AIが普及した2050年の課題 高校生がロールプレーで議論

 人工知能(AI)と一緒に生活することが当たり前となった近未来とは――。神奈川県立平塚江南高校(吉川亮校長、生徒951人)で10月30日、AIを搭載して人間のようなリアルなリアクションをする3DCGの女子高生キャラクター「Saya」を開発した、CGアーティストユニット「TELYUKA」の石川友香さんが講師役となり、AIが当たり前になった2050年に起こり得る問題をロールプレーイング形式で議論する特別授業が行われた。

Sayaの開発の様子を説明する「TELYUKA」の石川さん(Zoomで取材)

 希望した1、2年生の生徒24人が参加し、Sayaの開発に協力している博報堂が考案した「Future Scenario Playing(FSP)」メソッドに基づき、AIが身近になった未来の生活を描いたシナリオに沿って、それぞれが与えられたキャラクターを演じながら、ディスカッションを行った。

 最初に石川さんが、Sayaを支えている技術や、企業などと連携してどのような利用が検討されているかなどを紹介。「将来は彼女のようなバーチャルな存在やロボットが、私たちの生活を支えている世界を考えている」と話し、次の活動への橋渡しをした。

 続いて生徒らは6人ごとにグループを作り、AIが家庭や生活の中に溶け込んだ2050年の家族を想定し、その家庭でパーソナルAIとして使われているSayaや親、子どもなど、与えられた役割になりきって、シチュエーションに合わせた会話を行った。

 後半に入ると、Sayaがウイルスに感染したことが判明。①Sayaをインストールし直す(その場合、これまでのSayaの記憶は失われる)②Sayaをネットワークから隔離して使い続ける(その場合、記憶が保持され会話の相手にはなるが、それ以外の機能は失われ、家電の操作などを人間が行わなければならない)③Sayaをネットワークから隔離して使い続け、新しいパーソナルAIを購入する――の3つの選択肢が提示され、どれを選ぶべきかを話し合った。

 結論で②を選んだグループでは「Sayaをインストールし直すのが合理的ではある。でも、感情的にSayaの記憶を消したくはない。③は自分がいる意味があるのかというSaya自身の意見もあった。新しいSayaをインストールしたら元のSayaは戻らない。そこで、結論は先延ばしにして、今までのSayaと一緒にこれからのことを考えることにした」と議論のプロセスを説明した。

 一方、結論を③にしたグループは「子どもたちは、今のSayaとの会話や思い出があり別れたくない。Sayaは家族の一員だ。でも、②を選ぶと、未来の社会では人間は家事をせずにAIに頼っているかもしれない。だから③を選んだ」と話した。

AIが普及した未来に起こる課題や可能性に関する生徒らの意見

 この議論を踏まえ、さらに各グループでは、端末から付箋アプリを使って、AIが普及した世界では、現代とは異なるメリットやデメリットとしてどんなものがあるかを共有。「AIに頼めば何でもやってくれそう」「自分で生活する力が衰える」「AIに懐く『AIっ子』が生まれそう」などの意見がみられた。

 生徒の議論に耳を傾けていた石川さんは「若い人の柔軟性に驚いた。人との交流を気にする意見も多く、どうやったら解決できるのかを考え続けていってほしい。開発側である私たち自身も、人の能力の進化に邪魔にならないような、Sayaの立ち振る舞いに神経を使っていきたいと思った」と気付きを得ていた。

 授業の進行役を担当した植田渥士教諭は「与えられた役割を通して、自分では恥ずかしくて言えないような意見も、そのキャラクターの意見として発言できる。設定にも自由度があったので、彼らなりにアレンジした上での意見もあり、いろいろな考えが深まっていると感じた」と手応えを感じていた。

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