「死ぬまで学びたい」 中学校通信課程の存続願い91歳の生徒訴え

 「学ぶのが楽しくてしょうがない」「死ぬまで学びたい」――。都内で唯一、中学校の通信教育課程が設置されている千代田区立神田一橋中学校。同校の通信課程に在籍する3年生の91歳の女性は、そう語る。現在、在籍しているのはこの女性のみで、来春の入学生がゼロなら休校となる可能性が高い。こうした中、同課程の存続を支援する支援団体が10月30日、来年度の入学願書受付が始まるのに合わせて都内で集会を開き、同課程で学ぶことの素晴らしさをPRするとともに、「戦後の混乱期に学校で十分学べなかった方などは、ぜひ入学を検討してほしい。通信教育で学べる中学校の灯を消さないでほしい」と呼び掛けた。

集会で「学ぶこと」への思いを語る松村節子さん(右)

 集会を開いたのは、「夜間中学校と教育を語る会」。同校の通信課程は、戦前と戦後の義務教育制度のはざまで中学校に通えなかった人を対象に生徒を受け入れてきたが、対象がおおむね80代後半以上に限られたため生徒は減り続け、現在は3年生の松村節子さん(91)のみとなり、来年春に生徒がゼロになる可能性がある。

 同会は同校通信制が廃止されることのないよう、今年春に存続を求める署名活動を始め、約4600人分の署名を千代田区や東京都などに提出。こうした活動の結果、来年度の同校通信課程の入学条件が緩和され、「満65歳以上で、中学校で十分学べなかった人」が対象に加えられた。来年度の入学願書は11月1日から19日まで受け付けている。

 これに合わせて同会は集会を開き、同校の通信制課程で学ぶ生徒たちを描いた映画『まなぶ』を上映するとともに、同課程の卒業生らも参加して学ぶことの素晴らしさなどを語った。『まなぶ』は、太田直子監督が5年以上にわたって同校通信課程に通う生徒たちを追い続けたドキュメンタリー映画。自宅で夫の介護と家事に追われる中、毎月2回、学校に通う高齢女性は、同世代の知人に引け目を感じ続けていた過去を語り、「今が青春です。学ぶことは楽しい」とカメラにほほえむ。

 また、9人きょうだいで戦後に小学校卒業とともに奉公に出された男性は、自暴自棄となって全国を転々とする生活を送っていた体験を経て同課程で学び、「60年の空白は重かったが、やっと学校生活がかなった。気持ちが豊かになった」と頬を緩ませた。

 上映後、集会に参加した太田監督は「初めて学校を訪れたとき、70、80歳の方が中学生のように楽しそうに過ごしていたことが印象的だった。人生の終わり近くに青春を取り戻した場に立ち会えて幸せだった。日本には学校に行けずに働きに出て、高度経済成長を支えた方がいる。最後に学びたいとの思いを保障するのは社会の責任であり、そのために映画が生きるならありがたい」と話した。

 また、唯一の現役の生徒である松村さんも集会に参加。戦争末期に中学生だった松村さんは、軍需工場に駆り出されて学校での勉強が閉ざされてしまい、2年前に新聞で同校の募集を知って入学したという。「こんな年齢でも入れてもらえるのかと驚いた。今まで知らなかったことが学べて、楽しくてしょうがない。死ぬまで通って勉強したいと思う」と願いを語り、現在、来年度以降も在籍できないか学校に相談していることを明かした。

 主催団体は「中学校の通信課程があることを知る人は少なく、映画や集会などを通してその素晴らしさを伝え、学びを求める方に入学を検討してもらえたらと思う。今後はさらに年齢条件の緩和を行政に働き掛けるなど、通信課程の灯を消さないよう存続に向けた活動に取り組みたい」と語った。

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