世帯収入にかかわらず多様な体験が成長に好影響 文科省調査

 2001年に出生した2万人以上の子供を対象に文科省が行った追跡調査のデータ分析から、小学生の頃に自然体験や社会体験など体験活動の機会に恵まれた子供は、家庭の経済状況に左右されることなく、高校生の頃の自尊感情(自分に対して肯定的な感情)などが高くなる傾向が見られることが9月8日、分かった。こうした大規模な調査で「体験」と効果の関連性を検証した調査研究は同省初といい、分析に当たった専門家は「家庭の経済状況にかかわらず、子供の成長には多様な体験が必要であることが示された。家庭や地域、学校が協力して、子供を支える環境づくりを進めていくことが大切だ」と指摘している。

 今回の調査研究は、2001年に出生した子供とその保護者を18年間にわたり追跡した「21世紀出生児縦断調査」のデータを基に、体験活動が成長に及ぼす影響を分析。自然体験(キャンプや登山など)、社会体験(農業体験、ボランティアなど)、文化的体験(動植物園見学、音楽・演劇鑑賞など)に分けて調べたところ、自然体験が多い子供は自尊感情や外向性(自分を活発だと思う)が、社会体験が多い子供は向学的な意識(勉強・授業が楽しい)が、文化的体験が多い子供は向学的な意識、自尊感情、外向性、精神的回復力(新奇性追求、感情調整、肯定的な未来志向)、心の健康の全てが高くなるという結果が得られた。

 また、「遊び相手」による成長への影響を分析したところ、異年齢の子供や家族以外の大人など多様な相手と遊ぶ機会が多いほど、自尊感情や外向性などに良い影響が見られることも分かった。

 さらに家庭環境の要因も影響していないかを調べるため、世帯収入の水準別に分けて体験と意識を分析した。世帯収入が高いほど社会体験や文化的体験の機会が多い傾向はあるものの、例えば小学生のときに自然体験の機会に恵まれていた子供は、収入の水準が高い低いに関わらず、同じ傾向でその後の自尊感情に良い影響が見られることが示された(グラフ参照)。

 分析チームでは調査分析と並行して、実際に子供の体験活動の支援に取り組んでいるNPOなど8団体へのヒアリングを実施し、体験活動を推進する上で指導方法など重要な点について聞き取った。その中では、「大人が一緒に参加して見守ったり、褒めたりすることが重要」「自分でできたという体験を幼児期にすることが大切」などといった指摘があったという。

 こうした結果について、調査分析に当たった國學院大学人間開発学部の青木康太朗准教授は「全体の調査から、子供の健やかな成長には何か一つの体験ではなく、多様な体験をすることが必要であることが分かった。全ての子供たちに対し、置かれている環境に左右されず、周りの大人が意図的・計画的に体験の場や機会を設けることが大切だ。家庭では手伝いや読書習慣が身に付くように教え、地域では放課後に大人と交流する機会をつくるなど、地域と家庭、学校が協力して、子供の成長を支える環境づくりを進めていくことが求められる」と述べた。

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