自民党新総裁に岸田氏 重要課題に少子化対策

 菅義偉首相の後継を選ぶ自民党総裁選は9月29日、都内のホテルで投開票が行われ、岸田文雄・前政調会長を第27代の新総裁に選出した。岸田氏は10月4日に召集される臨時国会で第100代首相に指名され、新内閣を発足させる。記者会見した岸田新総裁は、重点政策として「新しい資本主義の構築」を挙げ、「分配なくして、次の成長もない。できるだけ幅広い国民の所得・給与を引き上げる経済政策をとっていきたい」と強調。中間所得層の負担軽減策として、教育費や住居費への支援に言及した。教育・子育て関連では、少子化対策やICTを活用した個別最適な教育の推進を重視する考えを示した。

自民党の新総裁に選出され、拍手に応える岸田文雄・前政調会長(自民党の公式YouTubeチャンネルより)

 総裁選には、岸田氏とともに、河野太郎・行政改革担当相、高市早苗・前総務相、野田聖子・幹事長代行の4人が出馬した。1回目の投票は、国会議員票382票と同数の党員・党友票の計764票で争われ、岸田氏が256票でトップに立ち、河野氏255票、高市氏188票、野田氏63票と続いた。過半数に達した候補がいなかったことから、上位2人による決選投票が行われた。

 決選投票は、国会議員票382票と、都道府県連各1票の党員票47票を合わせた計429票で争われ、岸田氏257票、河野氏170票で、岸田氏が新総裁に選出された。

 続いて開催された両院議員総会であいさつに立った岸田氏は、今回の総裁選について、「総裁候補それぞれが、国民に寄り添って、国民の声に耳を澄まし、建設的な政策論争を行った。自民党が国民政党であり、国民にしっかり向き合い、自由闊達(かったつ)な政党であると示すことができた」と総括。近く行われる衆院選と来年夏の参院選に向け、「生まれ変わった自民党をしっかりと国民に示し、支持を訴えていかなければならない」と意気込みを見せた。

自民党の両院議員総会で、選出後初のあいさつを行う岸田文雄・新総裁(自民党の公式YouTubeチャンネルより)

 夕方に行われた記者会見では、これから取り組む課題として、まずコロナ対策を挙げ、「これからも全てをかけて必死に取り組んでいかなければならない。国民がコロナによって心をバラバラにされてしまっている。みんなで頑張ろうという心を取り戻し、ワンチームとして国難に取り組んでいく雰囲気を作っていかなければならない」と強調した。

 次に「(コロナ対策の)その先に、新しい資本主義を構築していきたい」と続け、「経済には成長と分配が共に求められる。分配なくして次の消費、需要も喚起されない。分配なくして、次の成長もない。これもまた偉大な事実であると私は思っている」と、経済政策の主軸に分配政策の見直しを掲げた。「今こそ、成長と分配の好循環を実現し、全国津々浦々に成長の果実をしっかり届けていきたい。すなわち、できるだけ幅広い国民の所得・給与を引き上げる経済政策をとっていきたい」と意欲を語った。

 この他の重点政策には▽自由で開かれたインド太平洋の実現▽少子化対策▽人生100年時代を見据えた全世代型社会保障制度の構築▽ICTを活用した個別最適な教育の推進▽地域に寄り添った多様で豊かな農林水産業の推進--を例示した。

自民党総裁に選出され、初めての記者会見に臨む岸田文雄・新総裁(自民党の公式YouTubeチャンネルより)

 質疑応答では、「新しい資本主義」の具体像について、「大企業と中小企業の格差、下請けへの分配、株主や経営者だけではなく従業員への適切な分配を民間で考えてもらう。同時に、公的な分配の努力も大事。看護師や介護士など、仕事の大変さに比べて給与が少ないと言われる方々の給与は国が決めることができる。こうした公的価格を国が率先して引き上げ、民間の給与引き上げの呼び水にしたい」と説明。教育費や住居費についても「中間所得層の大きな負担になっている」として支援対象にしていく考えを示した。

  ◇   ◇   ◇

 岸田氏は、総裁選の期間中、教育新聞のアンケートに答え、教育改革への取り組みや少子化対策などについて、見解を明らかにした。全文を再録する。

 【質問1】教育改革への取り組みと教育観について

 (岸田氏)明治以来の一斉授業から、ICTを活用した個別最適な学びへと転換し、「誰一人取り残さない」「伸びる子はどんどん伸ばす」教育を実現する。具体的には、1人1台の情報端末、デジタル教科書・教材、映像ライブラリーなどを活用した、個別最適な学びを確立する。また、いじめ、自殺、不登校などの問題に真正面から取り組める教育現場の実現と、教員の質の担保・向上に、引き続き全力で取り組む。また、道徳教育や高校新教科「公共」、自然体験活動などの充実により、わが国の伝統や文化を引き継ぎ、発展させる当事者意識を育成する。

 【質問2】少子化対策・子育て支援について
 
 (岸田氏)子ども・家庭に対する公的支出は、対GDP比で世界平均の半分という状態であり、これを引き上げ、子どもにより多くの投資を行う。このため、子育て世代の教育費・住居費への支援が必要。教育費については、党の政調会長時代、幼児教育保育の無償化、高等教育の無償化を実現したが、さらに高等教育(大学)についても、取り組みを強化していく。また保育の受け皿整備、幼保小連携の強化、学童保育制度の拡充を行う。

 【質問3】こども庁の新設について

 (岸田氏)子どもを巡っては、自殺、いじめ、貧困、さまざまな痛ましい問題がある。こうした課題に焦点を当て、子どもの「命」・「健康」・「人権」を守る観点から、子ども行政に横串を刺し、子どもをど真ん中に据えた行政を実現するとともに、子ども・家庭への公的支出を世界標準にまで高める必要がある。このためにも「こども庁」の議論は、しっかり継続し、実現していく必要がある。

あなたへのお薦め

 
特集