【GIGA発進】導入時の負担「スキル修得」最多 教育新聞調査

 GIGAスクール端末が整備された小中学校などの教諭・学校管理職343人に、教育新聞がアンケートを行ったところ、導入時に特に負担を感じたのは「教員のスキル修得」「児童生徒への指導」だった。特に多くの教員を悩ませた「教員のスキル修得」については、校内研修や日々の教え合いなど、教員同士の学び合いの機会がある教員では、大きな負担を感じる割合が少なく、こうした学び合いが負担感を軽減している可能性がうかがえた。一方で、日々の業務過多や人員不足、教員間の温度差などがネックとなり、学び合う機会を十分に持てない現場の悲鳴も後を絶たなかった。先進的な実践を重ねる学校が脚光を浴びる一方で、日々の負担から、行き詰まりを感じている教員も少なくない現実が垣間見えた。

2大負担は「教員のスキル」と「児童生徒への指導」

 アンケートでは義務教育段階の教諭と管理職に、GIGA端末導入時に負担を感じたものについて質問した=グラフ1参照。その結果、「大いに負担があった」「まあ負担があった」と回答した割合が高かったのは順に、「教員のスキル修得」(73.4%)、次いで「児童生徒への指導」(69.7%)だった。以下「端末の初期設定」(59.8%)、「アカウント・パスワードの配布」(57.1%)、「保護者への対応」(52.2%)と続き、いずれの場面でも、負担を感じた教員の割合が半数を超えた。

グラフ1=端末導入時に感じた負担感の比率

 とりわけ負担感の大きかった「教員のスキル修得」については、自由記述で「教職員の意識の差が大きく、なかなか学校として進んでいかない」(甲信越/公立中教諭・30代)、「教員によっての能力や意欲の差があり、学年で差が出ている」(東京都/公立小管理職・50代)、「教員の年齢などによりICT活用のための知識に差があることで、学級によってICT活用の頻度が異なってきてしまうことが課題だと感じる」(南関東/公立小教諭・20代)など、本格始動から半年がたってもなお、教員間のモチベーションや意識のばらつきを指摘する声が相次いだ。すでに、学校や学級により学びに格差が生まれているとの報告もあった。

 次いで負担を感じる割合が高かった「児童生徒への指導」については、「課題のある児童は、ICT活用に関しても指導することが多い。精神的な発達が、ICTの使用にも大きく関わる」(東京都/公立小教諭・30代)、「低学年の児童にとってはログインのパスワード入力からして大きな障壁となっている。平仮名も習い途中の1年生に、ローマ字の小文字や記号を入力してログインしろとは、あまりにも酷な話だと思う」(南関東/公立小教諭・20代)など、児童生徒の発達段階や習熟度によって、きめ細かな指導が求められる実情に頭を抱える教員の姿が見られた。

 他にも、「保護者への対応」について「家庭の教育力が著しく低下している本県では、自分たちにとって都合の悪いことを学校が教えてくれるとする保護者が大多数」(中国/公立小教諭・30代)、「情報モラルの指導をどれだけやっても心配なこと、また、保護者の関心と保護者の情報モラルの格差と、その是正(が課題である)」(東海/公立小管理職・50代)など、保護者と連携してICTを利活用することへの難しさを語る声が目立った。

教員同士の学び合いは負担軽減の鍵か

 教育新聞は、多くの学校現場を悩ませた「教員のスキル修得」の負担感の背景にあるものを探った。すると、負担感が「大いにある」の割合に差がついたのは、教員間で学び合う機会があるか、ないかという違いだった。

 教員間で学び合う機会が「あまりない・ほとんどない」と答えた人では、教員のスキル修得の負担感が「大いにある」と回答した人が47.2%と高くなっていた=グラフ2参照。特に、学び合いの機会が「大いにある」と答えたグループと比べると、21.6ポイントの差があった。ここでは、教員同士で気軽に学び合える空気感が、教員一人一人の端末活用を後押ししている可能性がうかがえた。

グラフ2=学び合う機会の有無別に見た、教員のスキル修得への負担感

 自由記述では、「子どもはどんどん使いこなしていくため、大きな壁を感じているのは教職サイド。積極的な活用に対して、ブレーキをかける声も多く聞かれる」(甲信越/公立中管理職・50代)、「教員によりスキルに個人差がある。にもかかわらず担任によって『差が出ないように』と、できない人に合わせて使える機能を使わないようにしてしまう教員文化がある」(東京都/公立小教諭・30代)など、教員間の温度差を課題に感じつつも、学校特有の文化が教員一人一人の活用にブレーキをかけている実態も浮かび上がってきた。

 アンケートの回答者は、自身と周りの温度差をどのように捉えているのだろうか。回答者自身の端末の活用状況と、所属する学校で日常的に端末を活用している教員の割合について比較した=グラフ3参照

グラフ3=回答者本人の端末活用頻度(上)と、所属校で日常的に活用している教員の比率(下)の集計結果

 今回のアンケートの回答者では、「ほぼ毎日活用している」との回答が49.9%と半数に迫り、日常的に利用している教員が多かった。一方、所属校で日常的に活用している教員の割合を尋ねたところ、「9割以上」は24.8%にとどまり、必ずしも学校全体で取り組めていないことが分かった。

教員間の温度差や業務過多がなお課題

 そこで、回答者自身が「ほぼ毎日活用」している一方、所属校で日常的に活用している教員が「5~6割以下」と回答した人の自由記述を見てみると、教員間の意識のギャップのせいで、校内で思うように端末の活用を進められないというもどかしさを訴える声が目立った。

 「やる人はやる、やらない人はやらないという指導者による差が課題。今年中はよくとも、来年、再来年と続くと差が大きくなる」(九州・沖縄/公立小教諭・30代)、「本県では、タブレット端末の準備等が全て教頭の役割として位置付けられている。自分は多少、理解できるものの、全く理解できない管理職が大勢いることにより、他地域のように、双方向オンライン授業などの取り組みがいつになるか大変不安である」(東海/公立小管理職・50代)など、同僚や管理職のスキル不足に対する危機感や、教員間の能力差が今後、さらに広がる不安も指摘された。

 一方で日々の業務過多や、人員の確保が難しく、学び合いの機会を持てていないケースも目立った。南関東の公立中の30代教諭は、「公立中学校では研修機会が少なく、教員間でのICT活用に個人差が大きく出ている。ICT支援員も週1で常駐しており、研修会も夏休みに2回ほど行っていただいた。しかし中学校現場は多忙を極めており、実際に使っている授業を互いに参観し合い、情報共有し合う機会を持つことは極めて難しい。授業の空きコマもほとんどないため、支援員に相談をする時間がとれないのが実情である」と、多忙な業務の合間に研修を設ける難しさや、ICT支援員を活用しきれないほどひっ迫している学校現場の状況を吐露した。

 他にも「機械操作に抵抗のある職員は少なくない。困った時に的確なサポートができる人員は限られているので、情報発信や研修は必要。しかし多忙感の中で新たな取り組みが増えること自体が負担であることは間違いなく、ICTのことだけで語れる問題ではない」(北海道/公立小教諭・50代)と、全体的な業務改善を訴える声もあった。

 さらに「教員や学校への丸投げ感が拭えない。できるだけ、低スキルの先生のフォローに入るようにはしているが、授業のない時間が少ないので、フォローと言っても限界があるが、月に3回のペースでしか来てくれないICT支援員にも、なかなか頼れない。同じシステムや機器を導入している市内で、さまざまなデータ、指導案や資料などを共有して、皆が自由に使えるようにすれば、もっと有効な教育効果が得られると思う」」(四国/公立小教諭・40代)など、煩雑を極める業務と限られた人員の中で必死にやりくりしつつ、解決策を模索している実態がうかがえた。

今回のウェブアンケートは今年10月1~7日に、教育新聞の購読者のほか、教育新聞の公式SNSなどで回答を募り、全国の小学校・中学校・義務教育学校・高校・中等教育学校・特別支援学校の教諭・学校管理職475人から有効回答を得た。

 アンケート回答者の基本属性は次の通り。

 【学校種】小学校47.4%、中学校27.6%、義務教育学校1.5%、高校17.1%、中等教育学校・中高一貫校2.1%、特別支援学校4.4%

 【学校設置者】国立4.0%、公立85.9%、私立10.1%

 【職位】教諭87.2%、学校管理職12.8%

 【学校所在地】北海道4.8%、東北5.9%、北関東5.3%、東京都内22.1%、南関東17.5%、甲信越4.4%、北陸0.4%、東海13.5%、近畿11.6%、中国5.5%、四国1.1%、九州・沖縄8.0%

 【性別】男性57.9%、女性40.0%、その他・答えたくない2.1%

 【年代】20代21.5%、30代30.5%、40代29.3%、50代16.4%、60歳以上2.3%

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