【デルタ株危機】新学期、子供のリスクは? 専門家に聞く

 デルタ株の流行で、子供の感染が後を絶たない。子供から大人への感染や、子供同士の感染、学校内でのクラスターも全国各地で発生している。そうした予断を許さない状況で、新学期への対応を迫られている学校現場。子供の感染症の専門家であり、新潟県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の委員である齋藤昭彦・新潟大学医学部小児科教授に、デルタ株のまん延を踏まえた2学期以降の学校生活について、具体的な感染防止対策のアドバイスを聞いた。


欠席・早退しやすい仕組みづくりを

――子供の感染状況について、どう見ていますか。

 これまでとは別のステージに入ったなと、危機感を持っています。

齋藤昭彦教授(本人提供)

 従来の新型コロナウイルス感染症は、子供への感染が極めて限られていました。子供が感染したとしても、ほとんどが家庭内で、大人から子供へうつったケースでした。

 しかし、感染力の高い変異株「デルタ株」の置き換わりが進み、子供への感染が広がっているのが現状です。これまで見られなかった子供同士の感染や、子供から大人への感染のケースも増えており、学校内や部活動でのクラスターも全国的に発生しています。子供の重症例の報告もあります。

――子供の感染が相次ぐ中で、2学期が始まります。学校生活の感染防止対策として、改めてどんなことが必要でしょうか。

 児童生徒の多くがワクチンを接種していないので、当然、子供が集まる学校は感染が広がる可能性が高まります。一方で、通常の教育活動を継続させることも、子供の心身の健康にとって非常に大切なことです。感染予防と教育活動の継続をいかに両立させるかが、改めて学校現場に求められています。

 改めて児童生徒や保護者、先生方に心掛けていただきたい、具体的な感染防止策は2つ。

 まず、少しでも体調に異変を感じたら登校しないことを徹底してください。登校後異変を感じた場合は、速やかに帰宅するようにしましょう。

 デルタ株はこれまでの標準株に比べ、子供でも症状が出やすいことが分かっています。異変を感じた段階で無理して登校せずに、校内にウイルスを持ち込まないことが大変重要です。児童生徒が欠席や早退を言い出しやすいように、先生方の声掛けや学校のルールを柔軟にしておくことも必要でしょう。

 次に、児童生徒のマスクを今一度見直してください。布製やウレタン製など、飛沫(ひまつ)防止効果の低い材質のマスクを着用している子供をよく見かけます。飛沫防止効果の高い、不織布マスクを着けるようにしてください。一時期と比べマスクの供給も安定しています。ぜひ飛沫防止効果の高い材質で、なおかつ子供のサイズにあったものを入手し、定期的に交換しながら着けるようにしましょう。

 またマスク生活に慣れ、「鼻マスク」や「顎マスク」など、正しく着用できていないケースも見受けられます。改めて大人が、マスクの必要性を説明し、正しく着用する大切さを子供たちに説明してください。

 感染力が非常に高いデルタ株に対して、できることと言えば、基本の感染防止策を徹底すること以外ありません。決定打がないのが現状です。校内に感染者がいることを想定し、お互いに飛沫を浴びない、浴びさせない生活様式を極めることが非常に大切です。

学校で抗原検査「大きなリスク伴う」

――政府は、高校に加え、小中学校にも抗原検査の簡易キット配布し、発熱した児童生徒が保健室などで検査できる環境を整える方針を示しています。医療の専門家としてどう考えますか。

 現場が混乱する策だと、困惑しています。抗原検査は、あくまで発熱など症状のある人を対象に行う検査です。ですから検査前に、陽性になる確率が高いと判断した場合に行うものと言えます。

 高校向けに出された文科省の通知では、検査は教職員の指導の下、生徒本人が行うと書かれていますが、鼻咽頭の検査を児童生徒だけでどこまで正確にできるか疑問です。例えば陽性が出ると困るという理由で、鼻咽頭の奥まで綿棒を入れない可能性も考えられます。

 それらを防止するために、仮に養護教諭などが、児童生徒の検体を鼻咽頭から採取するようなことがあれば、もちろん先生たちが感染する危険性は拭えません。医療現場で検体をとる場合は、ガウンやマスク、フェースシールド、マスクを装着します。綿棒を鼻から入れて鼻腔を拭う必要があるため、被験者がくしゃみや咳をする確率が高く、飛沫を浴びる可能性も大いにあります。

 さらに検体を採取した部屋の環境汚染による他への感染など、心配な要素が多いです。

 インフルエンザに置き換えて考えてみてください。インフルエンザの検査を児童生徒自身で行うことは、まず考えられないでしょう。この方針は大変大きなリスクを伴いますし、現場の負担は計り知れません。登校した児童生徒に症状が出た場合は、速やかに帰宅させることが何より大切なのではないでしょうか。

――部活動や大会、1都3県では児童生徒のパラリンピックの観戦など、学校外での活動に対しても不安の声が高まっています。

 全国的に感染状況が悪化する中で、まずは日々の授業など基本的な学校生活を優先させるべきではないでしょうか。個人的には、今は基本的な学校生活を継続させるために何をしたらいいかについて、全力を注いでいただきたいと思います。

 それが担保された上で、部活動やパラリンピックの見学が議論されるべきだと感じます。

子供のワクチン接種どうなる?

――子供のワクチン接種は進んでいるのでしょうか。

 現時点で12歳以上が、接種可能となっています。ごく一部の小規模な自治体の集団接種などで、余剰のワクチンを小中高生が接種するというケースはあるようです。しかし全国的に見ると、まだほとんど進んでいないのが現状です。

 デルタ株はワクチンを接種することが、何よりも効果の高い唯一の積極的な予防法です。子供の接種を早急に進めることが、今後の課題でしょう。

――子供の感染も心配な一方で、教員自身も感染の恐怖にさらされています。

 先生が学校生活の中で、子供から感染する可能性も十分にあります。繰り返しになりますが、マスクを正しく着用する、子供も含め他人と密接する機会を避けるなど、基本的なことを徹底していただきたいと思います。

 また全国的に、教師のワクチンの優先接種が進んでいます。もしまだ接種していない方がいれば、早急に接種していただきたいです。また2回接種した方でも、油断は禁物です。ブレイクスルー感染の症例も、多く報告されています。人混みや長距離の移動、会食や外食など感染リスクの高い行動は、まだ避けるように心掛けてください。

 校内では、児童生徒の体調に異変があった時に、早めに気付いてあげられるよう体制を作っていただきたいです。それが、児童生徒はもちろん、先生自身の感染を防ぐ何よりの方法です。新学期開始にあたり、私のところにも新潟市教委や学校現場から相談がありました。話を聞けば聞くほど、現場の先生たちが相当大変な思いをしていると、心が痛みます。

 とはいえ、「子供は感染しづらい、感染しても症状が軽い」という以前の通例は通用しないフェーズに入っています。この状況下で、児童生徒と教員の健康を守りつつ、子供たちの教育活動をいかに継続させていけるか。学校や教委、専門家、家庭などが連携して、取り組んでいかなければなりません。

(板井海奈)

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