知的障害の球児の「甲子園の夢」後押しを 教諭が本出版

 知的障害のある特別支援学校の生徒たちが甲子園を目指す道を作りたい――。今年3月、こうした思いから「甲子園夢プロジェクト」を立ち上げた東京都立青鳥特別支援学校の久保田浩司教諭が、夢の実現への思いをつづった本『甲子園夢プロジェクトの原点』を出版した。久保田教諭は現在、同校で硬式野球の指導にあたり、来年夏の東京の地方大会に連合チームの形で出場したいと挑戦を続ける一方、全国から集まる特別支援学校の野球好きの生徒たちへの指導にも汗を流す。「今回の挑戦を夢物語で終わらせないという意気込みを多くの人に伝え、理解者や支援者を増やしたい」と話している。

出版した本を手にする久保田教諭(右)と指導者の荻野さん

 久保田教諭は、日本体育大の硬式野球部を経て、1988年に都立養護学校の教諭に採用された。長年にわたってソフトボールなどを指導し、東京都養護学校ソフトボール大会で7連覇を達成するとともに、社会人硬式野球クラブチームYBC柏の指導にもあたった。こうした中、知的障害のある生徒らと硬式野球に挑戦して、甲子園への道を目指したいとの思いが強まり、今年3月、「甲子園夢プロジェクト」を立ち上げた。

 反響はすぐ寄せられた。発表当日にニュースを見た愛知県の知的障害のある生徒の母親から「ぜひ参加したい」と連絡があり、翌日には京都から「こういうのを待っとったんです」と地元生徒の父親から熱い思いを聞かされた。同月末に東京で行った練習では、この2人を含む11人の特別支援学校の生徒が全国から集まり、硬式野球のボールを手にした。「びっくりするくらいうまい子がいた。3、4人は普通の高校の野球部で試合に出られるレベルだった」と久保田教諭は振り返る。その後、コロナ禍でグラウンドの確保に苦労しつつ、3回の練習を重ねてきた。

 こうした活動を力強くサポートしているのが、元千葉ロッテマリーンズ投手で、スポーツ指導者の荻野忠寛さんだ。久保田教諭とともに社会人野球の指導にあたったことが縁で練習に加わっている。荻野さんは「野球をしたい子たちが楽しめることこそ、本来のスポーツの姿だと思う。スキルの高い子もいて練習では驚かされた。大人が土俵をつくればプレーできる選手は出てくると思うので、少しでも力になりたい」と話す。

 一方で久保田教諭は、今年4月に着任した青鳥特別支援学校で球技部を立ち上げ、本格的に硬式野球の練習を始めている。「硬式野球をやりたい」と集まった部員は10人。対面のキャッチボールも難しかった生徒もいるが、2、3人は練習を重ねれば地方大会の試合を目指せると久保田教諭は語る。

 「甲子園への第一歩として、東京都高野連への加盟を目指し、来年夏の東京の地方大会に連合チームの形で出場できないか挑戦したい。野球好きの子供たちの夢を何とかかなえてあげたい」

 今回出版された本では、これまでのソフトボール指導や社会人野球クラブチームで悪戦苦闘しながら指導に当たった経験と、甲子園を目指す思いを綴った。久保田教諭は「何年か先には、知的障害の子が普通に甲子園へと挑戦できる姿を目指したい。夢物語に終わらせないという意気込みを多くの方に伝え、理解者や支援者を増やしたい」と話している。

 『甲子園夢プロジェクトの原点』についての問い合わせは、大学教育出版(086-244-1268)へ。

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