【GIGA発進】新しい学びに7割が手応え 教育新聞調査

 GIGAスクール端末が整備された小中学校などの教諭・学校管理職343人に、学習での活用の進展状況について教育新聞がアンケートを行ったところ、個人の特性や習熟度に合わせた学びや、児童生徒同士の協働的な学び、探究的な学びといった、新しい学びができているかについては、「そう思う」「まあそう思う」と答えた割合がそれぞれ7割ほどに上り、手応えを感じている教員が多いことが分かった。とりわけ端末の活用頻度が高い教員では「個人の特性や習熟度に合わせた学び」、授業に必要な機能を制限なく利用できている教員では「児童生徒同士の協働的な学び」や「探究的な学び」ができていると感じるとの回答が多かった。授業などでの利活用が進み、新しい学びへも意欲的に挑戦する教員が増える一方で、自由回答では「使うことが目的化している」との声も目立った。今一度、何のためにICTを活用するのかという目的を見失わないよう、実践を振り返る必要もありそうだ。

新しい学びに手応えを感じている教員は7割

 ウェブアンケートでは、GIGAスクール構想で1人1台端末が整備された義務教育段階の教諭と管理職に、個人の特性や習熟度に合わせた学び、児童生徒同士の協働的な学び、探究的な学びができていると感じるかを質問した。

グラフ1:新しい学びができているか

 その結果、個人の特性や習熟度に合わせた学びについては、「そう思う」「まあそう思う」を合わせた肯定的な答えが68.5%、児童生徒同士の協働的な学びについては76.4%、探究的な学びについては78.1%と、いずれにおいても手応えを感じている教員が7割ほどに上った=グラフ1参照

活用頻度が高いほど、個人の特性や習熟度に合わせた学びを実感
グラフ2:端末の使用頻度別に見た、個人の特性や習熟度に合わせた学びの実感

 今回のアンケートでは、個人の特性や習熟度に合わせた学びができているかは、端末の活用頻度と関連があることもうかがえた。個人の特性や習熟度に合わせた学びについて聞いた回答と、活用頻度について聞いた回答をクロス集計したところ、活用頻度が高いほど、個人の特性や習熟度に合わせた学びができているかについて「そう思う」「まあそう思う」と答えた人の割合が高かった=グラフ2参照

 端末を「ほぼ毎日活用している」と回答した教諭・学校管理職では、個人の特性や習熟度に合わせた学びができているかについて「そう思う」「まあそう思う」を合わせた肯定的な答えが77.2%と高く、続いて同様に、「週3〜4回活用している」では67.2%、「週1〜2回活用している」では57.4%、「それ以下の頻度で活用している・その他」では53.2%だった。

 実際に活用頻度が高い学校では、教員の指示がなくても児童生徒らが自ら判断し、端末を活用している姿がよく見られる。また、デジタル教材を活用している学校では、宿題などについても、これまでのように全員同じものを出すのではなく、児童生徒の習熟によって必要なものをやるように指導しているという教員の話も聞くようになってきた。

 アンケートの自由回答には、「学びの個別化、個性化を図る上でとても有用である。また、データベースとしても活用できるため、追究的な課題に取り組むことができ、授業の内容が深くなった」(東海/公立中教諭・20代)と前向きな体験談も寄せられた。一方で、教員間の意識の差はまだまだ大きいようで、「個別最適化、不登校生徒へのICTの活用に、現場の教員の理解が進まない」(都内/公立中教諭・40代)といった声も聞かれた。

機能制限がないほど協働的、探究的な学びを実感

 また、児童生徒同士の協働的な学び、探究的な学びについてはいずれも、「授業に必要な機能を制限なく利用できるかどうか」が鍵になっている可能性がうかがえた。必要な機能に制限なく利用できると答えた教員では、協働的な学びや探究的な学びができているかについて「そう思う」「まあそう思う」と答えた人の割合が高かった。

グラフ3:機能制限の有無別に見た、児童生徒同士の協働的な学びの実感

 機能を「制限なく利用できる」と回答した教諭・学校管理職では、児童生徒同士の協働的な学びができているかについて「そう思う」「まあそう思う」を合わせた肯定的な答えが84.4%と非常に高く、続いて同様に、「少し制限がある」では78.8%だった。一方、「かなり制限がある・ほとんど利用できない・わからない」と回答した教諭・学校管理職では59.5%と、肯定的な答えは減少した=グラフ3参照

 自由回答では、「班で思考を共有したり、ポートフォリオなどで教員が思考や主体を見取ったりすることにICTは向いている。ICTを活用している教員とそうでない教員との差は、そこが大きいと考えている」(近畿/公立中教諭・30代)といった意見がある一方で、「協働学習という観点では、対面授業と比較して、オンラインでは不十分さを強く感じる」(東海/公立中教諭・30代)との声もあった。

探究的な学びに意欲も、業務過多に悩む教員
グラフ4:機能制限の有無別に見た、探究的な学びの実感

 さらに、探究的な学びができているかについても、端末を「制限なく利用できる」と回答した教諭・学校管理職では、「そう思う」「まあそう思う」を合わせた肯定的な答えが89.9%と高かった。続いて同様に、「少し制限がある」では76.9%、「かなり制限がある・ほとんど利用できない・わからない」と回答した教諭・学校管理職では63.5%だった=グラフ4参照

 今年の夏休みに端末を持ち帰った学校では、「総合的な学習の時間」の課題解決型学習の課題を出す学校も見られるなど、探究的な学びにICTを積極的に活用している教員や学校は多い。

 しかし、自由回答では「ICT活用にはコンピュータースキルだけでなく、十分な教材準備のための時間を確保しないと成立できない。その点、現在の日本の学校では学習内容が多過ぎて、その教材準備が十分に行えない。ましてや探究学習などを柔軟に行う余裕を確保することが厳しい。授業以外の雑多なその他の業務が多過ぎる」(北関東/公立小教諭・60代以上)、「授業準備が大変過ぎて、これまでの授業スタイルからICTを活用することで、生徒が主体的で対話的な学びを実践できることは分かっていても、具体的にどう進めたらいいのか難しい」(南関東/公立中教諭・50代)といった、ICT活用以前の業務過多の現実を訴える声もあった。

過渡期だからこそ、ICT活用の目的を再確認すべき

 萩生田光一前文科相が2019年12月に公表した、GIGAスクール構想の実現に向けたメッセージでは、その目的を「多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びや創造性を育む学びにも寄与するもの」としつつ、「ICT環境の整備は手段であり、目的ではない」と念を押している。

 今回のアンケートでは、ICTを活用した新しい学びへの手応えを感じる教員が多い一方で「1人1台配布は、学びのための手段だが、現状では目的になっている気がする。端末を活用した実践も学校の内外で蓄積されてきているが、キラキラした活動が中心」(都内/公立小教諭・40代)、「校内研究でICTを使用した授業展開を行っているが、わざわざ使うようにしているだけで、機器がなくてもできる内容なら使わなくてもいいと感じる。とにかく毎日使うよう指示があるが、ただ使っている実績作りなのかと思ってしまう」(南関東/公立小教諭・40代)といった意見に代表されるように、現状を冷静に捉えている教員も多い。

 「ICT活用は手だての一つであるということに立ち返るべき。ICTを活用すれば、よい授業になると勘違いしている教員がいる。特に若手は、教材研究、授業づくりの基本をしっかりと学んだ上で、効果的な活用法について研修した方がよいと思う」(北関東/公立小教諭・30代)といった声や、「ICT端末はあくまでも学びをサポートする道具であり、ICT端末を使うから即座に学びが深まったり、学力が上がったりするものではない。例えば国語で物語を扱う場合、分析的に調べ過ぎるとかえって読み描くような学習ができなくなる。使うために使うのではなく、適時性が重要である」(近畿/公立小教諭・30代)といった、ICTの特性を生かした活用の必要性、重要性を訴える声も目立った。

 前回のアンケートを実施した4月よりも端末の利活用が進み、その内容も充実しつつある過渡期だからこそ、「初期段階なので使うことが目的になりがちだが仕方ない。そろそろ学びの本質に向かえる使い方が求められる」(南関東/公立小教諭・30代)、「機器を使うことが目的となっているが、今は仕方がない。大切なのは今後、どう有効に使っていくかを共通理解することである」(東海/公立小教諭・50代)と、葛藤しながらも次のステップへ進もうとする教員の姿が見えた。

 今回のウェブアンケートは今年10月1~7日に、教育新聞の購読者のほか、教育新聞の公式SNSなどで回答を募り、全国の小学校・中学校・義務教育学校・高校・中等教育学校・特別支援学校の教諭・学校管理職475人から有効回答を得た。
 アンケート回答者の基本属性は次の通り。

【学校種】小学校47.4%、中学校27.6%、義務教育学校1.5%、高校17.1%、中等教育学校・中高一貫校2.1%、特別支援学校4.4%
【学校設置者】国立4.0%、公立85.9%、私立10.1%
【職位】教諭87.2%、学校管理職12.8%
【学校所在地】北海道4.8%、東北5.9%、北関東5.3%、東京都内22.1%、南関東17.5%、甲信越4.4%、北陸0.4%、東海13.5%、近畿11.6%、中国5.5%、四国1.1%、九州・沖縄8.0%
【性別】男性57.9%、女性40.0%、その他・答えたくない2.1%
【年代】20代21.5%、30代30.5%、40代29.3%、50代16.4%、60歳以上2.3%

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