教科書から考える「歴史総合」の課題 学術会議がシンポ

 来年度からスタートする高校の新学習指導要領における新科目「歴史総合」を巡り、日本学術会議は10月30日、「歴史総合」の教科書をテーマにしたシンポジウムをオンラインで開催した。「歴史総合」の教科書を執筆した研究者や高校教員が登壇し、近代の日本史と世界史を融合させ、問いや資料の読み取りなどから、主体的・対話的で深い学びを促す「歴史総合」の授業観を討論した。

 シンポジウムの登壇者は、執筆に関わった教科書の出版社名を明かさない形で、それぞれの視点で教科書から浮かび上がる「歴史総合」の特徴を挙げた。

 日本近現代史を専門とする日本女子大学の成田龍一名誉教授は「これまでの高校の歴史科目や歴史学の中でも、日本史と世界史に切り分けられていたものが、『歴史総合』では区別せずに叙述することになった。それが今回の『歴史総合』の可能性であり、歴史叙述の一つの方針だと思った」と、教科書作成の過程を振り返り、用語や時代の捉え方で見直されることになった事例を取り上げた。

 その上で「日本をどのような形で世界史の中に組み込むかが問われている。さらに、誰にとっての歴史教育なのかという次元の話もある。生徒が多様化する中で、誰にとっての歴史教育かが非常に厳しく問われている」と、これからの歴史教育の課題を挙げた。

 東京学芸大学副学長でドイツ近現代史が専門の川手圭一教授は、これまでの歴史教科書を巡る議論は、本文の用語や記述の仕方を中心に注目されてきたが、「歴史総合」の教科書は、構成やその教科書を使った授業実践など、俯瞰(ふかん)的な視点で捉える必要があると指摘。

 また、課題発見や考察を重視した新学習指導要領における「歴史総合」の教科書は、「主題や問いの設定、資料を活用して考察し、生徒が問いを発する。従来の歴史記述に加えて、こうしたことを教科書にどう取り入れていくかが問われた」とし、ドイツとフランスが共同制作した歴史教科書などと「歴史総合」の教科書に見られる共通点を紹介した。

 千葉県立袖ケ浦高校の廣川みどり教諭は、多様な高校現場の実態を踏まえ、どのような「歴史総合」の授業をすべきなのかを提言。「高校が歴史を学ぶ最後の機会になる生徒も多い。高校間には大きな差があることは明白で、そこで行われている歴史の授業も大きく異なる」と述べ、若手教員が増えたり、ICTの利活用が進んだりする中、2単位という限られた枠の中で、いかに従来の暗記ではなく思考力を重視した「歴史総合」の授業を、さまざまな高校で展開していくかが課題だとした。

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