【未来の先生】ニュー・ノーマルの教育で対談 荒瀬氏と平川氏

 「未来の先生フォーラム」2日目の8月22日、「ニュー・ノーマル(新しい常態)の学校教育」をテーマに、中教審副会長の荒瀬克己氏(独立行政法人教職員支援機構理事長)と、広島県教育長の平川理恵氏による特別対談が行われた。探究力を育てる教育などに先駆的に取り組んだ立場から、両氏とも生徒と共に学び合う姿勢や、教員同士でコミュニケーションを取りながら探究力などを身に付ける実践を続ける重要性などを強調。生活様式が大きく変わる中で求められる教員像などについて意見を交わした。

オンラインで行われた対談に参加した荒瀬氏(右上)と平川氏(下)。左上はモデレーターの本間氏

 はじめに各15分ずつ、これまでの実践活動などについてプレゼンが行われた。平川氏はニュー・ノーマルの学校教育のキーワードは「探究」ではないかと指摘し、教育長として広島県で進めている「学びの変革」の取り組みを紹介。大崎上島に開校した外国人も学べる県立広島叡智学園で展開する探究型の学習活動や、異年齢の集団による学びの場、イエナプランを公立小学校に導入しようとする取り組みに触れて、「悩みながら、現場と伴走しながら変革に取り組んでいる」と強調した。

 荒瀬氏は中教審答申などで打ち出した「主体的・対話的で深い学び」について、子供たちが見通しをもって粘り強く取り組むことや、読書なども含めて自己の考えを広げ、解決策を探りながら創造していく力を付けていくことを目指していると述べ、「一人一人の子供を主語にする学校教育の目指すべき姿を描いたもの」と解説した。その上で、こうした学び方を身に付けることが「探究」になるとして、こうした学び方が身に付く学校を目指すには、「教師も学び合う学校を作ることが大事だ」と強調。コミュニケーションを取りながら、課題などを共有してカリキュラムマネジメントに取り組むことが必要だと述べた。

 対談では、モデレーターを務める本間正人氏(京都芸術大教授)が、コロナ禍がひと段落した後のニュー・ノーマルの学校教育の方向性について尋ねたのに対し、平川氏は「とにかく学びは楽しいというのを伝えることだが、学校の文脈にどう入れ込むか苦労している」と話し、年間約150校を訪れて学校現場の教員らに伴走しながら取り組んでいることを紹介。「現場の先生も理念は分かるがどう実践するかについて悩んでいる。教育長になるにあたって、知事からは現場で何でも言い合える組織風土に変えてほしいと、一番のオーダーとして言われており、フラットに何でも言い合える環境をつくって実践していきたい」と述べた。さらに変革に取り組む上で、「県教委のスタッフらには、自分の子供だったらどうしてほしいかを考えて仕事をしようと話している。いろいろな法律はあるが、できないことは1つもないというチャレンジ精神で進めている」と述べた。

 一方、荒瀬氏は、長年にわたって京都市立堀川高校で取り組んできた探究教育について説明。「生徒が探究する学習を通し、自らテーマを決めて研究に取り組むようになると、教員が生徒に質問をする環境が生まれる。それが繰り返されることで、教員と生徒が学ぶ者として対等になるという関係ができた」と成果を紹介した。その上で、「そのためにはまさに実践することが大事だ。私たちが目指す『自立した学習者』というのは、自分だけでやるのではなく、人の助けや必要なときに他者に尋ねることも求められる。そうした環境が教員と生徒、教員同士で生まれることが大事だと思う」と強調した。

 両氏の対談を受けて本間氏は「これまでに参加した対談でも、自立とは多くの人に依存でき、いろいろな人に頼ることのできる関係性を作ることだという印象に残る意見があった。教員が新しいことに取り組むときに失敗を恐れる気持ちがあるが、私は失敗と言わずに『未成功』という言葉を提案している。質の高い未成功を重ねることが成功の道だと思っており、とりあえずやってみる、人の力を借りてみるということの大切さが、改めて認識できたと思う」と締めくくった。

関連記事