【GIGA発進】端末持ち帰り許可83%に急上昇 教育新聞調査

 GIGAスクール構想の進展状況について、教育新聞が全国の教諭・学校管理職を対象に行ったウェブアンケートで、児童生徒に1人1台端末の自宅への持ち帰りを「許可している」あるいは「許可する予定である」と答えた割合は、今年10月上旬時点で83.4%になったことが分かった。今年4月時点では同様の答えの割合は44.5%だったので、1人1台端末がほとんどの学校現場に配備されてから半年間がたち、端末の持ち帰りを巡る学校現場の意識改革が一気に進んだことがうかがえる。端末の持ち帰りを認めている学校では、教員がオンライン授業に自信を持つ傾向がある一方、自由回答欄には「各家庭への支援が必要」と指摘する声が数多く寄せられた。

持ち帰り不許可13.7%に減少

 小中学校など義務教育段階で、端末整備が完了している学校の教諭・学校管理職に対して、児童生徒に1人1台端末の自宅への持ち帰りを許可しているか聞いたところ、「許可している」59.8%、「許可する予定である」23.6%、「許可していない・しない予定である」13.7%、「わからない」2.9%だった。「許可している」と「許可する予定である」を合わせると、83.4%が端末の持ち帰りを前提にICT活用に取り組んでいることが分かる。

 端末の持ち帰りを巡る学校現場の姿勢は、全国の小中学校などに1人1台端末が整備され、GIGAスクール構想が本格的にスタートした今年4月段階では、まったく違っていた。

 文科省は、家庭への端末持ち帰りをGIGAスクール構想によるICT活用の前提に置き、今年3月12日には「非常時における児童生徒の学びの保障の観点からも、端末を持ち帰り、自宅等での学習においてもICTを活用することは有効である」と都道府県などに通知。本格運用に先立つチェックリストでも、端末持ち帰りについて「ルールを明確に作成し、共有されているか」との項目を挙げ、学校現場に対応を求めてきた。

グラフ1=1人1台端末の持ち帰りを許可している割合

 しかし、教育新聞が今年4月に行ったアンケートでは、端末の持ち帰りを「許可している・する予定である」との回答は44.5%で、半数に満たなかった。この時点で、端末の持ち帰りを禁止する理由を聞いたところ、回答者の過半数が「使用ルールが確立していないから」と、「紛失・破損の恐れがあるから」の2項目を挙げており、家庭への端末持ち帰りに不安を感じ、1人1台端末の運用方法に頭を悩ませる学校現場の姿が伝わってきた。

 こうした学校現場の不安や準備不足は、1人1台端末を実際に使い始めることで徐々に解消されていったようだ。文科省が8月末に公表した公立小中学校における端末の利活用実態の調査結果(速報値)によると、7月末時点で端末の持ち帰りは、非常時には「実施できるよう準備済み」64.3%、「準備中」31.9%で、平常時では「実施している」が25.3%にとどまり、「準備中」が51.0%、「実施・準備をしていない」が23.7%だった。

 10月初旬に行った今回のアンケートでは、端末の持ち帰りを「許可している」「許可する予定である」の合計は83.4%となり、ついに8割を超えた。端末の持ち帰りを巡る学校現場の意識改革は、半年間をかけて一気に進んでいったことが読み取れる。

オンライン授業への教員の自信と関連も
グラフ2=端末の持ち帰りとオンライン授業への自信

 今回のアンケートでは、家庭への端末の持ち帰りは、オンライン授業に対する教員たちの自信と関連があることも分かった。端末持ち帰りの許可について聞いた回答と、緊急時にオンライン授業に対応できるかを聞いた回答をクロス集計したところ、端末の持ち帰りを許可していると答えた回答者には、緊急時のオンライン授業への対応について「十分にできると思う」「まあできると思う」と自信を示した人の割合が高かった=グラフ2参照

 それによると、端末の持ち帰りを「許可している」と回答した教諭・学校管理職では、緊急時のオンライン授業への対応について「十分にできると思う」「まあできると思う」と自信を示した回答の割合が合わせて78.5%だった。これに対して、端末の持ち帰りを「許可する予定である」とした回答者では、自信を示した回答の割合は合わせて61.7%だった。さらに端末の持ち帰りを「許可していない」「許可しない予定である」「わからない」とした回答者では、自信を示した回答の割合は合わせて50.9%まで下がった。

 この結果は、家庭への端末の持ち帰りが許可されている学校環境に置かれている教員は、緊急時にはすぐに対面授業をオンライン授業に切り替える自信を持っていることを示唆している。

 アンケートの自由回答欄には、新型コロナウイルス感染拡大の第5波で、2学期の当初からオンラインによる家庭学習の実施を迫られ、それが教員にとっても好結果につながったという体験談が寄せられた。

 「1学期からタブレット活用を学校全体で推し進めてきた。ICT活用に堪能な教員がリーダー的な働きをし、校内の教員に情報発信をしてきたことが前向きな雰囲気をつくってくれた。また、9月当初、児童生徒の年代のコロナ感染者が増加していたため、市教委から約2週間のオンライン学習を含む家庭学習を実施する指示が出た。Zoomによる朝の会や双方向の授業をやらざるを得なくなった状況が、一気に教員のスキルをあげることになったと考えている」(東海/公立小管理職・50代)

 こうしてオンライン授業に自信をつけた教員は、平時の対面授業でもICTを効果的に使いこなしていけるのではないだろうか。家庭への端末の持ち帰りは、児童生徒の個別最適な学びを支えるだけでなく、一人一人の教員にとってもICT活用のスキルを磨き、自信を深めていくために重要な意味合いを持つと言えそうだ。

家庭の通信環境 自治体任せは「難しい」
グラフ3=端末持ち帰りが不許可となっている理由(複数回答)

 しかしながら、家庭への端末持ち帰りを巡る課題は、全て解消されたわけではない。端末の持ち帰りが不許可(予定含む)であると答えた教諭・学校管理職47人に、不許可の理由を聞いたところ、「紛失・破損のおそれがあるから」(21人)、「使用ルールが確立していないから」(18人)、「通信環境が確保できないから」(18人)が上位を占めた。続いて「不適切なウェブサイトにアクセスするおそれがあるから」(12人)、「不適切なアプリ(ゲームなど)を使うおそれがあるから」(10人)、「家庭で使う必要がないから」(10人)、「教委が許可していないから」(7人)――が挙がった。

 アンケートの自由回答欄では、「家庭の通信環境」「家庭の格差と支援」「一部の自治体における対応の遅れ」などが目立った。

 家庭の通信環境については、「家庭のICT環境の整備も必要」(四国/公立小管理職・50代)、「家庭での通信環境が整っていない場合が多く、各家庭への支援が必要だと感じる」(北関東/公立高校教諭・20代)と、学校種を問わず、懸念する声が上がった。

 現在の行政組織の仕組みでは、家庭の通信環境は地方自治の原則に基づいて公立学校の設置者である自治体が対応することになっており、通信環境が不十分な低所得世帯にLTE機器を貸与するなど、一部の費用については国が2020年度第1次・第3次補正予算に計上し、使い道を限定しない地方財政措置としてすでに自治体に交付されている。

 こうした自治体任せの対応について、自由回答欄には「家庭での通信環境の確立のためにもモバイルルーターなどの配置を全国的に進めてもらえればと思う。自治体レベルでは難しいのが実態」(北海道/公立小教諭・50代)と、限界を訴える指摘もあった。

 学教教育の基盤整備を巡る国と地方の問題について、GIGAスクール構想を積極的に推進した萩生田光一前文科相は10月4日の離任会見で、「誤解を恐れず申し上げると、地方財政措置ではなく、義務教育に必要な経費は、国が責任を持ってダイレクトに補助をしていくことをしないと、今回のGIGAスクール構想のようなものは進まないのではないか。子供たちは声を上げることができないわけだから、令和時代の学校のスタンダードを決めたら、そこまで国が(地方に)伴走してあげるような仕組みを作っていく必要がある」と指摘した。家庭の通信環境も、そうした課題の一つとして積み残されている。

「家庭の支援が少ない児童 生活習慣の乱れが悪化」

 自由回答欄には、家庭による格差とそれに対する支援について、学校現場の実感を込めた指摘も数多く寄せられた。

 「個別の学習が進み、連絡も配信で非常に楽になった。欠席した子への連絡等も、写真等が送れて便利である。また、小1の子供たちが自発的に調べたいことをさっと調べるようになり始めていることも驚きである。一方で、家庭の支援が少ない児童は、夜中までずっと端末を使い動画を見ることなどによる生活習慣の乱れが悪化している。ますます、家庭での教育格差が浮き彫りとなる気がしている」(東京都内/公立小教諭・30代)

 「1人1台端末を配布しても、家庭でパソコンに向かわない児童生徒がたくさんいる。本当に今後、GIGAスクール構想が思惑通りに進んでいけるのか疑問視している」(九州・沖縄/公立小教諭・40代)

 「端末の活用に関わる昨今のいじめ事件を聞くにつれ、教師が規制をかけたりコントロールしたりするのは限界があるのではないかと感じる。家庭、地域への啓蒙をはじめ、さらには国でもう少し議論し、関連法など必要な法整備を進めてほしい。安心して使わせられる枠組みを期待している」(東京都内/公立小教諭・40代)

 「家庭支援を学校が担うことに多大な負担が掛かる」(北海道/公立特別支援学校(高等部)管理職・50代)

 8月末に結果が公表された今年度の全国学力・学習状況調査では、昨年4月から全国の小中学校で続いた長期休校の期間中、学校からの課題で分からないことがあったときには、小学生は家族に聞き、中学生は自分で調べることが多かったことが明らかになり、休校期間中の学びが家庭環境や本人の学習姿勢に左右されていたことが分かった。1人1台端末の家庭への持ち帰りによって、学校教育と家庭教育の結び付きが強まれば、家庭環境の違いが子供たちの学びに反映される度合いが大きくなることも考えられる。

 自由回答欄に書き込まれた言葉を読んでいくと、端末の持ち帰りを巡る学校と家庭の板挟みに合いながら、子供たちに向き合おうとする教員の姿が浮かんでくる。

 また、端末の持ち帰りについては、一部の自治体で教育委員会の対応の遅れを示唆する指摘もあった。端末の持ち帰りが不許可となっている理由として「教委が許可していないから」と答えた回答者が7人いたことに加え、自由回答欄にも「市教委の指示のもと、本校では端末の持ち帰りを禁止しているため、データでやりとりすると生徒の手元に授業の内容が残らない。なので、従来の紙媒体での配布にならざるを得ない」(北海道/公立中教諭・30代)と、批判的な声が寄せられた。

今回のウェブアンケートは今年10月1~7日に、教育新聞の購読者のほか、教育新聞の公式SNSなどで回答を募り、全国の小学校・中学校・義務教育学校・高校・中等教育学校・特別支援学校の教諭・学校管理職475人から有効回答を得た。
アンケート回答者の基本属性は次の通り。
【学校種】小学校47.4%、中学校27.6%、義務教育学校1.5%、高校17.1%、中等教育学校・中高一貫校2.1%、特別支援学校4.4%
【学校設置者】国立4.0%、公立85.9%、私立10.1%
【職位】教諭87.2%、学校管理職12.8%
【学校所在地】北海道4.8%、東北5.9%、北関東5.3%、東京都内22.1%、南関東17.5%、甲信越4.4%、北陸0.4%、東海13.5%、近畿11.6%、中国5.5%、四国1.1%、九州・沖縄8.0%
【性別】男性57.9%、女性40.0%、その他・答えたくない2.1%
【年代】20代21.5%、30代30.5%、40代29.3%、50代16.4%、60歳以上2.3% 

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