支援体制に課題があるとした上で、今後の方向性について、▽保健衛生環境の実態やニーズなどを把握するためのさらなる現地調査の実施▽外国人学校向けのホームページなどの運営や情報の翻訳▽地方自治体との関係構築など、きめ細やかで効果的な支援――などを打ち出した。

 この中間取りまとめ案をもとに、出席者が意見や要望を述べた。都内のインターナショナルスクールでスクールナースを務める亀井めぐみさんは、コロナ禍の対応について保健所に尋ねても「日本の学校保健下にはないので独自に決めてください」などと言われたことを明かし、「国際化が進んだといっても、地域の保健所とは全く連携ができていないのが現状で、文科省からのメルマガが唯一の情報だ。全国のインターナショナルスクールのナースに呼び掛けてコミュニティーを作っており、今後は保健所などに働き掛けていきたいと思っている」などと強調した。

 安田圭一郎委員(岐阜県私学振興・青少年課長)は「文科省としては学校保健の視点からのアプローチを考えると思うが、行政の立場から言うと、厚労省に関連する地域保健からのアプロ―チも重要。特に外国人が学ぶ学校については、認可外も含めるとインクルーシブなアプローチやアウトリーチ的な展開が必要になってくると思う」と指摘した。

 北垣邦彦委員(東京薬科大学薬学部教授)は中間取りまとめ案の中で、「法律上の規定で、外国人学校に一律に学校保健安全法を適用することは難しい」と記されている部分に触れて、「難しいと書くとそこで終わってしまう。どの子供も学校保健安全法で守ってほしいというのが私の考えであり、理想として目指すという方向性は示してほしい」と要望した。

 田中宝紀委員(NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者)は「NPOの中には保健医療や食料配布など、さまざまな活動をしている組織がある。また、外国人を多数雇用している企業は従業員の子供についても把握しており、環境整備を進めていく上で、こうした組織の活用にも言及があるといいと思う」と提案した。

 こうした指摘を受けて、佐藤郡衛座長(明治大学国際日本学部特任教授)は「貴重な意見をいただいたので、できるかぎり可能な対策について中間取りまとめに反映させたい。9月以降、最終まとめに向けて議論を深めたい」と締めくくった。文科省は中間取りまとめを踏まえて、外国人学校への必要な支援策について概算要求に盛り込みたいとしている。

「外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議 中間とりまとめ案の概要」

1、背景

○ 外国人学校における保健衛生の確保は、我が国に在留するすべての子供の健康を確保し、国民の安全を守るために重要。
○ そのため地方自治体、学校運営者、支援者、保健衛生の専門家等により、新型コロナウイルス感染症対策を含めた、外国人学校の保健衛生に係る取組と今後の改善策について検討。

2.現状

○ 外国人学校における新型コロナウイルス感染症対策の取組
・各種学校認可を受けた外国人学校に対し、新型コロナウイルス感染症対策について通知の発出、保健衛生用品の購入支援
・メールマガジンの配信、「学校衛生管理マニュアル」の多言語翻訳版を作成
・ワクチンの職域接種の申請開始の周知、抗原簡易キットの配布

○ 外国人学校の保健衛生環境の実態調査(令和3年4月~5月)
・対象学校数は161施設、回答学校数は80施設(回答率50%)
・保健室を設置している割合は約7割、児童生徒の健康診断の実施割合は約8割、民間の傷害保健への加入率は約9割、学校医を配置している割合約4割、養護教諭を配置している割合は約3割。
・新型コロナウイルス感染症対策に係る支援は、国よりも地方自治体からの支援がより活用されている。

3.課題

(1)外国人学校や外国人学校に通う子供たちの把握に関する課題
・外国人学校の体制や運営、外国人学校に通っている子供等の情報の把握が困難。
・外国人学校の把握においては、学校、行政、支援団体等との連携や、外国人コミュニティを活用した情報発信の実施が必要。

(2)外国人学校が対策を講じる際に生じる課題
○ 外国人学校の状況を踏まえた保健衛生環境基準等の考え方
・衛生管理マニュアルの活用促進、外国人学校の特性や体制を踏まえた基準などのあり方も含め検討。
○ 適切な情報の入手
・認可外施設にも十分な情報が届くよう、効果的な情報提供の方法の検討が必要。
○ 個別の観点
・心のケアや誹謗中傷への適切な対応が必要。

(3)外国人学校が対策を講じる際の支援体制に関する課題
○ 地方自治体と外国人学校との関係
・地方自治体の関係部局が連携して外国人学校を支援することが必要。
○ 外国人学校に対する広域的支援の観点
・地方自治体をまたいで通学する生徒への支援のためには、広域的な観点が必要。

4.今後の方向性

○ 直ちに対応すべき項目
① 更なる実態の把握に向けた調査
・保健衛生環境の実態やニーズ等についての更なる実態を把握するための現地調査等の実施
② 適切な情報発信
・外国人学校向けのホームページ・SNSアカウントの運営、資料の具体的な情報の翻訳
③ きめ細やかで効果的な支援
・地方自治体と外国人学校との間での関係の構築、必要な支援を行うための体制整備
・情報発信機能と相談機能を併せ持つ全国的な窓口を設置し、保健衛生環境の改善のために必要なノウハウを蓄積

○ 今後検討すべき項目
・外国人学校の設置形態や施設の規模、外国と日本の文化の違い等を踏まえた外国人学校の保健衛生環境基準のあり方等の検討

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