自民党総裁選告示 4候補、子育て支援や教育政策を表明

 菅義偉首相の後継を決める自民党総裁選が9月17日告示され、河野太郎・行政改革担当相、岸田文雄・前政調会長、高市早苗・前総務相、野田聖子・幹事長代行の4人が立候補を届け出た。4候補は同日午後に所見発表演説会と共同記者会見を行い、教育や子育てを巡る政策について、「子育て支援にまずお金を使わなければならない」(河野氏)、「子育て世帯の住居費や教育費を支援する」(岸田氏)、「育児や介護をしながら働く人に税額控除を導入したい」(高市氏)、「『こどもまんなか』を成長戦略に位置付けて推進する」(野田氏)との見解を明らかにした。総裁選は9月29日に投開票される。新総裁は10月4日に召集される臨時国会で首相に選出され、新内閣が発足する。

 各候補の陣営は9月17日午前、党に所属する国会議員20人の推薦人名簿など立候補に必要な書類を提出。届け出順は、抽選の結果、河野、岸田、高市、野田各氏の順となった。女性候補は2008年の小池百合子氏(現東京都知事)以来で、複数が出馬するのは1955年の結党以来初めて。

 4候補が掲げる教育や子育てを巡る政策について、この日の所見発表や記者会見、公式サイトなどからまとめた。

共同記者会見に先立ち記念撮影に応じる河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏、野田聖子氏(左から届け出順、自民党のライブ配信より)
河野太郎氏「子育て支援にまずお金を使う」

 河野氏は所見発表の冒頭、政治家として目指すゴールについて「人と人が寄り添う、ぬくもりのある社会を作りたい。保守主義とは、度量の広い、中庸な、そして温かいものである」との理念を表明した。

所見を発表する河野太郎・行政改革担当相(自民党のライブ配信より)

 子育て支援については、日本経済が22兆円の需要不足(GDPギャップ)に陥っていると指摘した上で、「これをなんとか埋めていかなければならない。コロナ禍の前に戻るのではなく、新しい未来につながる投資をしなければならない」と強調。続けて「まずやるべきは、子供たちと子育てをしている世帯に対して、しっかりと支えるよ、というメッセージを送っていくことだ。子供の貧困への対応、あるいは、子育ては楽しいと言えるような支援に、まずお金を使わなければならない」と述べ、子供の貧困対策や子育て支援に投資を振り向けていく必要を訴えた。賃金を上げた企業に法人税減税のインセンティブを付与する考えも示した。

 総裁選の所見をまとめた特設サイトでは、「新しい時代のセーフティーネット」として、持続可能な社会保障、子育て支援、教育の拡充を訴えている。具体的には▽出産、子育てから老後まで持続可能な全世代型社会保障制度の構築▽貧困を固定化させない、誰もが何度でも挑戦できる、セーフティーネットをつくる▽デジタル化でプッシュ型・ワンストップ型の支援を実現する▽少子化に歯止めをかけ、子育てを支援する▽初等教育から高等教育まで、全ての子供たちの教育機会の平等を保障する制度をつくる--ことを掲げている。

岸田文雄氏「子育て世帯に教育費などの支援強化」

 所見発表に臨んだ岸田氏は、初めに政治の根幹である国民の信頼が崩れ、民主主義が危機に陥っているとして、「国民の声を聞き、謙虚で丁寧な政治、多様な意見に寛容な政治を進めよう」と呼び掛けた。

所見を発表する岸田文雄・前自民党政調会長(自民党のライブ配信より)

 その上で新型コロナ対策や経済対策を述べ、新自由主義から新しい日本型資本主義への転換を進めて「令和版所得倍増」を目指すと強調。「子育て世帯への大きな負担となっている住居費や教育費への支援を強化する。また、民間企業に賃上げを求めるとともに国自身も努力し、公的に決まる看護師や保育士、介護士の収入を思い切り引き上げたい」とし、「新しい日本型の資本主義では格差にしっかり向き合い、多くの皆さんの所得を引き上げるなど、国民が一体感を実感できる国を作りたい」などと訴えた。

 岸田氏は、教育政策を巡っては、総裁選に向けて作成した「政策集」の中で、明治以来の一斉授業から ICTを活用した個別最適な学びに転換すると掲げている。具体的には、「誰一人取り残さない教育の実現」などを掲げ、1人1台端末やデジタル教科書・教材、映像ライブラリーなどを活用することや、いじめや自殺、不登校などの問題に真正面から取り組める教育現場を実現することなどを盛り込んでいる。

高市早苗氏「ベビーシッター代に税額控除を導入」

 高市氏は、まず日本経済を強くする『日本経済強靭化計画』を掲げ、金融緩和、緊急時の機動的な財政出動、大胆な危機管理投資・成長投資の3つのアプローチを表明。アベノミクスで掲げてきた物価安定目標2%を達成するまでは、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指すという財政規律の目標を凍結する考えを示した。

所見を発表する高市早苗・前総務相(自民党のライブ配信より)

 続いて「全世代の安心感を創出する諸政策を力強く実行していく」と強調。「未来を拓(ひら)くために雇用と所得の増大につながる大胆な成長投資、また、ぶ厚い中間層の再構築に資する税制、人材力の強化」を挙げた。

 その一環で、育児や介護をしながら働いている人を支援する具体的な政策として「ベビーシッターや家政士の国家資格化を前提にして、(利用代金から一定割合の)税額控除を行える仕組みを構築したい」とアピール。「給付付き税額控除」と「災害損失控除」の導入など、税制改正を通じた取り組みを目指す考えを説明した。

 総裁選特設サイトでは、学校教育や地域学習などを通じた「社会制度教育」の実施を提唱。 卒業や修了など子供たちの節目に合わせて、生活・育児・介護・障害・進学への支援策など利用可能な施策の周知を徹底する考えを示している。

野田聖子氏「子供への大胆な投資で人口減少乗り越える」
所見を発表する野田聖子・自民党幹事長代行(自民党のライブ配信より)

 野田氏は、日本の未来を担う子供や、高齢者、障害者など社会的弱者への政策が不十分だと指摘し、特に人口減少問題について、「来年の出生数は約70万人と言われており、このままでは生産年齢人口は2050年に5000万人を割り込んでしまう。これまで少子化対策は出産や子育て支援など厚労行政が担ってきたが、人口減少問題を経済や安全保障にも関わる国家の危機と位置付けて真剣に取り組み、人口減少を止めたい」と訴えた。

 そのための具体的な政策として、子供支援の司令塔としてこども庁を設立し、教育や保育、貧困問題解消に向けた投資を積極的に行っていくと強調。

 「『こどもまんなか』を成長戦略に位置付けて推進する。子供は国の持続性を担保する要素であり、子供の幸福度が高く、貧困度が低い国は出生率が改善しているというデータがある。人口減少への積極的な取り組みや子供支援によって、日本の持続可能性を世界に示せば、世界からの日本への投資意欲も高まってくるはずだ。人口減少問題を子供への大胆な投資で乗り越えた国という、将来性のある国へ変えたい」と訴えた。

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