過密解消へ実効性ある設置基準を 特別支援学校の保護者ら集会

 文科省が今年9月に公布した特別支援学校の設置基準を巡って、特別支援学校に通う児童生徒の保護者や教職員らでつくる「障害児学校の設置基準策定を求め、豊かな障害児教育の実現をめざす会」(佐久美順子会長)が10月23日、都内で集会を開いた。この中で、10年間にわたって要望を続けてきた特別支援学校の設置基準が制定されたことは大きな前進としながらも、「学校の児童生徒数の上限規定が設けられない上、既存校には努力義務とされるなど、過密化の解消に向けて課題が多い」などとして、今後も実効性のある設置基準への改善を求める署名活動を続ける方針を確認した。

オンラインも併用して開かれた集会

 特別支援学校を巡っては、在籍児童生徒の増加で慢性的に教室不足が続く中、文科省が今年9月、教育環境の改善に向けて、特別支援学校が備えるべき施設や校舎の面積などの最低基準を定めた設置基準案を制定した。この中では、▽視覚▽聴覚▽知的▽肢体不自由▽病弱――の5つの障害種ごとに、校舎面積の算定式や幼稚部、小学部、中学部・高等部ごとの運動場面積の算定式を定め、普通教室・特別教室以外に図書室や体育館などを備えることも明記した。

 同会は10年間にわたって設置基準の策定を求める活動を続けてきており、今回の設置基準が実効性のあるものになっているか分析するとともに、今後の運動の方向性を検討しようとオンラインも交えて集会を開き、全国各地から特別支援学校に通う児童生徒の保護者や教職員ら100人以上が参加した。

 集会では、担当者が活動の経過や今後の運動方針などを説明し、設置基準の制定の意義について、「保護者と教職員などによる10年間にわたる粘り強い運動によって、困難なことも実現できることが確かめられた。現在は図書館などのない学校も多いが、新設される学校ではほぼ整備されることになる。今後、環境改善を求める上で最低基準ができたことの意義は大きい」と述べた。一方で、同会が要求しながら設置基準に盛り込まれなかった課題として、▽学校の児童生徒数の上限規定が設けられていない▽通学時間を1時間以内とする要望が盛り込まれていない▽既存校の基準の適用が「努力義務」にとどまっている――などがあるとして、今後も設置基準の改善を求める署名活動などを続けることが必要だと強調した。
 続いて、全国各地の保護者や教職員が現在の活動状況と課題などについて意見を述べた。大阪府の母親は「息子が通う学校は在籍者が300人に増え、通学バスの乗車時間も70分と長く、負担を感じている。設置基準はうれしいが不安があり、現在は新校設置に向けた活動を続けている」と語った。

 神奈川県湯河原町の母親は「息子が16キロ離れた小田原市の養護学校に通っていたときは、災害時に高波や土砂崩れで迎えに行けないのではと不安を抱えていたが、地元に分教室ができて息子の生活リズムも整い、安心できるようになった。10年以上も前から誘致運動を始めたお母さん方に感謝するとともに、次の子供たちのために引き続き改善活動に取り組みたい」と語った。

 滋賀県の男性教員は「設置基準制定の趣旨に教室不足解消があるのに、既存校に当てはめないのなら、何のための基準なのかと思う。今は子供たちが何かをしたいと言ってきても『ちょっと待って』と答えて、すぐ対応できないことが多い。子供には十分な施設整備が必要であり、子供の目線から実態に合ったものにしなければならない」と、今後も活動を続けることの重要性を訴えた。

 最後に佐久美会長は「設置基準ができたことで今後の活動の新しい足場になった。最低限の基準があるからこそ今後の武器になり、これを肉付けするのは私たちの意見だ。子供たちが安心できる学校をつくるためにも、まだまだ活動を続けないといけない」と締めくくった。

 特別支援学校の設置基準は一部を除き来年度から施行される。文科省によると、特別支援学校の教室は児童生徒数の増加などで、間仕切りを設けて2つに分割したり、特別教室を転用したりして対応しているケースも多く、2019年5月1日時点で、全国で3162教室が不足していたことが明らかとなっている。同省は、設置基準と同時に出した全国への通知で、既存校についても「可能な限り速やかに設置基準を満たすよう努めること」と対応を促している。

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