キャスターになって戦争体験の継承を考える 広島で平和学習

 ニュースキャスターになって、戦争体験の継承について考えよう――。ゲーム形式で平和を考えるワークショップ「Peace Games」が8月5日、広島県内の高校生4人と専門学校生・大学生4人が参加し、同県のブックカフェ「ハチドリ舎」で行われた。

 「Peace Games」は電通の社員有志が中心となり開発したプロジェクトで、企業の新商品開発などで使われてきたアイデア発想の支援プログラムを平和学習に応用。平和構築に必要なコミュニケーション力や課題解決力を、ゲーム感覚で楽しみながら身に付けられる。広島や長崎、沖縄への修学旅行生をはじめ、総合的な探究の時間でも導入されている。

戦争体験者の声を後世に伝えるため、語り部を目指す活動をしている榎本さん

 戦後76年がたち、戦争体験者が高齢化する中で、歴史を自分ごととして捉えるための新たなアプローチが平和学習には求められている。この日は、プログラム開発チームのメンバーである電通の高橋窓太郎さんと、フリーの報道キャスターの榎本麗美さんがリモートでファシリテーターを務め、「今日からキャスター」というプログラムが実施された。

 これは参加者がニュースキャスターとなり、その体験を通して戦争体験の継承について考えていくというもの。冒頭、榎本さんは「戦争体験者がいなくなる中で、皆さんのような戦争の非当事者がいかにして語り部になるかが、これから重要になってくる。話を聞くこと、そしてそれを伝えることを、このプログラムを通して体験してほしい」と呼び掛けた。

 まず、参加者はニュースキャスターになったという設定で、隣の人と2人1組になり、「隣の人が体験したちょっとした事件をニュースにしよう」「隣の人のやってきたすごいことに賞を与えニュースにしよう」というテーマで、インタビューし合った。初対面でペアになった組も多かったが、用意されたネタ帳に沿って、インタビューは大いに盛り上がった。

キャスターになって、ニュース原稿を読む高校生

 その後、取材した内容をニュース原稿フレームに落とし込みながら原稿にし、キャスターになりきって発表。「キャスターとして伝えるのは初めてなので緊張した」「インタビューするのはもちろん、それを原稿にして、人に伝わるようにするのがもっと難しかった」などと感想を語り合った。

 高校までは埼玉県で暮らし、大学から広島県に出てきたという教育学部の学生は、広島の大学に入学してからは、原爆に関してみんなで話し合う機会や、ボランティア団体もたくさんあるなど、平和教育に関する環境が大きく変わったという。

ニュース原稿のフレームに沿って、取材した内容を原稿にしていった

 「埼玉にいた頃は、平和教育はインプットばかりで、自分からアウトプットすることはなかった」と振り返り、「今日の体験を通して、平和教育は自分が話を聞くだけでなく、それをアウトプットするのが大切だと感じた。人に伝えようとする中で、改めて考えることができる」と話した。

 榎本さんは最後に参加者に、「家に帰ったら、身近な戦争体験者に戦争のことを聞いてみてほしい。そうやって記憶をつないでいくことで、未来は変わる。聞いたことをSNSでつぶやくのでも、身近な人に話すだけでもいい」と訴えた。

 プログラムを終えた高校生は「明日は広島原爆の日。これまで実は祖父にも戦争の話を聞きづらいと思っていたが、これをきっかけに、戦争の話を聞いてみようと思う」と語った。

 榎本さんは「戦争体験について、体験者としても話すきっかけがないし、非当事者の若者も聞くきっかけがない。こうしたプログラムが、自分から一歩踏み出すきっかけになれば」と手応えを感じていた。

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