人生100年時代に向けた体育へ 日本整形外科学会が提案

 人生100年時代を迎え、高齢になってからの「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」が懸念されている。日本整形外科学会はこのほど、記者会見を開き、ロコモティブシンドロームを防ぐには、子どものころの運動がより重要になるとして、体育の授業の在り方などを提案した。体育の授業などで幼少期から運動を楽しめる環境をつくることで、成長期のうちに骨を丈夫にし、成人以降のロコモティブシンドロームの予防につながると、同学会では期待を寄せる。

 ロコモティブシンドロームとは、骨粗しょう症や骨折などをきっかけに、筋力の低下や姿勢の変化が起こり、それが回復できずに移動能力の低下や歩行障害につながると、日常生活に支障を来たしたり、介護が必要になったりする状態のことを指す。人生100年時代になって高齢者も働くようになると、このロコモティブシンドロームによるリスクが、医療介護の負担増だけでなく、労働力の確保など、社会全体に波及すると懸念されている。

 骨粗しょう症や骨折などを防ぐには、骨を丈夫にすることが重要になるが、筋肉などと異なり骨の量は成人になってから増やすことはできず、身長が最も伸びる成長期に、骨の量をできるだけ増やしていく必要がある。成長期に骨の量を増やすには、適切な栄養摂取に加え、飛んだり跳ねたりなどの、骨に過重刺激を与える運動が効果的だという。

 記者会見で、スポーツ医学が専門の中嶋寛之東京大学名誉教授(横浜市スポーツ医科学センター顧問)は「子どものスポーツ習慣は二極化しており、スポーツに熱心な子どもがいる一方で、運動習慣を持たない子どももいる。体育が嫌いという子どもはこれまでも一定数いたが、人生100年時代になり、体育の役割は全く変わったと言わざるを得ない。体育嫌いや運動習慣を持たない人が増えると、超高齢社会がどうなるか。大変気掛かりだ」と指摘。特に学校の体育が嫌いになる理由として、競技性が優先されがちなことを挙げた。

 こうした問題意識を踏まえ、鳥居俊(すぐる)早稲田大学スポーツ科学学術院運動器スポーツ医学研究室教授は、体育の授業では、運動の重要性を科学的に理解できる内容をさらに充実させ、運動を楽しいと感じられるものにすべきだと提言。「体育の教員や授業を理由にした体育嫌いを減らす必要がある。カリキュラムはもちろん、楽しく運動を指導できる教員を養成することが求められる」と話した。

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