【GIGA発進】オンライン授業に自信65% 教育新聞調査

 GIGAスクール構想が今年4月に始動してから半年が過ぎ、教育新聞は、学校現場の1人1台端末の活用状況について、全国の教諭・学校管理職を対象にウェブアンケートを行った。今年10月初めの時点で、緊急時にオンライン授業に対応できるかを聞いたところ、肯定的な答えが65.1%を占めた。昨年12月と今年4月のアンケート結果と比較すると、肯定的な答えは着実に増えている。新型コロナウイルス感染症の第5波への対応では、ICTを活用した学びの保障を実施または準備した割合が77.1%になり、実績も積み上げられていることが分かった。ただ、校種別にみると、1人1台端末が配布された小中学校に比べ、高校ではオンライン授業に自信のある教員とない教員に二極化している。さまざまな課題が残されているものの、回答した教員のほぼ3分の2がオンライン授業の実施に自信を持ち、実践の経験を重ねながら、GIGAスクール構想が本格的に発進し始めている姿が浮かび上がってきた。

肯定的な回答、ほぼ3分の2に増加 

 アンケートは10月1日から7日まで、教育新聞のウェブサイトやメールマガジン、公式SNSなどで、小中学校、高校、特別支援学校などの教諭・学校管理職を対象に協力を呼び掛けて実施した。有効回答は475人。内訳は、GIGAスクール構想で1人1台端末整備の対象となった義務教育段階の教諭・学校管理職が381人、高校段階の教諭・学校管理職が94人だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害などで再び休校になった場合、同時双方向型などのオンライン授業に対応できるかを聞いたところ、「十分にできる」「まあできる」を合わせた肯定的な答えが65.1%、「どちらともいえない」が16.2%、「あまりできない」「ほとんどできない」を合わせた否定的な答えが18.7%だった。

グラフ1=オンライン授業への自信の推移

 教育新聞では、昨年12月と今年4月に実施した教員向けのウェブアンケートでも同様の質問を行っている(昨年12月は教育行政職も対象)。それらの結果を今回の回答と比較すると、肯定的な回答は昨年12月に50.3%、今年4月に54.4%だったので、回数を重ねるたびに着実に増え、今回初めて6割を超えてほぼ3分の2に達した。否定的な答えは昨年12月に34.3%、今年4月に23.1%と減り、今回は2割を切った=グラフ1参照

 オンライン授業に自信を持つ教員が増えていることは、肯定的な答えの内訳を見ても明らかだ。再び休校になったとき、オンライン授業による対応を「十分にできる」にできると答えた教員は昨年12月に15.9%、今年4月に16.2%、今回は19.4%と右肩上がりに増えている。

第5波への対応、ICT活用の自信に

 こうした教員たちの自信を支える背景には、今年7月から9月にかけた新型コロナウイルス感染症の第5波に対する学校現場の対応が、おおむね円滑に進んだことが一つの要因になっているようだ。文科省によると、第5波では、児童生徒の感染者数は、7月に6230人だったが、8月には3万1482人と激増。4回目の緊急事態宣言が出される中、感染拡大地域の学校現場では夏休みの延長や分散登校などを迫られ、オンライン授業が活用された。こうした対応もあって、9月の感染者数は9619人にまで減少している。

グラフ2=第5波におけるICT対応状況

 今回のアンケートでは、この第5波が猛威を振るう中、ICTを活用した健康観察や連絡、学びの保障の取り組みを実施したかを全ての回答者に聞いた。その結果、「2回以上実施した」55.4%、「1回のみ実施した」7.8%、「準備のみ」13.9%、「実施していない」21.1%、「その他」1.9%--との回答を得た=グラフ2参照。実施と準備を合わせると、緊急時という条件付きながら、教員の77.1%が何らかの形でICTでの対応が可能な状態になっていたことが分かる。

 これは学校現場の4分の3以上で、ICT機器がいつでも使える道具として機能し始めたことを示唆しており、緊急時のオンライン授業に対する教員たちの自信にもつながっているとみられる。健康観察や連絡よりも一段とハードルの高い、同時双方向型オンライン授業を実施・準備したと回答した者も、全体の44.6%に上った。

 アンケートの自由回答欄に書き込まれた声を読むと、この半年間で試行錯誤を続けながらICT活用に自信をつけてきた学校現場の息づかいが伝わってくる。

 「端末の常時持ち帰りや授業のリアルタイム配信、他の先生方の利用が促進されるなど、私が勤務している学校では大きく前進が見られた半年だった。何よりも管理職の理解が進んだことが要因(管理職次第なのもいかがなものか)。市から校務用に提供されているパソコンと1人1台端末のネットワークやセキュリティーが異なるせいで、教師側の事前の準備に時間がかかり、1人1台端末で行った評価を校務用のパソコンに読み込みできないなどが問題だと感じている。また、生徒には1人1台端末が配布されたが、教師用は準備されていない」(東北/公立中教諭・30代)

 「現場の負担感は大きいが、使っていく必要性を感じている。子供はどんどん使いこなしていくため、大きな壁を感じているのは教職員サイド。積極的な活用に対して、ブレーキをかける声も多く聞かれる。活用方法やどのように使うことが効果的なのか、まだ手探り状態である。使う中から学んでいく。新しいことや未知なることに挑戦し続けるのは私たち教員であると日々感じている」(甲信越/公立中管理職・50代)

高校の教員は自信のあるなしで二極化

 ただ、残された課題も多い。その一つが高校でのICT対応の遅れだ。今回のアンケートでは、緊急時のオンライン授業への対応について、小中学校などの義務教育段階と高校段階に分けてクロス集計を行った。その結果によると、高校の教員は、小中学校の教員に比べ、オンライン授業に自信がある人と自信がない人に二極化している現状が読み取れる。

グラフ3=オンライン授業を巡る義務教育段階と高校段階の比較

 義務教育段階の教員では「十分にできる」18.1%、「まあできる」48.8%に対し、「あまりできない」10.8%、「ほとんどできない」6.3%だった。これに対して、高校段階での教員では、「十分にできる」24.5%、「まあできる」33.0%に対し、「あまりできない」13.8%、「ほとんどできない」11.7%だった。高校の教員は、小中学校の教員に比べて、「十分にできる」が6.4ポイント高い一方、「ほとんどできない」も5.4ポイント高い=グラフ3参照。つまり、オンライン授業に自信がある人も自信がない人も、どちらも高校の教員は小中学校の教員よりも割合が高い。

 なぜ高校の教員が二極化しているのか。今回の結果から明解な説明は見つからないが、背景として見逃せないのは、高校では、小中学校に比べ、1人1台端末の整備が進んでいない学校が多いことだ。今回のアンケートでは、義務教育段階・高校段階のそれぞれで、1人1台端末の整備状況を聞いた。それによると、小中学校では、今年9月までに整備されたと答えた教員が90.0%を占めた。一方、高校では「すでに実現している」25.5%、「まだ実現していないが、予定がある」41.5%、「まだ実現しておらず、予定もない」20.2%、「その他」12.8%--だった。

 今回の回答者を見ると、高校では、1人1台端末を使える環境で授業ができている教員は、4人に1人しかいないことを意味している。1人1台端末が整備されないまま、教員がオンライン授業への自信を深めることは難しいだろう。自由回答欄にも「外部の専門家の助けが必要。今の状況だと特に情報担当の職員の負担がとても大きい。端末の配布のみで、後は現場に丸投げされているように感じる」(九州・沖縄/公立高教諭・30代)、「教員個人の研さんに委ねられているところがあり、全体的な推進には障壁が大きい。ICT活用の苦手な教員へのサポートが十分になされていない」(東京都内/公立高教諭・30代)と、ICT活用に苦心する学校現場の声が数多く寄せられた。

高校のICT環境整備、目立つばらつき

 今回のアンケートでは、高校での1人1台端末の整備は、自治体や学校によるばらつきが大きいことも示唆されている。1人1台端末の導入に伴う費用を誰が負担するかについて、「すでに実現している」または「まだ実現していないが、予定がある」と答えた高校段階の教員63人に聞いたところ、「教育委員会・学校設置者」30.2%、「保護者(BYOD:機種を問わず個人の端末を活用)」15.9%、「保護者(CYOD:学校が指定した機種の中から保護者が購入)」49.2%、「わからない」3.2%、「その他」1.6%--となった。

 1人1台端末の整備は、義務教育段階の小中学校では、コロナ対策として国が多くの費用を負担した上で、学校設置者である自治体に対して、文科省が繰り返し導入を促し、進捗(しんちょく)状況を何度もチェックした結果、一気に進んだ。これに対し、高校では、資金の使途を限定しない地方財政措置として国が費用の一部を負担しているが、端末整備のスピードや費用負担の方法などは学校設置者である都道府県などの判断に任されている。

 こうした背景を踏まえて今回のアンケート結果を見ると、今年10月初めの段階で、回答した高校教員の5人に1人が、1人1台端末を配備する見通しが立たないと答えている現実は重い。すでに実現しているか配備の予定がある場合でも、費用負担の方法は保護者負担の在り方、困窮世帯への対応を含めて、自治体間や学校間でばらばらになっている実態がうかがえる。高校のICT環境整備については、国の関わり方を含め、各自治体・学校のリーダーシップが改めて問われていると言えそうだ。

 今回のウェブアンケートは今年10月1日(金)~7日(木)に、教育新聞の購読者のほか、教育新聞の公式SNSなどで回答を募り、全国の小学校・中学校・義務教育学校・高校・中等教育学校・特別支援学校の教諭・学校管理職475人から有効回答を得た。
 
 アンケート回答者の基本属性は次の通り。
 
 【学校種】小学校47.4%、中学校27.6%、義務教育学校1.5%、高校17.1%、中等教育学校・中高一貫校2.1%、特別支援学校4.4%
 
 【学校設置者】国立4.0%、公立85.9%、私立10.1%
 
 【職位】教諭87.2%、学校管理職12.8%
 
 【学校所在地】北海道4.8%、東北5.9%、北関東5.3%、東京都内22.1%、南関東17.5%、甲信越4.4%、北陸0.4%、東海13.5%、近畿11.6%、中国5.5%、四国1.1%、九州・沖縄8.0%
 
 【性別】男性57.9%、女性40.0%、その他・答えたくない2.1%
 
 【年代】20代21.5%、30代30.5%、40代29.3%、50代16.4%、60歳以上2.3%

あなたへのお薦め

 
特集