学校現場の声を届けるプラットフォーム 武田代表に聞く

 学校現場の声を可視化し、教育行政や社会に届けるオンラインプラットフォームを立ち上げる準備が進んでいる。ユーザーは学校の教職員に特化し、5年後には10万人の登録者を目指すという。この「School Voice Project」の呼び掛け人である、教育ファシリテーターの武田緑Demo代表に聞いた。

教育ファシリテーターが感じ取った学校現場の危機

 「学校の先生と関わっていて、現場の疲弊を強く感じていた。単に忙しいだけでなく、職場を自分たちの手で変えていける感覚すらない。今できることを、すぐにでもやらなければいけないと思った」

プロジェクト呼び掛け人の武田さん(本人提供)

 教育ファシリテーターとして、さまざまな研修やイベントの企画運営、学校現場のサポートをしてきた武田さんは、今の学校現場に対する危機感をそのように表現する。多くの学校で共通するのが「言いたいことが言えない。言ったところで変わらない」という、職場に漂う閉塞感だ。一人では声を上げにくくても、たくさんの声を集約して見える化することで、学校現場の思いを文科省や教育委員会に届け、行政も何らかのリアクションをする「応答的コミュニケーション」の必要性を考えるようになったという。

 そこで、クラウドファンディングで資金を集め、学校の教職員のためのオンラインプラットフォームをつくることを決意。「School Voice Project」と名付けられたこの構想に対し、約100人の教職員がアンバサダーとして協力に名乗りを上げた。かつて、大阪市が全国学力調査の結果を教員のボーナスに反映する方針を示した際、それを止めようと反対の署名活動を展開したこともある武田さんにとっても、やってみたことのない大きなチャレンジだ。

ウェブアンケートサービス

 現在スタートアップのための資金として、1000万円を目標にクラウドファンディングを実施している同プロジェクトが最初に計画しているのは、ウェブアンケートサービス「フキダシ」の構築だ。

 ユーザーとして登録することでアンケートに参加できるのは、小、中、高校、特別支援学校などの教職員。さらに学校事務職員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど、学校で働く職員や非常勤の教員なども対象に含めている。登録に際しては、アンケートとしての信頼性を担保するため、校種や勤務年数などの一定の個人情報を入力する必要があるが、実名や勤務校などは必須ではなく、個人が特定されることはない。

 アンケートでは、賛否が分かれる意見に関するものや、教員が直面している困りごとに対し、他の教員や学校がどう工夫しているかを自由回答で募集するものなど、多岐にわたる。例えば、「子どもにタブレットを持ち帰らせるときに、工夫していることは?」といった身近なテーマから、「産休育休をとった教職員の実態調査」など研究者と連携した本格的な調査研究まで、さまざまなものが想定されている。

 「教員ではなく、事務職員だからこそ見えてくる学校の課題を浮き彫りにするなど、属性を絞ったアンケートもできるのではないか」と武田さん。こうしたアンケートを少なくとも月に3回は実施し、学校現場が参考になる情報を共有したり、メディアを通じて社会に問題発信をしたりしていく考えだ。

 また、「フキダシ」には、「みんなに聞きたいこと」というアンケートのアイデアを募集するコーナーも設け、他のユーザーの反応なども反映できるようにする予定だ。

学校教育を支えるインフラを一緒につくりたい

 「フキダシ」は「5年後には登録者数10万人」を目標に掲げる。武田さんは「ウェブアンケートはどうしても偏りが出てしまうが、10万人集まれば意味のあるデータになり、本当に学校現場を変えることに寄与できる。現場の実感や思いを拾えるものにしていきたい」と意気込む。集めたデータから議会や教育行政に政策を提言し、受け止めてもらうことで、声が届いていることを回答者に実感してもらえるようにする戦略も練っているという。

 「ウェブアンケートは、自分たちで学校を変えていける社会状況をつくるための第一歩だ。現場のリアルな実感や日々の経験は、学校をよくしていくための大事なリソースになる。いずれ、学校教育にとって大切なインフラに育ってくれたら」と武田さんは夢を描く。「学校現場が自信を持ってもらえるような理想をつくるために、みんなで一緒につくっていきたい」と、一人でも多くの教職員の参加を呼び掛けた。

 同プロジェクトではクラウドファンディングと並行して、ユーザーの事前登録もホームページ上で受け付けている。

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