学校での外部専門家「教育課程に位置付け必要」 中教審部会

 中央教育審議会(中教審)初等中等教育分科会の教育課程部会は9月30日、外部専門家や地域と一緒に学校運営を行う「社会に開かれた教育課程」について集中的な議論を行った。県内全ての公立校がコミュニティ・スクールとして運営されている山口県の取り組みの紹介や、学校と外部専門家の連携が困難な状況について認定NPO法人カタリバの体験的な報告が行われた。部会長の荒瀬克己・教職員支援機構理事長は「さまざまに異なる多様な視点を学校教育に入れていくことが重要。そのために、どういう教育課程を作り、どうマネジメントしていくかにかかっている」と総括し、今後、教育課程の中に外部専門家や地域との連携を明確に位置付けていく必要性を指摘した。

 山口県では、2016年に全ての公立小中学校、高校、特別支援学校に学校運営協議会が設置され、学校と地域が連携するコミュニティ・スクールとして学校が運営されている。山口県教育庁義務教育課の太田誠指導主事は、この背景について「人口減少、学力不振、学校の荒れといった学校だけでは解決が難しい課題の増加があった」と述べ、カリキュラムの中に地域との連携を取り入れていったことを説明。学校が方針を作成し、学校運営協議会の承認を得るだけだと、コミュニティ・スクールが形骸化してしまうため、「『熟議』を通して、学校・地域連携カリキュラムの再構成を行うことが重要」と指摘した。

 具体的な事例として防災教育を挙げ、地域の課題に住民と児童生徒が連携して取り組むことで「『避難訓練』は地域のカリキュラムである『防災教育』になり、子どもたちは当事者意識を持ち、地域の担い手としての自覚を高めていった」と述べた。

 この後、出席した委員は2つのグループに分かれ、企業との連携と、家庭・地域との連携をテーマに審議を続けた。

 家庭・地域との連携を協議したグループでは、認定NPO法人カタリバ代表理事の今村久美委員が、東日本大震災で被災した岩手県立大槌高校に常駐しているコーディネーター、三浦奈々美さんとともに、探究的な学びの実現に向け、外部専門家が学校の運営に関わるときの難しさについて、体験的な報告を行った。

 今村委員は「『社会に開かれた教育課程』は、教員だけの力で実現することはできない」と指摘。その理由として▽探究における個別の課題設定に寄り添うことは教員だけでは膨大なコストがかかる(教員定数の不足)▽特に新学習指導要領で位置付けられた総合的な探究の時間は、一人の教員のサポートだけでは個別最適な探究を実現することは非常に難しい(教員の専門性不足)▽教室の中だけでの探究は生徒の意欲も探究も深まらない。 オーセンティックな課題(リアルな課題)に向き合ってこそ真の探究が始まる(探究フィールドの不足)--の3点を挙げた。

中教審教育課程部会で報告する認定NPO法人カタリバ代表理事の今村久美委員(左)と岩手県立大槌高校の常駐コーディネーター、三浦奈々美さん(右)

 大槌高校では、生徒全員・教職員全員でワークショップを繰り返し、全校集会や職員会議にて、「大槌高校の何を変えたいのか」「どのような学校にしていきたいか」について意見を出し合い、100人以上の地域住民が参加して地域を巻き込んだワークショップを開催したことを紹介。「社会に開かれた教育課程」を実現するためには「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有することが大切になる」と話した。

 外部のコーディネーターとして学校運営に関わる困難さについて、三浦さんは「地域との連携をするために職員室に席をもらっているのに、教員から『なぜ生徒指導をしないのか。もっと生徒に厳しく接しなさい』と言われたり、生徒と地域のつながりを付けていく中で生徒の情報を遮断されたりすることがあった。福祉系への進学を希望している生徒に、福祉系の大学との連携を進めたときには教員から『余計なことをするな』と言われた」といった体験を説明した。

 今村委員は「いまの学校で働いている人は、教職免許を持った教員がほとんどなので、教員としての常識や前提、生徒指導の方針がある。そこに別のロジックや観点を持った人が入っていって地域とつなぐといっても、理屈が違うので、つぶされてしまうケースもある。学校に地域とつながるためにコーディネーターとして入っても、リスペクトされない。外部の人ができることはないよ、という扱いを受ける」と率直に指摘。「強い心と、教員たちと渡り合う能力があって、そこから3、4年耐えていくと、やっとコーディネーターとして認められる。この厳しい職域に若者が入っていくことは、現状では非常に難しいと思う」と述べた。

 こうした議論を受け、荒瀬部会長は「かつて開かれた学校にしなさい、と言われたとき、基本的にそういう面倒なことはしたくない、という思いが強かった。われわれ教員は専門家であり、学校教育の主体であることに間違いない。けれども、子どもを育てるという意味で、どういう力を子どもたちに付け、幸せな個人を育て、その個人が集合する幸せな社会を作っていくのか。そこのところで一致できるのは何かというと、結局、どういう教育課程を作るのか、ということになる」と指摘。

 外部専門家や地域住民が学校運営に参加することについて「その中身が何かというと、さまざまな異なる多様な視点を学校に入れていく、この重要性だと思う。さまざまな異なる多様な視点を子どもたちの教育に置いていく際に、共通の場所は教育課程になる。このカリキュラムをどうマネジメントしていくかが非常に重要になってくる。基本的な軸は新学習指導要領の着実な実施であり、それに向けて具体的に取り組んでいる学校の先生はもちろん、学校に属していないけれども、学校教育に関わっている多くの方の意見を重ね合わせながら、子どもたちの成長を願っていくことが、非常に重要だ」と述べ、教育課程の中に、外部専門家や地域住民の役割をきちんと位置付けるべきだとの考えを示した。

あなたへのお薦め

 
特集