【免許更新制】再来年度に廃止 中教審小委「発展的解消」了承

 中教審の教員免許更新制小委員会は8月23日、教員免許更新制について「『新たな教師の学びの姿』を実現する上で、阻害要因となると考えざるを得ない」として、「発展的に解消することを文科省において検討することが適当である」とする審議まとめ案を了承した。これを受け、萩生田光一文科相は同日、来年の通常国会で必要な法改正を行い、再来年から教員免許更新制を発展的に解消し、各教育委員会が研修履歴を管理する新たな教員研修制度に移行させる考えを表明した。これにより、2009年度に始まった教員免許更新制は廃止される。

教員免許更新制の「発展的解消」を了承した中教審小委

 審議まとめ案は、これまでの委員の意見などから、文科省が作成した。まず、社会や教育を巡る状況の変化にスピード感が増しており、「高度な専門職であるべき教師の学びの在り方についても、パラダイムの転換が起こっている」との問題意識を提示。これからの教員は「座学等を中心とする『知識伝達型』の学習コンテンツを受け身の姿勢で学ぶだけではなく、自らの日々の経験や他者から学ぶといった『現場の経験』を重視したスタイルの学びがより重要になってきていることを踏まえ、『知識伝達型』にとどまらない協議・演習形式の学びや、地域や学校現場の課題の解決を通した学びを自律的に求めて深めていくことが必要となってきている」と指摘した。

 こうした新たな教師の学びの鍵となる概念について、「高度な専門職である教師にふさわしい主体的な姿勢の尊重、教師の学びが画一的・規格的なものに陥らないような学びの内容の多様性の重視、自らの経験や他者から学ぶといった『現場の経験』も含む学びのスタイルの多様性の重視」と説明。知識伝達型の座学から、学校現場での経験から一人一人の教員が自分に必要な学びへとシフトしていく必要性を強調した。

 一人一人の教員が心理的安全性を確保できる環境の構築も重視し、そのために学校管理職に積極的な職場づくりを求めた。学校管理職の役割については「個々の教師が自らの職務上の地位について心配することなく、新たな学びに参加しやすくなる資源を獲得できるような環境整備、業務の調整等を、教師の成長に責任を有する任命権者等あるいは学校管理職が積極的に講じるとともに、『協働的な職場づくり』を構築することが求められる。こうしたことが可能となるよう、学校管理職の在り方も見直し、マネジメント能力の向上も進めていくことが必要である」と書き込んだ。

 こうした教員が学ぶ環境を実現する方策として、教師と学校管理職などとの「対話」やそれを通じた研修の奨励が確実に行われるように、それを支える研修の受講履歴の管理や、履歴を活用した受講の奨励を任免権者や学校管理職などに義務付ける法制面での整備を文科省に求めた。

 新たな教師の学びを支える仕組みについては、①明確な到達目標が設定され、到達目標に沿った内容を備えている質の高いものとなるように、学習コンテンツの質保証を行う仕組み②学習コンテンツ全体を見渡して、ワンストップ的に情報を集約しつつ、適切に整理・提供するプラットフォームのような仕組み③学びの成果を可視化するため、個別のテーマを体系的に学んだことを、全国的な観点から質が保証されたものとして証明する仕組み――の3つを構築する必要があると説明している。教員が研修に利用するIDについても、児童生徒の教育データの利活用にあわせて整備する必要を記した。

 その上で、審議まとめ案では、こうした「新たな教師の学びの姿」を構築することができれば、「教員免許更新制が制度的に担保してきたものを総じて代替することができることが見込まれる」とする一方、教員免許更新制を存続させると「自らの経験や他者から学ぶといった『現場の経験』も含む学びのスタイルの多様性の実現を阻むことになりかねない」と指摘。

 教員免許更新制は新たな教員の学びの実現にとって「阻害要因となると考えざるを得ない」とした上で、必要な教員数の確保、教員自身のウェルビーイングの実現などを考えても「教員免許更新制を発展的に解消することを文科省において検討することが適当であると考える」と結論付けた。

 委員の意見交換では、審議まとめ案が示した教員免許更新制を発展的に解消する方向性について異論はなく、了承された。

 戸ヶ﨑勤・埼玉県戸田市教育長は「初任者研修を通じて1年学んでいる教員と、学んでいない臨時任用教員のスキルの違いを実感している。臨時任用教員が放置されてしまっている」と非正規教員である臨時任用教員に対する研修に配慮が必要と指摘。秋田喜代美・学習院大教授は「課題を自ら探究していく学びの姿が書き込まれていない。同僚とともに経験から現場で学ぶことの大切さがもっと見えてくることが重要」と、学校現場での教員の学びを具体的に書き込み、研修履歴に反映させていく必要性を挙げた。

 また、教員研修のコンテンツの質保障などで役割が期待されている教職員支援機構の荒瀬克己理事長は「研修の定義を考えていくことが必要。定義があれば、学校でやっていることが研修としてふさわしいことが分かる。一方、学校で研修すると、教員は忙しすぎて研修に専念できない状況が現実にある。そういう意味で、現場教員に対して、安心して学ぶことがいい仕事につながる、という応援のメッセージをぜひ入れたい。それが教師を目指す学生へのメッセージにもつながる」と述べた。

 これに呼応して、全日本中学校長会(全日中)の宮澤一則会長(東京都板橋区立中台中学校校長)は「教員は勉強したい気持ちが強いのに、研修に行くときは忙しい同僚に仕事を代わってもらい、「迷惑を掛けて申し訳ない」と後ろめたさを感じている。教員が安心して学べる環境を確保してほしい。もともと優秀な人材を確保することが重要。人材の発掘、育成、確保を考えてほしい」と訴えた。

教員免許更新制の「発展的解消」について臨時会見で説明する萩生田光一文科相

 審議終了後、臨時の記者会見を行った萩生田文科相は「次の通常国会を念頭に改正等を伴う制度改正を行うためには、9月以降、関係省庁との調整などに着手していく必要がある。中央教育審議会において、教員免許更新制について方向性が示されつつあることを踏まえ、文科省として必要な体制を整備した上で、現職研修の充実や、教員免許更新制の発展的解消に向けた具体的な検討、調整にあらかじめ着手しておくよう事務方に指示した」と述べ、来年の通常国会で教育職員免許法の改正案を提出する考えを表明。

 新しい教員の研修制度をスタートさせ、教員免許更新制を廃止するスケジュールについては「いつから廃止されるかというと、今の教員免許更新制度を新しく不断に研修するものに変えていくことを考えているので、通常国会(での法改正)が来年となると、再来年が最短のスタートの年かなと思っている」と述べた。

 また、研修用のコンテンツ開発など新制度導入に必要な予算については「いまは来年度概算要求の時期。こういう大きな問題が動きあるということも含めて、今日、記者会見している」と述べ、8月末に締め切られる来年度予算概算要求に盛り込む考えを示した。

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