コロナ禍の不登校増、問い直される学校 中教審で指摘相次ぐ

 コロナ禍による長期休校を経験した昨年度に、児童生徒の不登校と自殺が過去最多を記録した問題行動調査の結果を巡り、中教審初等中等教育分科会は10月28日、オンライン会合を開いて意見交換を行い、学校現場の委員から「休校期間中の昨年4月に中学校に入学した生徒には、いまだに不登校が多い。『中1ギャップ』を埋められないままだ。失われた2カ月について責任を持って考え続けなければいけない」「コロナ対策に教職員が全力で当たってきたのは間違いない。けれども調査結果を見ると、教育活動そのものが真に子供の心に寄り添ったものになっていたのか。教育活動と感染対策との両立を見直さなければいけない」と、真剣な問題意識を吐露する発言が相次いだ。一方、学識経験者らからは「調査結果は深刻度が年々増している。学校モデル自体がひずみを生んでいることを共有するべきだ」などと、一律一斉を原則とする学校教育の構造的な問題を指摘する意見が複数の委員から出された。

昨年度の「中1ギャップ」 いまも埋まらず
オンラインで開かれた中教審初等中等教育分科会

 この日の会合の後半では、10月13日に公表された昨年度の児童生徒の問題行動調査がテーマになり、いじめ認知件数は51万7163件で7年ぶりに減少したものの、小中学校の不登校の児童生徒数は19万6127人、小中高の児童生徒の自殺者数は415人で、いずれも過去最多になったことが文科省の担当者から報告された。

 口火を切った全国高等学校長協会(全高長)常務理事の井坂秀一委員(神奈川県立柏陽高校校長)は「高校生になると自殺が増えてくる。思春期になって自我の揺らぎがあり、自己肯定感を持てなくなる。この時期をうまく乗り越えれば、社会で活躍する人がいっぱいいるので、どう一緒に乗り越えていくことができるかが、教員のテーマだと思う。コロナ禍では、学校行事がいかに大事か、身をもって感じた。体育祭、文化祭、修学旅行、合唱祭、あるいは入学式、卒業式。こうした学校行事を通して、子供たちは所属感や自己肯定感、協調性、社会性を本当に学んでいく」と、自殺予防の観点からも学校行事の役割が大きいとの考えを説明した。

 「中学校の現場から現状を伝えたい」と切り出した小林真由美委員(福井市至民中学校校長)は「不登校については、昨年度の3カ月の全国的な休校の影響が非常に大きい。休校による休み慣れとか、コロナへの恐怖もあるが、それ以上に、入学時の丁寧なフォローができなかったこと、いわゆる『中1ギャップ』を埋められないまま学校がスタートしてしまったことがすごく大きいと感じている」と指摘。「それを反省して、今年度は4月の『中1ギャップ』をなくすために、ガイダンスや個人的な面談を丁寧にやった。それでも、福井県では、今年の中学1年生の不登校数よりも、昨年度の1年生だった今の2年生の不登校数がいまだに多い。コロナの状況はだいぶ落ち着いてきたけれども、今の中学2年生がスタート時に失った2カ月について、学校が責任を持って考え続けていかないといけないと思っている」と、長期休校の影響がいまも続いているとの見方を示した。

 全国連合小学校長会(全連小)会長の大字弘一郎委員(東京都世田谷区立下北沢小学校統括校長)は「小学校低学年からの不登校の増加が、大きな課題であると認識している。改めて幼児教育と小学校教育の接続・連携の重要性を思うところだが、小学校長に調査すると、この重要性について優先順位が大変低いという現状がある」と、幼保小の連携・接続を進める必要性を指摘。さらに先の全国学力・学習状況調査で、学校に行くのが楽しいと答えた児童が減少したことに触れ、「コロナ対策で教職員が児童の生命・安全を最優先に全力で当たってきたのは間違いない。けれども、このような調査を見ながら振り返ったときに、教育活動そのものが子供の視点に立ったものになっていたのか、真に子供の心に寄り添ったものになっていたのか、改めて考えている。感染対策と、今後の教育活動の両立について見直さなければいけない」と、コロナ禍での不登校の増加を受けて学校運営の見直しが必要との見方を示した。

「学校制度モデル自体がひずみを生んでいる」

 貞廣斎子委員(千葉大教授)は「不登校児童生徒は、学校の休校期間には、とてもリラックスして、ストレスフリーで過ごしていたことも聞き及んでいる。われわれは現行の学校システムを前提にして、どのように対応できるのか考えているが、調査結果が深刻度を年々増していることに触れると、対面、学年制をはじめ、ある一定期間、同年齢の子供たちが同じ学びを共有するという、この学校制度モデル自体がひずみを生んでいることを共有するべきではないか、と考える。新しい学校制度モデルを検討する段階に来ている」と述べ、不登校の増加に歯止めがかからない現状の背後には、現行の学校制度モデルそのものの構造的な課題があると踏み込んだ指摘を行った。

 また、自殺対策については「対策の一つとして、子供たちにSOSを出すように求めているが、助けを求める力は、日常的に助けられたことがあるという、成功体験に依存すると思う。人に助けを求めたら、ちゃんと助けてくれる人がいるという体験を、小さいときから積んでいくことを強く意識していきたい」と述べた。

 学校制度の見直しを求めた見解について、進行役の荒瀬克己分科会長(教職員支援機構理事長)は「非常に考えなければならない指摘。今の学校システムはもう十分に現状に対応できていない面があるのではないかという点については、後手に回ると焦っては駄目だと思うけれども、初中分科会の本当に重要な課題と思う。具体的にどういった学校の在り方が今の子供たちに必要なのか、あるいはこれからの社会で必要なのか、そういう視野を持ちながら考えていかなければならない」と応じ、現行の学校制度の見直しを今後議論していくべきだとの立場をとった。

 学校制度見直しの必要性を巡っては、不登校対策に取り組んでいる今村久美委員(認定NPOカタリバ代表理事)も同様の見解を示した。調査結果について「不登校の要因を見ると、(学業の不振や入学時などの不適応など)学校が何らかの変化をしなければならないところが合計11.9%で、いじめと友人関係を合わせた10.8%よりも多い。これは今の学校に対する明確なフィードバックだと受け止めていいと思う」と指摘。「学業の不振は子供自身の問題じゃないかと思うかもしれないが、例えば、今、私たちが関わっている子は、掛け算はできるけれど、九九の読み方を立って言わされるのができなくて、オシッコを漏らしてしまって、学校には行けなくなった。(現在の学校教育の)一律のやり方は、やっぱり変えていかなければいけないところがある。そういうメッセージだと受け止めていくべきだ」と続けた。

 また、問題行動調査の名称『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』についても、「(調査に出てくる)この子供たちは支援が必要な子供たちであって、何らかの支援の手だてがなかったから、結果として、いじめや不登校になっている。問題行動があるから取り締まらなければいけないというメッセージに聞こえないように、調査の名称を次回から変える必要がある」と述べ、変更を検討するよう求めた。

広域通信制高校「入試の時期をそろえて」

 問題行動調査の議論に先立つ前半では、▽高校の日本語指導の制度化と充実策▽通信制高校の在り方▽教科担任制の在り方▽幼児教育と小学校教育を巡る幼保小の連携▽内閣府所管の総合科学技術・イノベーション会議に置かれた教育・人材育成WG--の進展状況を取り上げた。

 高校の日本語指導の制度化と充実策では、高校に在籍する日本語指導が必要な生徒が2018年度に4000人を超え、10年間で1.7倍に増加している一方、義務教育段階における日本語の特別指導と同様の制度が高校には存在しないことから、2023年度の制度導入を目指して検討会議が報告書をまとめた状況を文科省の担当者が説明した。

 日本で暮らす外国人を支援している田中宝紀委員(NPO法人青少年自立援助センター事業責任者)は「支援しているNPOには日本語支援能力を持たない団体もいる。外国人高校生の支援には、外国人保護者と教育関係者の連携が欠かせないので、遠隔オンラインによる通訳や翻訳アプリなどの整備も必要。また、外国人高校生は日本語を学ぶ間、部活動などに十分参加できず、機会損失になっている」と考慮すべき点を挙げた。

 通信制高校の在り方については、広域通信制高校の生徒のうち、3分の2が不登校経験者で、在籍する高校の所在地から遠距離にある都市部に在住している生徒が多いなど、勤労青少年を前提に自学自習を原則とした現行の通信制高校制度の見直しが必要となっていることから調査研究協力者会議で制度見直しの検討が始まった状況を文科省の担当者が説明した。

 全日本中学校長会(全日中)会長の宮澤一則委員(東京都板橋区立中台中学校校長)は「広域通信制高校は、本部の所在地から離れた都市部に住む子供たちが進学することが多いが、入試の日程は本部の所在地によってばらばらなので、子供たちに支障が出ている。例えば、東京の生徒が九州にある広域通信制高校を受験することも多いが、九州は11月、東京は12月にそれぞれ入試が行われており、中学校の現場からみると生徒指導の上で課題がある。入試の時期をそろえていく仕組み作りを国が主導してほしい」と文科省に対応を促した。

 初等中等教育分科会は、中教審の中で初等中等教育全般を総括する上位の会議体に位置付けられ、ほぼ3カ月に1回のペースで、配下に設置された各部会の審議状況や政府の動きなどをフォローアップするかたちで運営されている。

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