【全国学力調査】長期休校、学校は懸命 家庭環境が左右も

 今年度の全国学力・学習状況調査では、学校と児童生徒に対する質問紙調査を通じて、新型コロナウイルスの感染拡大のため、昨年4月から全国の小中学校で続いた長期休校の実態と影響を検証した。それによると、休校期間が長くなった学校ほど再開後の補習や時間割編成の工夫、学習活動の重点化などを行い、学校現場が子供たちの学びを保障するために懸命に取り組んだ姿が浮かび上がってきた。休校期間中の児童生徒の学習状況をみると、学校からの課題で分からないことがあったときには、小学生は家族に聞き、中学生は自分で調べることが多かったことが明らかになり、休校期間中の学びが家庭環境や本人の学習姿勢に左右されていたことも分かった。

 学校への質問紙調査によると、昨年4月以降の長期休校の期間は、「50日以上、60日未満」(小学校23.6%、中学校22.6%)が最も多く、「40日以上、50日未満」(小学校21.2%、中学校21.8%)、「60日以上、70日未満」(小学校18.6%、中学校18.6%)と続いた休校期間が70日以上となった学校は、小学校14.0%、中学校13.3%だった。

2020年4月以降の新型コロナウイルスの感染拡大による地域一斉休校の期間

 長期休校の期間中に学校が家庭学習として課した内容を聞いたところ、「教科書に基づく学習内容の指示」(小学校83.3%、中学校83.4%)や「学校作成のプリントなどの配布」(小学校88.4%、中学校87.6%)が8割を超えた。「教育委員会作成の問題集などの教材を活用した学習」は小学校26.3%、中学校26.0%。「学校作成の学習動画などを活用した学習」は小学校14.1%、中学校15.5%だった。

 これに対し、「同時双方向型オンライン指導を通じた学習」を全校で実施したのは、小学校2.6%、中学校5.2%にとどまった。休校期間中にはほとんどの小中学校が教科書やプリントを使って家庭学習を課しており、同時双方向型のオンライン指導はほぼ普及していなかったことが確認された。

 休校期間中に児童生徒の学習状況や生活状況を把握した手段を聞いたところ、「電話やFAXにより行った」(小学校72.4%、中学校71.3%)、「登校日を設定して学校で直接行った」(小学校59.1%、中学校69.2%)、「家庭訪問により行った」(小学校40.4%、中学校44.8%)が上位を占めた。

 ただ、休校期間が長くなるほど、電子メールやSNS、オンライン学習支援プラットフォーム、同時双方向型オンラインシステムを活用した小中学校の割合が増えており、休校期間中に一部の学校でSNSやオンラインの活用に対応していったことが分かる。

 長期休校から再開した後の対応を聞いたところ、「学習内容の定着が不十分である児童生徒を対象とした補習の実施」(小学校46.3%、中学校38.6%)、「時間割編成の工夫」(小学校40.4%、中学校45.2%)、「土曜日の活用」(小学校15.7%、中学校18.1%)、「次年度以降を見越した教育課程編成」(小学校35.4%、中学校33.4%)、「授業における学習活動の重点化」(小学校77.5%、中学校65.1%)との回答があり、学校現場がさまざまな取り組みを通じて、学習状況の把握や学習内容が不十分な児童生徒へのフォローに取り組んでいたことが分かる。

 こうした傾向は休校期間が長くなるほど顕著になり、例えば、休校期間が70日以上となった中学校では、約30%が土曜日を活用していた。こうした調査結果について、文科省では「児童生徒の学びを保障するための懸命な取り組みが各学校現場で行われていたことの現れ」(総合教育政策局調査企画課)と見ている。

 次に、児童生徒への質問紙調査によると、長期休校の期間中に「勉強について不安を感じたか」との質問に「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」と肯定的に回答した割合は小学生で55.0%、中学生で62.5%に上った。「計画的に学習を続けることができたか」との質問では、肯定的に回答した割合は小学生64.7%、中学生37.7%。「規則正しい生活を送っていたか」との質問では、肯定的に回答した割合は小学生63.0%、中学生48.4%だった。

 休校期間中に「学校からの課題で分からないことがあったとき、どのようにしたか」との質問には、「先生に聞いた」(小学生9.3%、中学生7.4%)、「友達に聞いた」(小学生31.9%、中学生43.9%)、「家族に聞いた」(小学生78.7%、中学生44.1%)、「それ以外の人に聞いた」(小学生9.4%、中学生12.3%)、「自分で調べた」(小学生62.4%、中学生61.5%)、「分からないことをそのままにした」(小学生10.1%、中学生14.3%)、「分からないことがなかった」(小学生10.4%、中学生6.3%)、「思い出せない」(小学生4.8%、中学生6.9%)との回答だった。

長期休校期間中、学校からの課題で分からないことがあったとき、どのようにしていましたか(児童生徒質問紙調査)

 小学生は「家族に聞いた」が最も多く、次いで「自分で調べる」が多かった。中学生は「自分で調べる」が多く、次が「家族に聞いた」だった。一方、「分からないことをそのままにした」との答えも小学生で10.1%、中学生で14.3%あった。この結果をみると、休校期間中の児童生徒の学習状況は、家庭環境や本人の学習姿勢に左右されていたことが分かる。学校が長期休校となったことで、分からないことをそのままにしてしまった児童生徒が一定数いたことも明らかになった。

 こうした休校期間中の学びの保障について、多くの学校現場が積極的な取り組みを行った。学校への質問紙調査によると、学校への長期休校からの再開後、「学習の定着が不十分である児童生徒の把握」について、小学校の82.8%、中学校の71.0%が取り組んでおり、先にみたように学習内容の定着が不十分な児童生徒を対象に補習を実施した学校が多い。こうした学校現場の努力もあって、今回の調査では、休校期間の長さと各教科の平均正答率との間には、全体的に相関はみられなかった。

 ただ、児童生徒の学習状況には、家庭環境などの影響なども考えられるため、文科省では今後、保護者に対する質問紙調査などと合わせて詳細な分析を行い、来年3月末に結果を公表する。

 毎年同じ質問を行う経年変化分析調査では、児童生徒に「将来の夢や目標を持っているか」と聞いたところ、「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」と肯定的に回答した割合は小学生80.3%、中学生68.6%で、2019年度の前回調査から小学生が3.5ポイント減、中学生が1.9ポイント減だった。「人が困っているときは、進んで助けているか」との質問では、肯定的に回答した割合は小学生88.7%、中学生88.4%で、同じく小学生が0.8ポイント増、中学生が2.7ポイント増となった。「学校に行くのが楽しいと思うか」との質問では、肯定的に回答した割合は小学生83.4%、中学生81.1%で、同じく小学生が2.4ポイント減、中学生が0.8ポイント減となった。

 「人が困っているときに進んで助けているか」との質問に肯定的に答える児童生徒は、小学生、中学生ともに調査のたびに緩やかに増加している。「将来の夢や目標を持っているか」と「学校に行くのが楽しいと思うか」との質問では、小学生で肯定的な答えが毎回少しずつ減っており、コロナ禍で行われた今回調査では下げ幅がやや大きくなった。

 経年変化分析調査で学校に「地域学校協働本部やコミュニティ・スクールなどの仕組みを生かして、保護者や地域の人との協働による活動を行ったか」と聞いたところ、「よく行った」「どちらかといえば、行った」と肯定的に回答した割合は小学校72.8%、中学校61.6%で、2019年度の前回調査から小学校が6.0ポイント減、中学校が3.8ポイント減となった。「(教員が))校外の各教科等の教育に関する研究会等に定期的・継続的に参加しているか」との質問では、肯定的に回答した割合は小学校75.9%、中学校75.3%で、前回調査から小学校が12.1ポイント減、中学校が8.6ポイント減となった。

 コロナ禍の影響で、学校と保護者や地域との関わりが減るとともに、教員が校外で行われる研究会などへ参加する機会が失われていることが確認された。

 全国学力・学習状況調査は、昨年度が新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校の影響で中止となり、2年ぶりの実施となった。今回は全国の小学6年生の国語と算数、中学3年生の国語と数学から出題される学力調査と、各学校、児童生徒への質問紙調査で構成され、5月27日に実施された。新型コロナウイルスの影響などで、5月28日~6月30日に実施した学校が小学校で103校、中学校で184校あり、これらは全体の集計から除いているほか、児童生徒質問紙調査は一部の国立大学附属学校でタブレット端末などを用いたオンラインによる回答が試行的に行われた。

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