インクルーシブ型の才能教育 フィンランドの現状を報告

 特定分野に特異な才能を持つ児童生徒への指導や支援の在り方について検討する文科省の有識者会議(座長・岩永雅也放送大学学長)は9月13日、第3回会合を開いた。民間シンクタンク・三菱UFJリサーチ&コンサルティングの鈴庄美苗(すずしょう・みなえ)副主任研究員が、2018年度に行ったフィンランドでの現地調査の結果を報告。一部の人だけを取り出すのではなく、皆が共に学ぶ「インクルーシブ型」の才能教育が志向される一方で、国民的な議論は成熟していない、といった同国の現状を報告した。

オンラインで行われた有識者会議の第3回会合

 鈴庄氏はフィンランドで、才能ある子供が他の子供たちとともに学ぶ「インクルーシブ型」の才能教育が志向されており、才能を持つ児童生徒が社会に出た時に、社会生活に困難を感じにくくなることを目指していることを紹介。同時に、こうした志向がありながらも、「教科などに応じて部屋を分けたり、マンツーマンで対応したりしているのが実態に近い。ニーズに基づいたチーム分けは柔軟に行われている」とも話した。

 鈴庄氏の分析によれば、フィンランドの社会・教育文化では、他者との違いを認められ、教員が個々のニーズを満たす教育を提供してくれるという安心感が醸成されているものの、才能教育のニーズは一部にとどまっており、大勢を占めているわけではないという。すでにある程度は「個への対応」の一環として対応できているという政府の認識や、特別支援教育をより重視する見方があると報告した。

 また、才能教育が「エリート主義的だ」という批判を受けていたことも紹介。近年、国民からの理解が少しずつ得られてきてはいるが、いまだに十分な国民的な議論は行われていない、とした。また、教員養成のカリキュラムにおいても、才能教育についてのカリキュラムや学び直しの機会は少ないことを挙げ、これまで一部の教員が実践しているような才能教育の暗黙知を体系化していくことなどが求められていると説明した。

 こうした分析を踏まえ鈴庄氏は、特異な才能を持つ児童生徒への教育を国レベルで考える上では、▽社会・教育文化(ステップ0)▽才能教育へのニーズ(ステップ1)▽共通した理解・目的(ステップ2)▽才能教育を支えるインプット(教員・財源など、ステップ3)▽実践・ケアの方法(ステップ4)――というステップに沿った整理が必要だ、との見解を述べた。

 こうした報告を受け、松村暢隆委員(関西大学名誉教授)は、日本での今後の議論について「新たな制度を作るのではなく、教室の中で行われる個別最適な学びの中に(才能教育を)位置付け、学級をベースとして学校外との活動とも連携していくという方向で考えると、フィンランドのようにインクルーシブ型で学習者を中心とした方法は、確かに日本の参考になるのではないか」と応じた。

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