【デルタ株危機】「一学期と同じ対応ではない」 文科省課長に聞く

 新型コロナウイルス感染症の猛威が続く中、多くの学校で二学期が始まった。文科省では感染症対策の徹底を求めるとともに、感染者の急増で保健所の対応が遅れるケースを想定した臨時休校のガイドラインを、相次いで全国の教育委員会に宛てて発出した。文科省健康教育・食育課の三木忠一課長はインタビューに応じ、「感染力が強いとされるデルタ株であっても、3密の回避といった基本的な感染症対策の徹底が重要であることに変わりはない。ただ、これは一学期までやってきたことと同じことをやってください、ということではないと思っている。地域の感染状況に合った学校における感染症対策を徹底してほしい」と述べ、感染状況が悪化している地域では、感染リスクの高い教育活動を取りやめるなど対策の徹底が必要との考えを示した。

 二学期に向けて、文科省は2つの通知を出した。1つは学校における感染症対策の徹底を求めた8月20日付の通知。もう1つは8月27日付の通知で、学校で感染者が発見されたにもかかわらず、保健所の業務がパンク状態で濃厚接触者の特定などが遅れる場合に備え、学校設置者が学級閉鎖や全校休校を判断するためのガイドラインを示した。それらの前提になるのが、今年5月に最新版に改訂した「衛生管理マニュアル」という位置付けになっている。

 8月20日付通知について、三木課長は「デルタ株に対して、今までの対策でいいのか、と心配する声も聞く。対策については、これまで示してきているものをベースに、それぞれの感染状況に応じた対応をとることが重要だと示している」と話した。

 通知では、個人の基本的な感染予防対策は、厚労省のマニュアルに沿い、「変異株であっても、3密(密集・密接・密閉)や特にリスクの高い5つの場面の回避、マスクの適切な着用、手洗いなどが有効。このことはデルタ株についても同様である」と説明。5つの場面の回避は、「飲酒を伴う懇親会など」「大人数や長時間におよぶ飲食」「マスクなしでの会話」「狭い空間での共同生活」「居場所の切り替わり」を指す。

 学習塾で複数の児童生徒が感染する事例が出ていることや、引き続き家庭内感染が生じていることから、「外からウイルスを学校内に持ち込まないようにすることが、学校における感染拡大を防ぐためには極めて重要」と強調。新学期にあたって▽PTAなどと連携しつつ、保護者の理解と協力を呼び掛ける▽基本的な感染症対策の重要性はデルタ株でも同様であることを認識した上で、学校における感染症対策の徹底を図る――ことを求めた。

 具体的な対策では、「普段と体調が少しでも異なる場合には、児童生徒、教職員ともに自宅での休養を徹底する」「登校時や登校後に児童生徒に風邪症状が見られた場合には安全に帰宅させ、症状がなくなるまでは自宅で休養するよう指導する」「気候上可能な限り、常時換気に努める。エアコン使用時においても換気は必要」などを列記している。こうした内容は衛生管理マニュアルに詳述されている。

 衛生管理マニュアルでは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の実施区域をレベル3と分類。通知ではレベル3の地域には「児童生徒の間隔を可能な限り2m(最低1m)確保するように座席を配置する」ことを求めている。こうした児童生徒の間隔を教室内で確保できない場合、分散登校や時差登校などが検討対象になる。

 三木課長は「衛生管理マニュアルは、感染状況をレベル1、2、3と分け、それぞれの状況に応じて取るべき対策を書いている。例えば、ある地域で7月末だったらレベル1の対策でよかったけれども、今はレベル3になっているのであれば、そのレベル3に応じたことをやらないといけない。そういう意味で、地域それぞれの感染状況を踏まえて、それぞれの学校における感染症対策を徹底してほしい」と説明する。

 通知では、各教科の学校教育活動について、レベル3では「感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高い学習活動」を行わないよう求めている。例えば、「児童生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワーク」や「近距離で一斉に大きな声で話す活動」、音楽における合唱やリコーダー、鍵盤ハーモニカなどの管楽器演奏、家庭や技術・家庭における調理実習、体育や保健体育における「児童生徒が密集する運動」や「近距離で組み合ったり接触したりする運動」は特にリスクが高いとして、実施しないよう明記した。
 
 部活動についても、感染リスクの高い活動に十分留意することを求め、「顧問の教師や部活動指導員等に委ねるのではなく、学校の管理職や設置者が顧問等から活動計画書等を提出させ、内容を確認して実施の可否を判断するなど、責任を持って一層の感染症対策に取り組むこと」と強調した。

 三木課長は「学校が独自に行う他校との練習試合や合宿等の感染リスクが高い活動、大会やコンクール等への参加を除く都道府県間の移動を伴う活動については、本当に必要な活動かどうかを慎重に判断してほしい」と説明。さらに「部活動の時間だけではなく、付随する場面での対策の徹底もお願いしたい。部活動の前後の食事等が典型的な例になる」と述べ、マスクを外して会話しながら食事するといった場面に気を付けるよう促した。

 ただ、マスクの着用については「運動時は身体へのリスクを考慮し、マスクの着用は必要ないことも示しているので、留意してほしい」と話した。

 次に、学校で感染者が確認された場合の対応を整理した8月27日付の通知について、三木課長は「衛生管理マニュアルでは、学校で感染者が確認されたら、保健所への報告や相談を踏まえながら、学級閉鎖などの対応を決めるよう示していた。ところが、感染拡大によって、保健所が逼迫(ひっぱく)して対応が難しい状況も想定されるようになったので、そのときに学校設置者が判断するための参考として作った」と狙いを説明。

 通知によると、学級閉鎖を判断するガイドラインは▽同一の学級で複数(2、3人程度)の児童生徒の感染が判明した場合▽感染が確認された者が1人であっても、周囲に未診断の風邪などの症状を有する者が複数いる場合▽1人の感染者が判明し、複数の濃厚接触者が存在する場合▽その他、設置者で必要と判断した場合――となっている。学級閉鎖の期間は、5~7日程度を目安とした。

 感染が拡大して、上記の基準で複数の学級を閉鎖する場合には学年閉鎖とする。さらに複数の学年を閉鎖するなど、学校内で感染が広がっている可能性が高い場合には、臨時休校を実施する、との判断基準を示した。

 休校について、文科省は感染状況に応じて学校単位で判断すべきだとする考えをとっている。地域一斉の臨時休校は行わないよう自治体に求めており、8月20日付通知でも「小学校や中学校については、子どもの健やかな学びの保障や心身への影響などの観点からも、避けるべきである」と明記した。

 三木課長は「休校の考え方は、これまでも衛生管理マニュアルで示していたが、保健所への相談が前提となっていたので、それが抜け落ちたときにどうするか、という考え方を今回示した。臨時休校の基準についてはある程度明確になったと思う」と話している。

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