【デルタ株危機】高まる不安 登校控える子どもへの対応


 新型コロナウイルスの第5波の中で迎えた夏休み明けの学校再開。分散授業やオンライン授業に乗り出す自治体や学校がある一方で、感染への不安などから登校を控える児童生徒に対し、学びを保障する仕組みも少しずつ充実している。文科省も8月27日に、やむを得ず学校に登校できない児童生徒に対して、オンラインなどを活用して、学習に遅れが生じることのないようにし、規則正しい生活習慣の維持や、学校と児童生徒との関係を継続するよう通知している。これまでにない感染者数の増加で、保護者の不安も高まる中、自治体がどのように対応しているのかに注目した。

ハイブリッド型授業を選択可能にすることへの挑戦

 9月12日までの緊急事態宣言の延長が取り沙汰されたころから、さいたま市では学校に登校することと、自宅でオンライン授業を受けるのを選択できるようにすることを検討。8月24日には学校や保護者に選択制の方針を連絡した。

 自宅での学習を希望する場合は、8月25日までに連絡することとし、その結果、小学生の21%、中学生の12%が自宅でのオンライン授業を希望した。26日の始業式に合わせて希望する児童生徒の保護者に端末や貸し出し用ルーターを渡し、27日からハイブリッド型の授業をスタート。教室では自宅にいる児童生徒がモニターに映し出され、学校にいる教員や児童生徒と同じ授業をオンラインで受けた。

 オンライン授業を希望した児童生徒は欠席扱いとせず、途中から学校に登校したり、オンライン授業に切り替えたりすることも認めるなど、柔軟に対応している。この対応は9月12日までとしていたが、緊急事態宣言の再延長となれば、継続することも検討している。

 市教委の担当者は「当初はアクセスが集中したり、雷の影響を受けてか、ネットワークの不調が起こったりしたが、サーバー容量を増やすなどの最適化をして対応できた。今回挑戦したことで出てきた課題を今後整理していきたい」と振り返る。また、保護者からは「選択できたことはよかった」「新しいことに対して、問題や不具合を恐れずに挑戦している」など、好意的な声が寄せられているという。

午後にGIGAスクール端末で学習支援

 夏休み明けの9月1日から緊急事態宣言が解除されるまでの期間、区立小中学校を午前中のみの一斉短縮授業とし、給食後に下校する対応を取っている東京都練馬区では、感染不安から登校を控える児童生徒については欠席ではなく出席停止扱いとし、各校で午後の時間にGIGAスクール端末を活用したオンラインによる健康観察や学習支援を行っている。

練馬区が配布しているGIGAスクール端末を使って自宅で学習する児童

 東京都では緊急事態宣言が9月末まで延長される可能性が高く、区教委の担当者は「こうした対応が長期化することで、登校を控える児童生徒の学習支援等を確実に行う必要がある。本区ではLTE付きの端末で、当初より児童生徒は持ち帰りをしている。今回のオンラインでの対応も、各学校が工夫しながら進めている」と話す。

 実際に行われているオンラインによる学習支援は、例えば午前中の授業内容を伝えたり、教科書を基に家庭学習の範囲を指示したりしている学校から、グーグルのクラスルームを通じて課題を提出させている学校、グーグルのミートを使って個別でオンライン学習支援を行っている学校など幅広い。中学校では定期考査に向けた学習についても指導するなど、学校登校後もスムーズに学校生活が送れるよう、各校が創意工夫して支援を続けている。

いつ休校になっても困らないようにコツコツ準備

 岐阜市では2学期から、分散登校とオンラインによるハイブリッド型の授業を、全ての市立小中学校で取り入れている。感染不安を理由に登校を控える児童生徒も一定数いるものの、日々の授業にはオンラインで参加しているという。

 具体的には、教室にカメラを設置し、リアルタイムで教室の授業をオンライン配信。ウェブ会議システムを使って、教室にいる教員やクラスメートと双方向のやりとりもできる。さらに、朝の会や帰りの会などの授業以外の場面でもオンラインを取り入れ、児童生徒に安心感を与えられるよう努めている。

 岐阜市がスムーズにオンライン活用にかじを切れたのは、昨年度からの積み重ねの成果だと、市教委の担当者は明かす。「昨年度のうちから『いつ休校になっても困らないように』を念頭に、端末活用を進めてきた。最初はオンラインで朝の会をするなど、ハードルの低いものから、コツコツ挑戦してきた。現時点で現場から『うまくいかない』といった声はないようだ」と手応えを得ていた。

今はプリント学習で対応、端末活用も視野に

 岡山市の市立小中学校では、2学期を迎えた最初の1週間である8月30日~9月3日に、小学校で370人、中学校で100人の計470人の児童生徒が、感染への不安から自主的に学校に来なかった。市教委では、登校を控えている児童生徒を欠席扱いにはせず出席停止とし、内申書などに不利にならないよう配慮している。

 学習面では、不登校児童生徒への対応と同じように、各学校や担任がそれぞれの子どもに合わせてサポート。現在はプリント学習がメインだが、GIGAスクール端末を家庭学習に活用できる準備も進めているという。

 市教委の担当者は「端末を持ち帰って学習できる環境をなるべく早く整えたい。欠席が長期化することで、児童生徒の精神面でもサポートも必要になるだろう。担任教諭が児童生徒の様子を逐一把握して、スクールカウンセラーや関係機関と速やかに連携できる取り組みも進めていく」と話す。

オンラインの活用で幅広いニーズに柔軟に対応

 感染不安のため自主的に登校しないことにした児童生徒が、9月6日だけで4754人にも上った福岡市では、オンラインの活用を加速させている。一斉休校明けの昨年度から、基礎疾患があるなど、感染不安で登校できない児童生徒の対応にいち早く取り組んできた同市では、感染不安によって登校せず、自宅でオンライン授業を受ける児童生徒を出席扱いとし、段階的にLTE対応のGIGAスクール端末の整備を進め、自宅で教室の授業を受講できる仕組みを整えてきた。

 学校では、教室にカメラを置き、黒板と教師を映して、オンラインで授業の様子を配信。ウェブ会議システムを使って、朝の会や帰りの会に参加したり、担任やクラスメートと会話を楽しんだりできるようにするなど、コミュニケーション面にも配慮した。さらに保護者との面談でもオンラインを活用するなど、幅広いニーズに応えられる柔軟な対応を可能にしている。

 さらに、課題も見えてきた。例えば実技を伴う授業のオンライン配信。体育のマット運動や、図画工作の彫刻刀を使った作業などは、どうしても家庭で学校と同じ場面を再現することは難しい。また、1日中タブレットを見続ける子どもの健康面にも配慮が必要だ。同市では児童生徒の視力や集中力に合わせて、オンライン授業の視聴時間を調整しながら、対応しているという。

 デルタ株が猛威を振るう中、感染不安による児童生徒の登校控えは今後も長引く恐れがある。市教委の担当者は「教室にいない状態が続くので、児童生徒に不安感が生まれないかも心配だ」と、心のケアの必要性を指摘する。

(【デルタ株危機】特報班)

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