【デルタ株危機】臨時休校や学級閉鎖続出 「そのとき」に現場は

 新型コロナウイルスの第5波の影響で、学校を再開したものの、感染者が出たために臨時休校や学級閉鎖になる学校が出ている。地域の感染拡大により、夏休みを延長した自治体も次々に学校を再開する中で、こうした事態は今後、全国各地で起こり得る。緊張と不安の中で、「そのとき」が来たらどう対応するか。学校や自治体の取り組みを取材した。

教職員が出勤できなくなれば学校が回らない

 新型コロナウイルスの感染者が東京都と並んで多い大阪府。府教委によると、9月8日午前11時の時点で、生徒や教職員の感染が確認されたことにより、府立高校14校が臨時休校となっている。府教委ではこれまで、感染者が出た場合には一律で臨時休校にする対応を取っていたが、9月6日に新たに通知を出し、疫学調査の結果に基づく保健所の判断に応じて、休校ではなく学年閉鎖や学級閉鎖も可能とする方針に転換した。ひっ迫している保健所の業務を軽減するため、学校は陽性者と接触した可能性のある生徒や教職員の名簿などの基礎情報を保健所に提供することも決まった。

 大阪市立学校でも9月8日朝の時点で▽小学校 11校▽中学校 6校▽高校 1校――が臨時休校となっている。

 市内の公立小学校に勤務する教員は「端末をいつも持ち帰るところまではできていないので、もし土日に感染が判明して学級閉鎖になったら、端末や課題をどうやって届けるか」と、感染者が判明して学級閉鎖になったときの対応の難しさに頭を抱える。

 この学校では、感染の疑いがある子どもがPCR検査を受けた場合、その結果を保護者から学校に直接連絡してもらうようにし、体育の授業なども激しい運動は避けた上でマスクの着用を徹底するなど、できるだけ感染が広がらないような対策を取っているという。

 しかし、感染リスクやその影響は校内だけにとどまらない。この教員は「小さな子どもを保育所に預けている教員は、もし保育所で感染者が出て臨時休園になったら、学校に出勤することが難しくなる」と話し、感染していなくても教職員が学校に来られない事態が起これば、学校が回らなくなると懸念する。

感染不安による欠席も増える

 いち早く夏休みが終わった北海道でも、学校再開後に感染者が相次ぎ、臨時休校や学級閉鎖を余儀なくされる学校が多く出た。

 道立学校では9月7日時点で、高校・中等教育学校で学級閉鎖が6校、特別支援学校で臨時休校が2校ある。道教委の担当者は「道内の感染者は減っているが、学級閉鎖の数が減るかどうかはタイムラグがある。来週以降どうなるか。ふたを開けてみないと分からない」と、この状況を慎重に見極めようとしている。

 これまで道教委では、学校で感染者が出ると保健所が疫学調査に入り、それに基づいて臨時休校などの期間を学校ごとに決めていたが、文科省の方針を受けて9月6日に道立学校や市町村教委に対して新たな通知を発出。保健所の調査に時間がかかる場合は、範囲を広めに設定して休校とし、調査結果が確定したら休校・学級閉鎖などの期間や範囲を判断すること、同一学級で複数の児童生徒の感染が判明した場合や、感染者の他にも濃厚接触者が複数いる場合などは学級閉鎖、複数の学年閉鎖が起こっている場合は学校閉鎖とし、その期間は保健所の助言を踏まえて5~7日程度を目安とすることなどを定めた。

 札幌市教委は8月26日の段階で、学校で感染者が出た場合の方針を公表。感染者が出た学級は可能な限り速やかに下校し、それ以外の学年・学級は通常日課を行った上で下校。校舎の消毒や濃厚接触者の特定が終了するまでは臨時休校とし、その後、閉鎖する学級などを決めるとしている。学級閉鎖の期間は14日間で、その学級の子どもや濃厚接触者となった子どもは、土日を含む毎日、健康観察の結果を学校にメールで報告するよう求めた。

 市教委によると、9月7日の時点では小学校で28校・38学級、中学校で11校・13学級が学級閉鎖となっており、学年閉鎖や臨時休校はない。ここ数日、学級閉鎖をしている数は横ばいで推移している。
 市内のある公立小学校の教員は「先週から1クラスが学級閉鎖になっている」と明かす。近隣の学校でも複数の学級閉鎖が起きているといい、「デルタ株の感染が広がる前と比較すると、全く状況は違う」と、学校での感染拡大について危機感をあらわにする。

非常時に備え、自宅への持ち帰りを想定した端末の操作を教室で練習する児童ら(発寒南小提供)

 学級閉鎖になったクラスには子どもたち全員にPCR検査キットが配布されているが、今のところ学級内でのクラスターには発展していない。学級閉鎖になったクラスではタブレット端末を持ち帰り、家庭とつないでオンライン授業を行えるように準備を進めているという。

 「校内で1人でも感染者が出るだけで、感染不安による欠席が一気に増える。そうした子どもたちへのフォローにまで手が回らず、端末も配布できていない。それぞれ担任が課題を伝えたり、小まめに家庭と連絡を取ったりしているが、心のケアもしっかりしていきたい」と話す。

学級閉鎖の可能性を想定して準備

 実際に新型コロナウイルスの陽性者が出て、学級閉鎖になった学校では、どのように対応しているのだろうか。

 9月3日まで1クラスが学級閉鎖をしていた札幌市立発寒南小学校の朝倉一民教頭は「2学期が始まったばかりだったので、子どもたちの学習をどうサポートするかが重要だった。ただ、陽性者が出て学級閉鎖が起こる可能性は4月から想定し、いつそうなってもいいように準備をしていたので、オンライン授業への切り替えは思っていたよりもスムーズだった」と振り返る。

 同校では1学期にGIGAスクールの端末が配備されると、自宅で使うことを想定した使い方の練習を各学級で行った。保護者にも学校のホームページや「学校だより」を通じて、これらの端末を活用してどのような学びが行われるかを理解してもらい、自宅での活用が始まることを踏まえ、保管庫に固定されているために貸し出せない端末のアダプターを各家庭で用意してもらうなどの準備を進めていた。

GIGAスクール構想による端末の配備が始まってから、札幌市教委が端末の貸し出し手続きや持ち帰り訓練の方針などの見通しを、学校の管理職に早めに示していたことも助かったという。

 さらに、もし教職員や子どもたちの中から陽性者が出た場合、陽性者の特定につながらないようにすることにも気を付けなければならない。そこで同校では昨年から欠席の理由をあえて尋ねないように徹底し、子どもたちにも「詮索はしないように」と指導した。

 そして夏休みが明けて間もなく、そんな平時の備えが発揮されるときが来た。

 学級閉鎖が決まった学級には、各家庭にPCR検査キットを配るのに合わせて、学校の端末を貸し出し、すぐにオンライン授業ができる体制が整った。実際の学校の日課に合わせ、朝の会と帰りの会の時間にはクラス全員がグーグルのミートを使って顔を見せ、課題の提出も全てクラウド上で行った。

 「子どもたちは、場所は違うが同じ時間を共有し、楽しく学んでいる。授業を全てオンラインのリアルタイムでやろうとは、最初から考えていない。無理のない形でやりながら、子どもたちが自己調整しながら学んでいけるようになることを目指した」と朝倉教頭は話す。

(【デルタ株危機】特報班)

関連記事