子供の自殺増など対応の大綱へ 厚労省の有識者会議で検討開始

 コロナ禍で子供の自殺が増えていることを踏まえ、政府の自殺対策の指針となる「自殺総合対策大綱」が来年にかけて見直されることになり、11月8日、厚労省の「自殺総合対策の推進に関する有識者会議」(座長=椿広計情報・システム研究機構理事)で議論がスタートした。会議では、自殺対策に取り組む団体から「子供や女性の自殺が増えている日本のトレンドがコロナ禍で加速した。再び急増しないよう万全を尽くすべきだ」との報告があり、各委員から「社会的なセーフティーネットのさらなる充実強化が必要だ」「『かかりつけ精神科医』を大綱で位置付けて、すぐ対応できるようにしたい」といった意見が示された。

オンラインで開かれた有識者会議の椿座長

 2017年に閣議決定された「自殺総合対策大綱」は、おおむね5年をめどに見直すことになっており、昨年、コロナ禍で児童生徒や女性の自殺者が11年ぶりに増加に転じたことも踏まえて、来年に向けて新たな大綱策定に向けた検討を進めることになった。

 会議では、「(一社)いのち支える自殺対策推進センター」の清水康之代表理事がコロナ禍の自殺の最新動向について報告した。この中で清水代表理事は、コロナ禍で子供や若年女性の自殺増加という日本のトレンドが加速してしまった可能性があると指摘。「今年7月以降は去年より自殺者は減少傾向にあるが、水面下で社会的な自殺リスクは高まり、トリガーによって再び急増しかねない。そうならないよう万全を尽くすべきだ」と強調した。

 また、今月公表された「自殺対策白書」で触れられた、インターネット上の検索ワードで「学校 行きたくない」が増えると自殺が増加する傾向があることに言及し、「一部の児童生徒にとって学校が脅威になっていると捉えるべきではないか」と指摘した。一方で、生活支援によって自殺増加を抑制できる効果が分析から明らかになっているとして、「セーフティーネットの強化は非常に重要といえる」と強調した。

 この報告などを受けて、出席した委員がそれぞれ意見を述べた。山脇義光委員(連合総合労働局労働法制局長)は「連合の労働相談でも、非正規労働者や女性から解雇や退職強要などの相談が増えており、コロナ禍で社会的に弱い立場の方が深刻な影響を受けている。自殺には複合的要因があると思うが、雇用不安が広がったことが背景にあり、社会的セーフティーネットのさらなる充実強化が必要だ」と指摘した。

 また、朝比奈ミカ委員(中核地域生活支援センターがじゅまるセンター長)は「ステイホームのメッセージが、一部の方を追い込んでいったことが顕著かと思う。『学校 行きたくない』というワード検索が増えると自殺が増えるとは厳しい指摘だが、家庭に居場所のない子供たちを地域でどう受け止めて支えるか、児童福祉分野の取り組みも必要だと思う」と指摘した。

 精神科医の立場から、三木和平委員(日本精神神経科診療所協会会長)は「若年者についていえば、子供を診る精神科医が圧倒的に少ないという事情があり、ここを増やすことを考えてほしい。『かかりつけ精神科医』という言葉はまだ定義があいまいではあるが、これを大綱の中で位置付けて、何かあればすぐ対応できる形にしたい」と述べた。

 同会議は今年度中に報告書を取りまとめる。政府は来年夏をめどに、新たな大綱を策定する方針。

あなたへのお薦め

 
特集