SNSのリアルなトラブルを学ぶ漫画 全国の中高生が議論

 SNSの活用が身近になる中で、ちょっとした行き違いからトラブルに発展してしまうことも多くなっている。そんなときに自分ならどう行動するかを、漫画教材を基に中高生が議論するイベントが11月6日にオンラインで開かれた。参加した中高生は、漫画の登場人物の悩みや葛藤を想像しながら、活発に意見交換した。

SNSにまつわる中高生のリアルなトラブルを描く漫画教材「ほんとうのこと」(RISTEX「未成年者のネットリスクを軽減する社会システムの構築・教育グループ」提供)

 イベントは科学技術振興機構(JST)が主催する「サイエンスアゴラ2021」の企画の一つで、全国12校の中高生ら約60人が参加した。同機構の社会技術研究開発センター(RISTEX)が支援するプロジェクト「未成年者のネットリスクを軽減する社会システムの構築」の成果として、折田明子・関東学院大学准教授らが開発した漫画教材「ほんとうのこと」のストーリーに沿って、折田准教授が投げ掛けた質問に対し、中高生らが提示された選択肢に答えたり、自分の意見を投稿したりして、お互いの考えを共有した。

 中学校での吹奏楽部が舞台の「ほんとうのこと」は、家庭の事情でいつも遅刻する「しおり」と、責任感の強い部長の「さとみ」、しおりの家庭の事情を知っているものの、本人のプライバシーを慮って周囲に言えない「りこ」の3人を軸に展開される。

 吹奏楽部が県大会出場を逃した夜、さとみはりこをSNSのグループチャットに誘い、しおりのことを相談する。他の部員たちも加わるが、そのまま外れた形になったしおりはその後、話題に入れないことが増え、部活動にも来なくなる。だが、「仲間外れ」にされていたことを何かで知り、グループチャットのスクリーンショットを別のSNSに暴露。うわさと批判が広まって、さとみも学校を休みがちになってしまい、板挟みとなったりこが「どうしてこうなってしまったの…」と後悔したところで終わる。

 あらすじを振り返った後、折田准教授はまず「共感できた登場人物は?」と問い掛け、投票ツールを使って参加者が回答。次に「あなたがしおりの立場なら、自分のことをまずは誰に話しますか?」「さとみからのグループラインに誘われたら、どうしますか?」「りこがいつ、何をしていたら漫画で描かれていた未来は変わったと思いますか?」などの討論のテーマを提示し、コメントを求めた。

イベント中は、参加者がそれぞれの意見をコメントなどで共有した(YouTubeで取材)

 参加した生徒からは「登場人物はみんな、惜しい行動ばかりな感じがしてもったいない」「しおりのことについて、さとみは自分の味方がほしかったんだと思う」「(りこがしおりに)一緒に相談しようと誘って、大人や部長に相談しにいく」など、さまざまな意見が飛び交った。

 最後にもう一度、折田准教授が最初の問いである共感できた人物について尋ねると、その結果は最初と比べて変化していた。

 中高生とのセッション後、折田准教授は「今回の討議では、グループラインに招待されたらどうするかなどで、誰かに確認してから入っていくといったとても慎重な傾向がみられた。ネットは使い過ぎないようにと言われがちだが、中高生はネットをうまく使って、大人より丁寧に考えているように感じた」と分析した。

 イベントに参加した石川県の星稜中学校の生徒は「みんなが考えて行動しないと、一人だけ板挟みになったら大変だと思った。誰かが孤独な思いをしないようにするためにも、積極的に行動していく必要があると思った」と感想を話す。

 同校の濱野加代子教諭は「道徳では、あまりネットの問題を扱った題材は少ない。学校でもSNSに関する指導はするが、全ての書き込みを学校でチェックできるわけではない。生徒が自分たちで正しい使い方を考えて使えるようになるという意味でも、この教材は非常に良いのではないか」と評価した。

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