「学校無理でもここあるよ」 地域の居場所が果たす役割

 学校に行くことを“しんどい”と感じる子どもが増える夏休み終盤。全国の子ども食堂やフリースクールなどの団体が連携し、地域の居場所でこうした子どもたちを受け入れる「#学校ムリでもここあるよキャンペーン」が8月19日~9月6日に行われる。コロナ禍による子どもたちのストレスや自殺の増加が社会問題となる中で、地域の居場所はどのような役割を果たせるのか。キャンペーンの主催団体の一つである「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の湯浅誠理事長に聞いた。

地域の居場所は不要不急ではない
3年目を迎えた「#学校ムリでもここあるよキャンペーン」(キャンペーン実行委員会提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、子ども食堂など地域の居場所の多くは従来の活動ができなくなった。「まだまだ社会的に、地域の居場所は『不要不急』のものとして見られている。しかし、コロナ禍で子どもの自殺が増えるなど、居場所の問題は子どもの生き死にと関わっている」と湯浅理事長。「コロナ禍で学校が果たした役割の大きさが明らかになった。しかし、一方で学校に行くことがつらいと感じている子どももいる。そんな子どもたちに多様な居場所は必要だ。コロナ禍だからこそ、地域の居場所はあってもなくてもいいものではなく、エッセンシャルな場所であると、社会の認識を変えていきたい」と強調する。

 今年で3年目を迎えたキャンペーンでは、フリースクールや子ども食堂など、全国100カ所以上の地域の居場所が無償で開放され、2学期が始まり学校に行きづらいと感じている子どもの相談窓口となる。湯浅理事長はその狙いを「学校に行くのが無理なら、我慢しなくていい。そういう社会的な雰囲気をつくるためのシンボリックな活動としていきたい」と説明する。

子どもの安心安全をどう確保するか

 一方で、フリースクールをはじめとする民間が運営している地域の居場所で、子どもたちの安全をどう確保するかが改めて問われることとなった。日本におけるフリースクールの先駆けとして知られる「東京シューレ」で、約20年前に当時の職員による子どもへの性暴力事件が明らかとなったのだ。この事件について湯浅理事長は「大人を含め誰でも利用できる子ども食堂も、決して他人事ではないと感じた。しかしだからといって、事前に利用者の登録をしたり、入り口で身分証明書をチェックしたりするようなことはしたくない。それではせっかくの子ども食堂の良さが失われてしまう」と話す。

 そこで、今年のキャンペーンでは参加団体に対し、子どもにとって安心安全な居場所づくりをグループワークで学ぶ「セーフガーディング研修講座」への参加と、スタッフの誓約書を居場所の中に掲示することを義務付けた。「セーフガーディングはまだ、子ども食堂全体の共通基盤にまではなっていない。まずはセーフガーディングや子どもの権利を大切にしたいというところから広めていければ」と湯浅理事長。今後、全国の子ども食堂にも働き掛けながら、議論のきっかけをつくっていくという。

「初めてのお店をのぞいてみるくらいの気持ちで」
「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の湯浅理事長(むすびえ提供)

 子ども食堂が放課後や休日などに子どもが過ごす居場所として、学校や地域とどう連携していくかも課題だ。

 学校との連携の難しさについて湯浅理事長は「多忙な学校現場にとって、地域のアクターを巻き込むことは短期的に見れば負担が増えると思われたり、『この団体は大丈夫なのか』と不安を感じたりしてしまう。地域の居場所を信用してもらい、つながってもらうためにも、間に入るコーディネーターのような役割を担う人が必要だ」と指摘する。

 学校の教員や保護者に向けて、湯浅理事長は「学校に行くことをゴールとして前面に出すと、そのためのステップを上れない子どもがたくさんいる。でも『学校に行かなくてもいい』ということを前面に出せば、ステップを上れる子も出てくるし、楽になれる子どももいる。近くの子ども食堂がどんな場所かは行ってみないと分からない。初めてのお店をのぞいてみるくらいの気持ちで、子どもたちと一緒に足を運んでみてほしい」と話す。

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 「#学校ムリでもここあるよキャンペーン」では、8月21日に主催団体の代表者らが出演するキックオフイベントをオンラインで開催する。

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