衆院解散、総選挙へ 主要6政党の教育政策を比較

 政府は10月14日、臨時閣議を開き、憲法7条に基づく衆院解散を決めた。同日午後に開かれた衆院本会議で大島理森議長が解散詔書を読み上げ、衆院は解散。参院は同時に閉会し、臨時国会は終わった。衆院選は10月19日公示、同31日投開票の日程で行われ、各党は選挙態勢に入った。自民党、公明党、立憲民主党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党の主要6政党が衆院選の公約に掲げる教育政策を比較した。

主要6政党が公約で掲げた主な教育政策
自由民主党

 自民党が10月12日に公表した「政権公約」では、新しい経済の形を生み出す「成長と分配」の好循環を目指すとして、①新型コロナウイルス感染症から国民の命と暮らしを守る着実なワクチン接種など対策強化②「新しい資本主義」による分厚い中間層の再構築③国の基である農林水産業の成長産業化――など8つの重点政策を掲げている。

解散詔書を読み上げる大島理森・衆院議長(衆議院インターネット中継より)

 この中には教育政策も盛り込まれ、「教育は国家の基本」であるとして人材力の強化を強く打ち出し、「誰1人取り残さず、伸びる子はどんどん伸ばす教育」を実現するとともに、家庭や学校、地域社会での豊かな学びの機会を提供するとした。

 具体的な取り組みとして、10兆円規模の大学ファンドを2022年度までに実現し、世界と伍する研究環境を構築して若手研究人材の育成を進めるとともに、魅力ある地方大学の実現などを通して高等教育の質の向上に取り組む。

 また、初等中等教育では「GIGAスクール構想」に基づき、教育分野のデジタル化・リモート化を強く進め、子どもたちの希望や発達段階に応じたオンライン教育の実行を掲げるほか、教師が子どもたちと向き合う時間を増やすため、学校の働き方改革を進める。

 さらに、教育格差の解消に向けて、学習塾などに通えない児童生徒が無料でアクセスして学べる「教育クラウドの作成」も盛り込んだ。

 この他に、幅広い世代を対象に「防災教育」「防犯教育」「食育」への支援や、いじめ・不登校などの問題に真正面から取り組める教育現場の実現、通学路の安全対策の速やかな実施も掲げている。

公明党

 公明党が10月7日に公表した「衆院選重点政策」では、「日本再生へ新たな挑戦。」をスローガンに、コロナ禍で直面した危機からの再生に向けて、感染症から国民の命と暮らしを守るためのワクチン・治療薬の開発や実用化促進をはじめ、デジタル化やグリーン化を通じた日本社会の新たな成長と活力の創出などを掲げる。

 教育政策では「子育て・教育を国家戦略に」と重要政策の柱に位置付け、誰もが安心して子どもを産み育て、十分な教育が受けられる社会づくりに取り組むと強調。具体的には、コロナ禍で大きな影響を受けた子育て世帯への支援として、0歳から高校3年生までの全ての子どもを対象に1人当たり一律10万円相当を支給する「未来応援給付」を行う。

 また、教育の無償化では高校の公私間格差の是正も含めた段階的な拡充や、小学校に続く中学校の35人学級の実現、学校の働き方改革の実現に向けたスクールサポートスタッフの活用などチーム学校の取り組みの推進などを掲げる。

 結婚や妊娠・出産から高等教育までの支援を段階的に充実させる「子育て応援トータルプラン」の策定も打ち出し、出産費用が年々増加傾向にあるとして、出産育児一時金の拡充も盛り込んだ。

 子どもの幸せを最優先する社会を目指すために「子ども家庭庁」(仮称)の創設や「子ども基本法」(仮称)を制定し、子どもを権利の主体として位置付けることを示すとともに、子ども政策に関して独立した立場で調査、勧告などを行う機関として「子どもコミッショナー」(仮称)を設置することも打ち出した。

立憲民主党

 立憲民主党は10月13日に「政権政策2021」を公表。「『1億総中流社会』の復活―分配なくして成長なし」を掲げ、国民の可処分所得を増やすための減税・給付金を実現するとともに、子育てや教育、医療や介護といった「生きていく上で不可欠なベーシック・サービスの充実」を図るとした。財源は「富裕層や超大企業に応分の税負担を求める」という。

 教育政策では、家計の私費負担の割合の高さを問題視。「教育に関係する予算の確保・充実を図り、著しく低い日本の教育への公的負担を大幅に引き上げていく」と、教育予算の拡充を公約。高校の授業料無償化の所得制限の撤廃や義務教育の学校給食の無償化など、教育費負担の軽減を強調した。

 また、中学校の35人学級を実現し、将来的には小中高の30人学級を目指すとした。

 さらに政策集では、教職員の働き方改革に言及。給特法の廃止を含めた見直し、加配教員やスタッフ職の増員、持ち授業時間の上限設定、時間外労働・長時間労働の是正を進めるとした。併せて、さまざまな状況に置かれている子どもとしっかり向き合う時間を確保するための教職員定数の充実、部活動の地域移行などを提言した。

 この他に国公立大学の授業料を半額にまで引き下げることや、私大生・専門学校生への給付型奨学金の拡充、一人暮らしの学生への家賃補助制度などの負担軽減に加え、ヤングケアラーの早期発見と支援体制の構築も盛り込んだ。

日本共産党

 日本共産党が10月11日に公表した「総選挙政策」では、新しい日本のビジョンとして①弱肉強食の新自由主義を終わらせ、国民の命と暮らしを何よりも大切にする政治②気候危機を打開し、地球を守る政治③ジェンダー平等の日本④憲法9条を生かした平和外交――の4つのチェンジをうたう。

 学校教育では、新型コロナウイルスへの対策も踏まえ、数万人から数十万人規模の教職員の緊急増を行い、小中高の全てで将来は20人前後の学級となるよう、少人数学級化を加速させ、学習指導要領の「押し付け」をやめ、子どもたちの実態に応じた柔軟な教育ができるようにし、行事などの自主的活動や遊びも保障するとした。

 新型コロナウイルスへの対応では、都道府県などで医療・教育の連携体制を整備した上で学校で陽性者が出た場合に濃厚接触者以外もPCR検査ができるようにするとともに、職員会議での合意形成を重視し、子どもの意見表明や保護者とのコミュニケーションを大切にする学校の民主的運営を奨励するとした。

 また、教員免許更新制や全国学力・学習状況調査などを取り除き、教育予算をOECD水準に引き上げ、教育費負担の軽減や特別支援学校の課題過密の解消、不登校の子どもへの支援、ICT端末の通信費や高校への公費負担を進める。社会問題となっている校則の在り方についても抜本的に見直し、子どもの尊厳と基本的人権の尊重を基本姿勢とし、憲法や子どもの権利条約を踏まえて、教職員、子ども、保護者が話し合って具体的な見直しを行うことを提言した。

日本維新の会

 日本維新の会は8月に政策提言「維新八策2021」、9月に「日本大改革プラン」を発表。この政策集をベースに、近く公約を示すとしている。「維新八策」では、最低限の生活費を一律給付するベーシックインカムの導入を検討することや、期間を限定した消費税の引き下げで、長期低迷とコロナ禍の打破を目指すことなどが柱となっている。

衆院解散を受けて万歳三唱する議員ら(衆議院インターネット中継より)

 教育については、「OECD加盟国で最下位となっている教育予算の対GDP比を引き上げ、教育への公的支出を他の先進国レベルに向上させる」として、幼児教育から大学までの無償化を目指すとした。
 また、教員に対しては、校務分掌や部活動の見直し、校務の情報化の推進で負担軽減を図るほか、教員免許制度の抜本的な改革で、多様な人材が学校で活躍できるようにするとした。

 併せて、さまざまな制度改革も提言。大学入試では経済・地域格差、障害などに十分に配慮した上で民間試験の導入を目指すとしたほか、「9月入学」の導入を積極的に検討するとした。他にも教育委員会の必置規則や学校設置基準を見直し、多様化を促進するなどの政策を打ち出した。

 さらに、小中学校で必修科目として「ディベート」を設けることや、高校・大学の「飛び級」での進学・入学や必要に応じた十分な留年・再学習を認めること、インターネットの発達などによる児童生徒の性意識・性知識の早熟化に対応するための指導の見直し、主権者教育の充実など、独自の政策を盛り込んだ。

国民民主党

 国民民主党が9月15日に公表した「重点政策」では①「積極財政」に転換②「給料が上がる経済」を実現③「人づくり」こそ国づくり④国民と国土を「危機から守る」⑤「正直な政治」をつらぬく――の5本柱を掲げる。

 このうち③では、「教育国債」を創設し、毎年5兆円ずつを発行。文教・科学技術振興費の対GDP比を倍増させるとした。

 全ての子どもが人生の平等なスタートラインに立つための施策として、0~2歳の幼児教育・保育の無償化に関して所得制限をなくし、義務教育を3歳からとし、高校までの教育を無償化。学校給食や学費以外にかかる副教材、修学旅行などの学年費も無償化にすることで、義務教育課程の金銭負担をなくし、高等教育の授業料減免と返済不要の給付型奨学金の拡充を進めるとした。

 子育て関連では、児童手当については、現行の15歳までとしているのを18歳までに引き上げ、給付額を一律で月1万5000円とし、保育所や学童保育の増設による待機児童の解消と、保育士などの賃金引き上げを掲げた。児童虐待防止では、民法における親の子どもに対する懲戒権の規定を見直し、政府プランよりも児童福祉司を児童相談所ごとに1人増員する。

 また、さまざまな子どもたちがお互いを理解し、共に学べるインクルーシブ教育を推進するとともに、国が責任を持って通学路などでの子どもの安全を確保する「児童通学安全確保法」の制定なども盛り込んだ。

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