「相談を求めるなら、しっかり受け止めを」 自殺防止で議論

 児童生徒への指導の考え方などをまとめた「生徒指導提要」の見直しについて検討している、文科省の「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議」の第3回会合が8月25日、オンラインで開かれ、児童生徒の自殺予防について話し合われた。子供の自殺が増加した背景を踏まえつつ、児童生徒が相談しやすい体制が本当にできているかを問い直す議論がなされた。

オンラインで行われた第3回会合

 会合では、生徒指導・学校カウンセリングを専門とする新井肇委員(関西外国語大外国語学部教授)が、児童生徒の自殺の現状と予防について報告。子供の自殺には高い衝動性、大人から見ると些細に思える動機、大人と異なる死生観などの特徴があり、「死んだ人は生き返る」と思っている小中学生も一定数いる可能性があることを紹介した。

 その上で、児童生徒の自殺には孤立、安心感の持てない家庭環境、喪失体験、自殺未遂歴、自傷行為経験、未治療の心の病、完璧主義などの性格傾向、無意識的な自己破壊行動といった、さまざまな危険因子が絡んでいることを紹介。自殺予防の3段階として、①全ての児童生徒に対する未然防止・予防教育②自殺の危険の高まった児童生徒への気付きと関わり③自殺が起きてしまったときの危機対応と心のケア――の必要性を挙げた。

 とりわけ②の気付きと関わりについて新井委員は、児童生徒が信頼できる大人に相談できる体制作りの重要性を指摘し、「相談をしなさいという以上は、受け止める側がしっかりと受け止めなければならない」と述べた。まず心配していることを伝え、「死にたい」と思うほどつらい気持ちを傾聴し、安全を確保するという原則を紹介し、「子供の発する『死にたい』は『生きたい』の裏返し。話をそらしたり叱責(しっせき)・助言したりしてはいけない」と強調した。

 さらにこうした体制作りでは、1人の教職員が抱え込むのではなく、生徒指導の担当者や養護教諭、スクールカウンセラーなどの専門家と連携し、「実効的に機能する組織」を作れるかが重要だと指摘。少しでも気になったことを共有できるよう、組織の心理的安全性を高める必要があると述べた。

 また「子供は担任や養護教諭ではなく、意外な人にSOSを発することがある。その時にキャッチできる力を、みんなが持っていないといけない」と話し、「人の話をじっくり聞くためには、心のゆとりも時間のゆとりも必要。授業を持たず、教育相談にある程度かかりきりになれる人を配置していく必要がある」と、教員の多忙化に警鐘を鳴らした。

 普段からの自殺予防については「年に1回は自殺予防の授業を、専門家と協働で作り上げることが大事。この過程で、リスクの高い子があぶり出されてくることがある。養護教諭とも協働し、事前事後のアンケートとフォローアップ体制を整えてほしい」と話した。

 これに対し、三田村裕委員(全日本中学校長会顧問)は「学校にやるべきことが多くある中で、年に1回、養護教諭やスクールカウンセラーと、協働的に授業を作っていくところから手始めに広げていけばよいのだと、非常にすっきりした。カリキュラム上の位置付けや、『最低でもここは外してはいけない』という部分が具体的に示されれば、自殺予防教育も一気に進むのではないか」と受け止めを語った。

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